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航空機サプライヤーに忍び寄るリスク「アジアの下請けになる日」

2018/12/18(火) 11:01配信

ニュースイッチ

サプライチェーンめぐる国際競争が激化

 航空機産業のサプライチェーンをめぐる国際競争が激しさを増している。欧米大手が東南アジアに拠点を構え、各国で現地企業が育ちつつある。航空機の一大市場であることを強みに、生産拠点としての実力が高まれば、日本の航空機産業が脅かされかねない。一方で、国内では中小が現地でサプライチェーンに入り込んだり、新たにクラスターを組むなどの動きを見せ始めた。

 「日本の航空機産業はアジアの下請けにならないか心配だ」―。航空機関連機器の多摩川精機(長野県飯田市)で社長、副会長を歴任した萩本範文AMシステムズ(同)社長は、そう危機感を抱く。

 マレーシアには欧州エアバスや米ゼネラル・エレクトリック、仏サフランなど欧米大手が拠点を置く。機体の修理・整備(MRO)拠点として発展したが、いまではMROと製造の割合が同じだという。マレーシア投資開発庁のリドゥアン・ラフマン東京事務所所長は、「2030年までに東南アジアで一番の航空機産業国になる」と目標を掲げる。

 また、タイは最大8年間の法人税免除などの税制優遇策を打ち出し、外資の航空機産業の誘致を目指す。サンティ・キラナンド工業省副大臣は、「航空機部品や装置の製造拠点としての強みがある」と自信を見せる。

 東南アジアは各国の経済発展や格安航空会社(LCC)の成長もあり、航空機需要が今後も伸びる。日本航空機開発協会の民間航空機市場予測調査では、アジア・太平洋の航空旅客輸送量は17年実績で北米と欧州を上回っており、37年にはその差はさらに広がる見通しだ。需要が特に伸びるのが中国と東南アジアだ。

 萩本社長は、多摩川精機を17年に退職してAMシステムズを設立し、長野県内のクラスターや中小製造業の航空機産業進出を支援する。「アジアが発展する中、日本で航空機産業は中小を支えるメーン産業になれるのか」と懸念する。

 日本では三菱重工業など重工大手がボーイングのティアワンとして機体製造を担い、サプライチェーンを形成してきた。だが、欧米の装備品やシステム機器大手と中小との関係は深まることはなく、彼らはむしろ東南アジアに進出した。装備品やシステム機器も手がけることが日本の航空機産業の底上げになるが、市場が縮小する日本の現状では難しい。

 一方で、東南アジアに進出し、現地のサプライチェーンに入り込もうとする中小も出始めた。三菱重工のサプライヤーの和田製作所(愛知県清須市)は、グループ会社のエアロ(愛知県弥富市)とともに、マレーシアの自動車部品メーカーと提携した。19年に合弁会社を現地に設立する。

 和田製作所は航空機部品や治具、エアロは機体組み立てをそれぞれ手がけ、これらをマレーシアでも展開することを狙う。同社の和田典之社長は、「ボーイングなどは顧客の近くでサプライヤーを育てようとしており、我々も出ていかねば」と狙いを説く。

 マレーシアに既に進出した中小もある。極小の鉄球をぶつけて表面加工する「ショットピーニング」などを手がける旭金属工業(京都市上京区)は、16年に現地工場を稼働した。装備品大手などから表面処理を受注しているが、中村止専務は「取引量はまだ少ない」と明かす。

 海外売上高は現在数%だが、将来は2割に引き上げるつもりだ。十数年前から海外の主要航空ショーに出展を続けるなど、売り込みに余念がない。

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最終更新:2018/12/18(火) 11:06
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