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村上春樹、「70代を高齢と呼ばない街・大和市」に素朴な疑問

2018/12/16(日) 20:20配信

TOKYO FM+

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめたラジオ番組「村上RADIO~村上式クリスマス・ソング~」が、12月16日(日)にTOKYO FMにて放送されました。この番組では村上さん自らディレクターもつとめ、リスナーに“聴いてもらいたい曲”をかけています。第3回の今回は、村上さんならではの“ひと味違った”クリスマス・ソング全11曲をお届けしました。
第1回、第2回の放送では、リスナーのみなさんからいただいた“素朴な質問”に村上さんが答えていましたが、今回は村上さんの“素朴な疑問”について語りました。エンディングテーマと村上さんの“好きな言葉”についてお話された概要も紹介します。

【「木枯らし1号」「春一番」について考える】

村上:「木枯らし1号」とか「春一番」っていうじゃないですか。でもあれ、どうして木枯らしが「1号」で、春が「一番」なんでしょうね? 「木枯らし一番」「春1号」でもいいような気がするんだけど。考え始めるとどんどん疑問が膨らんできます。どうしてかな。
あと、東名高速道路の大和トンネルのあるところに、(神奈川県)大和市という市があるんですが、高速道路のそのあたりに「70代を高齢者と言わない街・大和市」という大きな垂れ幕が出ています。それはそれでいいんだけど、じゃあなんて呼ぶんだ、といつも考えちゃいます。なんて呼ぶんでしょうね。
あとこれも高齢者がらみの僕の疑問ですが、初心者の若葉マークと、高齢者の紅葉マーク(*現在はクローバーのマーク)を一緒に付けた車って見たことあります? 僕はまだありません。車を運転するたびに、どこかにいないかと探しているんだけど、まだ見つかりません。もし見かけたことあったら教えてください。

【「空気が読めない」の英語訳について考える】

村上:これはつい最近になって解消された僕の疑問です。「空気が読めない」って言いますよね。でもそれを英語訳するとどうなるのかなと、ずっと考えてたんです。いろんな辞書を引いても、なかなかそれらしきものが出てきません。でも、このあいだ「ニューヨーク・タイムズ日曜版」を読んでいたら、それにぴったりの訳語がみつかって、僕の疑問がすっと解消しました。「空気を読む」は、英語だと「read the room」って言うんですね。部屋を読む=空気を読む、雰囲気が似てますよね。ほとんどの辞書には出ていませんので、英語に興味のある方はぜひチェックしておいてください。
「空気を読み損なう」はfail to read the roomです。村上の英語講座でした。

<エンディングテーマ>
◆「Santa Claus Is Coming To Town」(Ramsey Lewis Trio)

村上:サンタが街にやってくる――ラムゼイ・ルイス・トリオ、1961年の録音です。アナログ盤で聴いてください。「ジ・イン・クラウド」が大ヒットする前の、まだ地味だった時代のラムゼイ・ルイスです。ラムゼイ・ルイスは、ときどき音楽がくどくなる傾向があるんだけど、ここではあざとさのないすっきりした演奏で、いつ聴いてもいいです。

今回も番組の最後に、村上さんが“好きな言葉”について語ってくれました。

【僕の好きな言葉】

ちょっと前に「僕の戦争を探して」というスペイン映画がありました。ビートルズ・ファンの小学校の先生が、ビートルズの歌詞を教材に子どもたちに英語を教えているんですが、どうしても歌詞にわからないところがあって、それについて本人に尋ねるために、ちょうどスペインで「僕の戦争」という映画の撮影をしていたジョン・レノンに会いに行く話です。なかなか素敵なロード・ムービーでした。その映画のなかで、先生が旅で出会った若者に向かってこう言います。
「ビートルズの曲には楽しいものもあれば、切ないものもある。でもどれも心を打つ。なぜなら人生とは楽しくて、そしてまた切ないものだからだ」
考えてみればその通り、当たり前のことなんだけど、映画のなかで正面切ってそう言われると「たしかにその通りだよな」と、ふと心を打たれました。
切ないものがあってこそ、楽しいものを心からしっかりと楽しむことができます。みなさんもどうかできるだけ楽しいものを見つけて、日々を送ってください。サンタは本当に街にやってくるかもしれません。
それでは、また来年――。

(TOKYO FM「村上RADIO~村上式クリスマス・ソング~」より)
この記事で紹介できなかった選曲やほかの内容は、以下の記事よりチェックできます。

最終更新:2018/12/16(日) 20:20
TOKYO FM+

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