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<盗撮の闇(4)>身近な病

2018/12/30(日) 16:21配信

佐賀新聞

 佐賀市の店舗で女性のスカートの中を盗撮したとする県迷惑防止条例違反の罪で、佐賀地裁は10月、男(42)に懲役7月の実刑判決を言い渡した。男は過去にも盗撮が発覚、罰金刑と執行猶予付き懲役刑の判決を3回受けていた。「なぜ繰り返すのか、本人も分からないと言っている」。閉廷後、弁護人は理解に苦しむといった様子で語った。

 盗撮に関する病がある。他人の着替えや裸をのぞき見ることに執着する「窃視障害」。のぞきや盗撮行為の中毒症状を指し、「6カ月以上」の行為継続を診断基準とする。

 ▽のぞきは激減

 「今はアダルトサイトで手軽に盗撮動画を視聴できる環境があり、単なるのぞきは激減したと言われている。一方でスマートフォンの普及で盗撮をする人は増え、窃視障害は主に盗撮を指すようになった」。NPO法人「性障害専門医療センター」(東京都など)代表理事で、窃視障害の治療にも当たる精神科医の福井裕輝氏は指摘する。

 福井氏によると、盗撮する人は「相手が気付いていないからいいじゃないか」と罪悪感が小さく、肩書にかかわらず「自己肯定感がとぼしい人」がする傾向にある。「相手に知られずにのぞき見るスリルや征服感、優越感を求めて繰り返している」とする。

 窃視障害の患者の多くは専門外来を受診するまでに、盗撮を平均1千回程度繰り返している-。大森榎本クリニック(東京都)の斉藤章佳・精神保健福祉部長が、患者406人を対象に分析した結果、こうした実態が見えてきた。

 初診まで平均7・2年、盗撮の頻度は平均週2~3回。「大卒で会社勤めをする働き盛りの既婚男性」。性別や年代、職業、学歴、婚姻歴などを分析していくと、典型的な患者像として浮かび上がってくるのは、どこにでもいるような人の姿だ。斉藤氏は「自分たちとそう変わらない属性の人が繰り返す身近な犯罪ということを示している」と読み解く。

 ▽根幹に女性差別

 窃視障害は、セラピストと共に考え方のゆがみを直すなどする「認知行動療法」や「薬物療法」が有効とされる。福井氏は「加害者への治療は再犯抑止になり、被害者保護につながる。適切な治療につなげるためにも『盗撮は病』という視点が社会で共有される必要がある」と強調する。

 一方、盗撮行為の根幹には、男性による女性差別があるとの見方もある。大阪電気通信大の中里見博教授(ジェンダー法学)は「盗撮は、相手が抵抗できない状況下で強要する性暴力そのもの。病気と捉えると、加害者の免罪符になりかねない」と問題視する。

 「軽い気持ちでやっている人が大半」とし、「法整備などきちんとした社会的制裁の仕組みを整えるべきだ」と抑止の手だての必要性を訴えた。

最終更新:2018/12/30(日) 16:21
佐賀新聞

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