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【平成家族】子どものために仕事やめられますか? 学校に行けなくなった娘、父の決断「お金がなくなったら働けばいい」

2018/12/27(木) 14:00配信

朝日新聞デジタル

 子どもが不登校になった時、共働きの家庭でも「子どもを見守るために、仕事をやめた方がいいだろうか」と悩む保護者は少なくありません。この悩みは、一人親家庭の場合、さらに難しい問題となります。生活していくためには、仕事をしなければならない。でも子どものことが心配で、できる限りそばにいて、関われるようにしたい――。実際に、子どもの不登校がきっかけでこの悩みに直面した経験がある男性に、話を聞きました。(円山史)

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「もう学校には行かない」落胆した娘

 東京都板橋区の福祉施設職員、恩田茂夫さん(54)は、長女(19)が幼い頃から、2人で生活してきました。長女は「素直すぎるぐらいの子どもだった」といいます。小学校入学前、学校で困ったことがあっても、先生に相談すれば必ず助けてくれると思っていたようでした。

 ところが、小学校入学後、同級生の男子から暴力を振るわれたり、ひどい暴言を言われたりするようになりました。最初は恩田さんも、玄関で泣く長女を立たせ、集団登校の列に連れて行きました。学校にも再三対応を求めましたが、長女に寄り添ってはくれません。長女はなんとか、学校へ通い続けました。

 「もう学校には行かない」

 長女がきっぱりとそう言ったのは、小3の運動会が終わった9月下旬のことでした。長女への暴言や暴力は断続的に続いていたようです。恩田さんは、「娘は、先生は誰も味方になってくれず、学校にはもう、自分を守ってくれる人は誰もいない、とわかって落胆したのではないか」と言います。

 恩田さんは当時、訪問介護の仕事をしていました。長女が学校に行かなくなってからしばらくは、仕事の合間を縫って自宅に戻って娘の様子を見た後、介護の訪問先に向かう日々でした。

腹をくくった父親

 そんな日々は、1カ月半ほど続きました。学校に行かなくなってからも、長女は自宅で時々泣いており、ふさぎ込んでいました。「この先どうしようか」と悩んだ時、恩田さんはふと思い出した場面がありました。

 長女が幼稚園児だった頃のことです。恩田さんが園へ迎えに行った時、娘の同級生と撃ち合いごっこをして遊ぶことになりました。「バキュンバキュン」と拳銃を撃つまねをする男児を見て、長女が恩田さんの前に立ち、「やめて! お父さんにそんなことしないで!」と言ったのです。

 学校に行かなくなってすぐ、「転校してみる?」と尋ねたこともありました。でも長女は「私は悪いことを何もしていないのだから、転校はしない」と言いました。「それはそうだ」と、恩田さんは納得したそうです。

 恩田さんは考えました。「腹をくくるしかない。今大事なのはどちらなのか」と。「すでにエマージェンシー(緊急事態)なのに、その上『大好きなお父さんが自分のことを見てくれない』と思ってしまったら、娘の一番いい部分、素直で優しい心が失われてしまう」。仕事を辞めて、そばにいることを決めました。

 食べていけるのか、という心配もあります。でも「今何かあったら後悔してもしきれない」という一心で、貯金を取り崩しながら生活を始めました。「彼女をひとりぼっちにしておく方が不安だった。お金がなくなったらまた働けばいい、という気持ちでした」

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最終更新:2018/12/27(木) 14:12
朝日新聞デジタル

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