ここから本文です

子どもだけで米国を目指す難民、殺人や誘拐などの危険も メキシコ

2018/12/26(水) 8:30配信

The Guardian

【記者:Sarah Kinosian and Amanda Holpuch】
 ドラさんは何年も、15歳になるのを辛抱強く待ち望んでいた。母親が15歳になったら、エルサルバドルの家を出て行ってもいいと約束したからだ。ドラさんは長年、祖父による肉体的・性的虐待に苦しんでいた。

 ドラさんの目標は、やはり祖父からの虐待を理由に5年前に家を出て、今は米ロサンゼルスに定住した姉2人と合流することだ。

 5月に15歳の誕生日を迎えた後も、5000キロにおよぶ危険な旅に出るのをためらっていた。だが、米国を目指す中米からの移民集団(キャラバン)についての地元のニュースを見て、母の友人とその幼い子ども2人と一緒に旅することを決心した。

「彼らが出発するのを知り…ついに私にも家を去る勇気が湧いてきた」。ドラさんは現在、メキシコの米カリフォルニア州との国境の町ティフアナ(Tijuana)の子ども向け保護施設で暮らしている。

 米国土安全保障省によると、今年、米国境で捕らえられた保護者を伴っていない子どもは4万9000人以上に上る。今月、米国での拘束中に死亡した7歳のグアテマラの少女、ジャクリン・カール(Jackeline Caal)ちゃんは父親と一緒だったが、2人が一緒に旅をした集団には、保護者を伴っていない子どもが50人ほどいたという。

 保護者なしで旅をしていた子どもの多くは、中米で最も危険な国であるエルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラの出身だが、米国を目指す旅でレイプや殺人、誘拐、強盗など、新たな危険に身をさらしている。

 危険な旅を生き延びたとしても、危険を脱したわけではない。官僚的手続きにより米国への難民申請に時間がかかったり、結局、難民申請そのものができなかったりすることもある。キャラバンが待機を余儀なくされている国境の町は、メキシコの激しい麻薬戦争の戦場ともなっている。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権による移民取締りの一環として、米政府は1日当たりの難民申請の受け入れ数を制限する「定量」として知られる制度を導入している。一方、メキシコ政府はこれまで通り、保護者の伴わない未成年者を里親制度に登録したり、子どもたちが危険にさらされるという事実にもかかわらず、本国に送還したりしている。

 女性難民委員会(Women’s Refugee Commission)の難民の権利と正義プログラムの責任者ミシェル・ブラネ(Michelle Brane)氏は、「この状態は、緊張と脆弱(ぜいじゃく)性を伴う時限爆弾だ」と指摘する。

 最近ティフアナを訪れたブラネ氏は、「定量」制は難民申請を待つ間、子どもたちが暴力とギャングからの勧誘にさらされるという特に危険な状況を作り出していると警告する。

 米ロバート・ストラウスセンター(Robert Strauss Center)メキシコ安全保障イニシアティブ(Mexico Security Initiative)、カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)米国・メキシコ研究センター(Center for US-Mexican Studies)、移民政策センター(Migration Policy Centre)の報告によると、非公式の移民申請待機リストには現在約5000人が載っており、待機期間は平均12週間に上るという。

 ティフアナの子ども保護団体は、市内に保護者を伴わない子どもが数百人いると推定している。だが、一人で旅している子どもはギャング、人身売買組織、そしてメキシコ政府に身元を明かすのをためらう傾向があることから、実際の人数を把握することは難しい。

 ドラさんは米サンイーサイドロ(San Ysidro)で難民申請を試みたが、メキシコ移民当局により捉えられ、子ども用保護施設に移送された。今は保護施設で、テレビを見たり、トランプで遊んだり、新しくできた友人と過ごす日々を送っている。

 ロサンゼルス行きの夢はかなわなくなったが、ドラさんは祖父がいた混沌(こんとん)とした環境から逃れられたことを感謝している。

1/2ページ

最終更新:2018/12/26(水) 8:30
The Guardian

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事