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【高校ラグビー】サッカー出身PR、転部組LOも奮闘。魚津工、3年ぶり花園までの軌跡。

2018/12/29(土) 8:13配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

 試合前日のミーティングでは、「賞を取った流れで初戦に勝とう」と皆で言い合っていた。12月27日の開会式での「賞」だ。当日、第1グラウンド。狙い通りに、「明るく元気な行進」をしたチームに与えられる『フィールドドリーム賞』を獲得した。

 富山の魚津工高は、理想的な形で大阪・東大阪市花園ラグビー場での全国高校ラグビー大会に入ることができた。開会式終了から約3時間後、第2グラウンドで鹿児島実高との初戦を迎える。山田浩史監督はこうだ。

「そんな緊張しているようなそぶりは見せていませんでした」

 キックオフの笛が鳴ると、様子が変わった。前半8分、12分とラインアウトのミスをきっかけに失点。勢いのある相手ランナーに何度もタックルを外され、チャンスを得ても落球や被ターンオーバーを重ねた。指揮官は再確認する。

「試合が始まってから皆の顔を見たら…やはり緊張していたんだと」

 前半終了までに0-33と点差をつけられた。しかしSOの高瀬遊介主将は、沈んでいなかった。

「絶対、最後まであきらめるな。自分たちのしたいラグビーをしよう。そう話していました。皆も下を向いていなくて、まだいける、という感じでした」

 自慢のオープン攻撃が最後まで続いたのは後半16分。22メートルエリア右から球がつながると、左中間のスペースへ大黒柱の高瀬が飛び込んだ。続く26分には、左右に揺さぶってゴール前に入るとPRの魚田基平が接点から球を持ち出し鋭くパス。NO8の河尻龍世がインゴールへ躍り出た。

 ノーサイド。14-45。初戦敗退という結果にも、指揮官はクラブの成長を見た。

「3年前のチームなどであれば、前半にあれだけ取られると70、80点も…という感じもありました。ただこの子たちはどうしても勝ちたいという気持ちも見せた。後半2トライは、うちのチームの成長(の証)です」

 県の有望な中学生は京都成章など他県の強豪へ挑みがちで、富山県勢が全国大会で勝ったのは2014年度の高岡第一が最後だった。なかなか爪痕を残せない状況下、魚津工も「3年前」の2015年度に通算2度目の出場も初戦敗退。それでも、その2015年の成果を躍進のきっかけにできた。

 高瀬主将は、吉島ラグビースポーツ少年団に入った小学1年時からプロ志望だった。富山県中学選抜での活動後は県外挑戦を検討していたが、花園に出る魚津工を見て翻意。同級生HOの飛彈凛成を誘って地元に残った。それとほぼ同時期、当時サッカー少年だった魚田も魚津工ラグビー部入りを決断する。当時の魚津工ラグビー部の小西貫太主将が、自身と同じ早月中サッカー部の出身だったのだ。

 高瀬は入学するや、自らの手で全国行きを決めるべく奮闘する。全体練習後もグラウンドに残り、タッチフットなどに興じた。同級生に未経験者が多いなか、「初めは教えたりするのが大変だったんですけど、皆、ラグビーが好きで、僕らのやる練習にも付き合ってくれて、どんどん上達してくれた」。自身の強化と味方の育成を両方させるなか、ある普遍的な事象に気付けた。

「ラグビーが好きという気持ちが大事だと思いました。先生に誘われて入っただけという選手より、ラグビーが好きで入部した選手の方が成長は速かった」

 指揮官が「いまの3年生は入学時から花園への意志を持っていて、日常生活でもラグビー中心の考えを徹底していた」と目を細めるかたわら、ラグビーというスポーツそのものが校内で影響力を拡大してゆく。

 この日LOで出場の西村駆留は、高校2年の夏まで柔道部員だった。北信越大会の男子100キロ超級に出る実力者だったが、やがて校庭に舞う楕円球へ吸い寄せられてゆく。家族からの「せっかく上達した柔道をなぜ辞める」という反対を押し切り、転部。グラウンドで身体をぶつけ、相手が吹っ飛んでゆくのに快感を覚えた。

 部内では管理栄養士による指導があり、重量級の西村もラグビー部で増量が叶った。チームに与えられた背番号5のジャージィは少しきついため、丈が短くなってしまう。元サッカー少年の魚田も、最初は60キロしか持ち上げられなかったベンチプレスを145キロまで上げられるようになった。体重も3年間で約20キロもアップさせた。

 花園で負けたのは悔しい限りだが、再び花園に出られるチームになれたことには満足している。それが魚津工の現在地だろう。高瀬主将はこう締める。

「初めてこんな大きな舞台で試合をしたので、選手のなかには硬い部分があったとは思います。いざグラウンドに出たら…という感じです。ただ、後半それを修正できたのは収穫です」

 これまでは地元の社会人チームとの合同練習で強さを磨いていたが、来季は「もっと県外に出たい」と山田監督。「(この日は)相手のBKが速く、翻弄されるところがあった。県内にあれだけ速いチームはないものですから、考える前に抜かれた感じがします」とも続ける。

 だからこの先は、平時から花園常連校と一緒にトレーニングがしたい。その結果、大舞台に平常心で臨めたらいい。前年度代表校の富山第一などとしのぎを削り、2年連続での全国行きを決めたい。

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