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アジア拠点でハイクラス人材を採用できない日本企業、現地向け人事制度が課題

2018/12/18(火) 11:00配信

MONOist

 日本能率協会コンサルティング(JMAC)は2018年12月17日、アジアの現地法人におけるHR(Human Relations)機能の調査「アジア日系企業における人材マネジメント実態調査」を発表。日系企業の現地法人における中国、タイ、ベトナム3カ国の人材マネジメントそれぞれの状況と、比較を行った。

人事制度に関する現状(クリックで拡大)出典:JMAC

 日本の製造業は海外進出を加速しているが、その中でも中心となっているのがアジア地域である。JMAC 取締役 経営企画室長 富永峰郎氏は「日本企業の海外拠点は世界に9万拠点があるとされているが、7万拠点がアジア地域にある。その内中国に3万~3万数千拠点、東南アジアに2万~3万拠点が存在する」とアジアへの日本企業の進出状況について語る。

 こうした状況の中でJMACにも現地人材の活用についての相談が増えてきたことから、今回調査を行ったという。調査は日系企業の現地法人に対するインターネット調査で行い、調査期間は2018年9月上旬~10月上旬。回答企業数は中国が167社、タイが50社、ベトナムが115社で、合計332社となっている。

人材マネジメントにおける課題感

 「人材マネジメントの課題」という質問に対して「現在の課題」として高い比率を示したのが「現地に適した人事制度の設計・再構築」(43%)と「現地管理者および候補者の人材育成と研修」(41%)である。ただ、「3年後の課題」としては「現地管理者および候補者の人材育成と研修」については変わらず高かった(37%)ものの、一方で「現地に適した人事制度の設計・再構築」についての回答比率は29%に低下。代わりに「総人件費の管理と労働生産性の向上」が37%と高い比率を示した。

年功序列ベースの人事制度が持つ課題

 これらの海外現地法人での人事制度の運用実態については、「これまでは年功要素を重視しており、今後も変えるつもりはない」(6%)、「これまでは年功要素を重視してきたが今後は成果を重視したい」(30%)、「現状は成果を重視することになっているが実際は年功的な運用になっている」(34%)とするなど、70%がまだ「年功」ベースの人事制度の運用となっている現状が分かる。

 さらに、現行人事制度の問題については「昇格ルールが制度化されていない」(57%)、「社員のパフォーマンスを測る評価の仕組みがない」(48%)、「研修などの教育体系が整備されていない」(48%)など、明確化されていない領域が多いことが主な課題とされている。

 海外でも人手不足が指摘される最近状況だが、富永氏は「実際にこれらの課題が原因となり、ハイクラスの人材については、欧米や韓国などの企業に競り負けて、採用できなくなるケースも多い。ただ、ミドルクラス以下については年功ベースでもそれほど気にしないという場合が多いようだ」と採用状況について述べる。

タイで進む人材育成の仕組み

 研修などの人材育成の現状については、約7割が研修などを実施しており、各地域ともに熱心だ。ただ「体系的な教育制度を整備している」としているのは2割前後にとどまっており、その多くが事後対処を中心として行われているケースがほとんどだという。「品質問題があったタイミングで品質研修を行ったり、安全問題が起こったときに安全研修を行ったり、何らかのトラブルに対して対症療法的に行うケースがほとんどだ」(富永氏)としている。

 一方で、研修の実施形式については、タイでは「外部講師による社内研修」(70%)「外部公開研修に参加」(89%)とするなど、教育や研修の環境が進んでいることが分かる。その一方でベトナムについては「外部講師で社内研修」(32%)「外部公開研修に参加」(34%)となるなど、外部の人材育成の仕組みに頼れないことから「社内講師による研修」(50%)に頼る現状が明らかになっている。

人材の現地化はベトナムが先行

 「人材の現地化」に対する必要性を感じている企業は約7割だが、特にタイでは「あまり進んでいないので早急に進めたい」(54%)「比較的進んでいるがさらに進めたい」(37%)で合わせると9割以上となっており、強い要望があることが分かる。社長や役員、管理者の日本人比率を見ても、タイは69%と中国やベトナムに比べて特に高く、現地化が遅れている状況が見える。一方で、ベトナムは現地派遣が困難なこともあって現地化率が58%と最も高い結果となっている。「タイは自動車産業などを中心に比較的日本人が多く派遣されている現状がある。一方でベトナムは最近進出が進んだことから、できる限り現地に任せようという流れががある」と富永氏はタイとベトナムの違いについて語る。

中国では社内使用言語は日本語が多い

 現地法人内で使われる言語については、タイやベトナムでは英語中心であるのに対し、中国では日本語中心(60%)であるということが分かった。一方で中国では英語の使用が極端に少ない(2%)という状況がある。タイやベトナムでは日本語、現地語、英語のバランスがほぼ同等となっており「それぞれでどの言語でどういうコミュニケーションをすべきかという形がまだ定まっていない面がある」(富永氏)としている。

日本企業が取り組むべき方向性

 これらの調査結果を受け富永氏は「現地に適した成果重視の人事制度を確立し、現地人材育成を強化する点は急務だ」と述べる。「現地人材は基本的には業務成果が報酬に直結する仕組みを求めており、年功制度などの成果に対する報酬が不明確な体制は喜ばれない。現地のニーズに合った体制を作るべきだ」と富永氏は訴えている。

 ただ一方で「年功制度などの根底になる『人を育てる文化』などは日本企業の良さとして受け入れられる面もある。うまく発信して強みとする動きも出ている。成果制度とこれらをうまく組み合わせて独自性を発揮できる仕組みを作ることが求められている」と富永氏は語っている。

MONOist

最終更新:2018/12/18(火) 11:00
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