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2年総額44億円のDAZNマネーの使い道は?常勝軍団川崎への道。 Jリーグ財務診断「川崎編」

2018/12/20(木) 6:01配信

VICTORY

各クラブの経営状況を分析する「Jリーグ財務診断」。第6回はJ1・川崎フロンターレを取り上げる。史上5クラブ目となるJ1連覇を果たし、昨季に続いて得た賞金、配分金の総額は実に22億円。ビッグマネーを手にした川崎の戦略と経営哲学に迫る。

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川崎は12月9日、J1リーグ連覇を記念して川崎駅周辺でパレードを実施した。選手28人と鬼木達監督らが2台のオープンバスに分乗し、川崎市役所第3庁舎から川崎駅前南交差点までの約700メートルを約30分かけて進んだ。

「来年もタイトルを取って、川崎をサッカーの街にしたい」と指揮官が言えば、主将の日本代表FW小林悠はサポーターからの「3連覇!」の声に「自分たちなら絶対にできると思っている」と呼応。沿道に集まった4万人を大いに沸かせた。

リーグ3連覇、さらに複数タイトルの獲得を目指す来季へ、その大きな“アシスト”となるのが「DAZN(ダゾーン)マネー」だ。

Jリーグは、2017年から10年総額2100億円の放映権契約をスポーツ専門動画配信サービス「DAZN」を運営する英パフォーム社と締結。これに伴い、J1優勝クラブは賞金3億円に加え、理念強化配分金として15億5000万円(3年間に分けて支給され1年目=10億円、2年目=4億円、3年目=1億5000万円)、さらに全クラブに支給される均等配分金3億5000万円の合計22億円というビッグマネーを獲得する。川崎は昨季も優勝しているため、2年総額44億円もの大金を手にすることになる。

Jリーグが開示している経営情報によると、2017年度の川崎の営業収益(収入)は全体の4位となる51億2300万円。ここには3億円の優勝賞金と均等配分金3億5000万円こそ含まれているが、理念強化配分金は2018年度から計上されるため今年度の営業収益は単純計算でも60億円超となる。翌年はリーグ2連覇の結果から理念強化配分金として計14億円が入る計算。2017年度にJリーグ史上最高となる79億7100万円の営業収益を計上した浦和レッズに迫る好決算となることが予想される。

そんなクラブ経営の転換期ともいえる巨額資金を獲得しても、川崎は“堅実経営”の姿勢を崩さない。昨季の優勝賞金はクラブハウスの食堂の新設や、幅広シートでトイレ付きのチームバスの購入、勝利給と年俸のアップなどの人件費に充てて足元を固めた。

また、クラブ幹部は「選手層が厚すぎても薄すぎてもよくない。超大物の外国人を取りにいくこともない」と強調する。大枚をはたいて元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキを獲得したヴィッセル神戸や、元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスが加入したサガン鳥栖は、終盤までJ1残留争いを強いられた。必ずしも結果に直結しないスーパースターの補強に川崎は興味を示さない。

照準はセレッソ大阪の元日本代表MF山村和也らクラブの方針に合致する日本選手。元ブラジル代表FWレアンドロダミアンをインテルナシオナル(ブラジル)から完全移籍で獲得することも決まった。2012年ロンドン五輪の得点王で著名なストライカーではあるが、所属チームとの契約が満了したため移籍金はゼロ。必要最小限の投資でチームに足りなかった高さを持つ選手の補強を実現させるなど、一貫した方針で着実に選手層を厚くしている。

堅実な経営方針の基礎にあるのが、地域に根差したクラブの立ち位置だ。富士通の100%出資だったクラブに川崎市や地元企業から出資を募り、2001年には「富士通川崎スポーツマネジメント」だった運営会社の商号も「川崎フロンターレ」に改めた。

2017年度の入場料収入は9億700万円、今季のホーム試合の入場者数は39万4709人で、いずれも5位。今年は1試合平均観客動員を2001年の3784人から2万3218人まで伸ばした。相撲部屋とコラボして「塩ちゃんこ」という定番のスタジアムグルメを開発したり、レーシングカーをグラウンドに走らせるなどの異色のイベントを開催したり、はたまた「フロンターレ算数ドリル」という教材を川崎市内の小学校に配布したり、アイデアあふれる地道な活動を通じて多くのファンを獲得してきた“地域密着クラブ”には「DAZNマネー」にも浮足立つことのない経営の軸がある。ちなみに、さまざまな仕掛けを中心になって作り出してきた天野春果プロモーション部長は現在、出向の形で東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に籍を移して活躍している。

初代球団社長を務めた池田純氏のもと、プロ野球・横浜DeNAベイスターズは球団オリジナル醸造ビールを開発したり、神奈川の子供72万人にチームキャップを無料配布したりという前例のない施策を実現し、閑古鳥が鳴いていた横浜スタジアムを連日満員にするまでの人気球団となった(年間動員はDeNAが経営に携わる前の110万人から5年間で194万人に)。それに伴い、チームの成績も上昇し、昨年は19年ぶりの日本シリーズ進出まで果たしている。そんな周囲の盛り上がりを意気に感じた主将の筒香嘉智外野手が「これだけお客さんが入った。次は、俺たちの番」と話したこともある。それだけ“ファンの視線”は、チーム強化にも重要な影響を及ぼすというわけだ。

経営と強化は相関関係にある。かつてシルバーコレクターとも称された川崎の近年の成功が、Jリーグの舞台でそれを証明している。

VictorySportsNews編集部

最終更新:2018/12/20(木) 6:01
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