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BUCK-TICK、櫻井敦司の復帰公演となった19年連続武道館で温かみのある慈愛に満ちたステージ

2018/12/31(月) 16:15配信

エキサイトミュージック

BUCK-TICKが、2018年12月29日に東京・日本武道館で『TOUR No.0 -FINAL-』を開催した。彼らが12月29日に日本武道館でライヴを行うのは今年で19年連続。この公演は、今年3月にリリースしたアルバム『No.0』を引っ提げ、同月よりスタートしたホールツアーと、10月よりスタートしたライヴハウスツアーの集大成であると同時に、今月9日の公演後に体調不良を訴え、その後の4公演を延期することになった櫻井敦司(Vo)の復帰公演でもあった。

この20日間、メンバーも、そして全国のBUCK-TICKファンも、同じ月を見上げ、同じ願いを掛けていたのではないだろうか。この出来事は、誕生と終焉、愛と死を描いた『No.0』の世界を具現化するこのステージに、図らずも新たな意味や想いを加えることとなった。その結果、日本武道館という大きな会場でありながら、まるでメンバーとファンとの指と指が触れ合うような、温かみのある慈愛に満ちたステージになっていたように思う。

会場には彼の体調を不安視する空気も少なからずあったと思うが、イントロからバックに炎の玉が上がるド派手な演出と、櫻井の力強い歌声でその不安を一瞬にして一掃したのが1曲目の「GUSTAVE」だった。「ノスタルジア -ヰタメカニカリス-」をアレンジしたSEが、ステージ前面に貼られた紗幕にスチームパンクの映像と歌詞で視覚化されている頃、その奥のステージではメンバーがスタンバイ。『No.0』随一のダンスチューン「GUSTAVE」のイントロと共に紗幕が落ち、センターから真っ赤なレースの衣装に黒い着物を羽織り、軍帽を被った櫻井が登場すると大きな歓声が上がった。猫の手ダンスで一体化したフロアのボルテージを、「Baby, I want you.」「美醜LOVE」と続くアッパーチューンでさらに引き上げた。

ステージは、映像や照明を駆使したホールツアーでの“観せる『No.0』”と、クラップやダンスで一体感を煽ったライヴハウスツアーでの“体感する『No.0』”の両方を融合させた形で展開していく。「みなさん今晩は。どうもご心配をお掛けしました。今夜は一緒にダンスしましょう」と、不敵な笑みを見せた櫻井と共にフロアもクラップしながら乱舞した「光の帝国」、「Ophelia」と「サロメ -fame fatare-」では儚さと激しさと、両極にある女性の姿を歌に寄り添うバンドアンサンブルとパフォーマンスで魅せた。

ヤガミ・トール(Dr)が轟音を打ち鳴らす「IGNITER」では、今井寿(Gt)と櫻井の力強いツインヴォーカルが生命力みなぎる眩い太陽を思わせたかと思えば、ヤガミと樋口豊(Ba)のリズム隊が鳴らすトライバルなリズムが禍々しいオーラを放つ「月蝕」でフロアを一変し、陰の世界へと引きずりこむ。こうして相反する2曲の対比が面白いのもこのセットリストの聴きどころの一つ。満月をバックに雄々しく吠える「BABEL」と、三日月をバックに儚い心情を吐露する「Moon さよならを教えて」も然り。星野英彦(Gt)と今井によるアコースティックナンバーも、スパニッシュな「Cuba Libre」ではギラギラと照りつける太陽を、「Mr.Darkness & Mrs.Moonlight」ではミステリアスな月夜を描いていた。「もっと、もっと欲しい。僕の好きなコンサート、歌を、誰だい? 取り上げたやつは」と、櫻井の一人語りから始まった「BOY septem peccata mortalia」から、「薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-」と終盤に向けてステージをかき回し、“人生は愛と死”と高らかに「Memento mori」を歌い本編は終了した。

大歓声で迎えられた1度目のアンコールは、鼓動とシンクロするリズムで生命の誕生に思いを馳せる「零式13型「愛」」、ホールツアーから変化したサンドアートと燃えるような赤い照明が、歌の世界をより深く表現した「ゲルニカの夜」、そして「胎内回帰」を全身全霊を込めて歌い上げ、凝縮した『No.0』の世界観を濃厚に見せた。

2度目のアンコールで櫻井が言葉を詰まらせたのは、「TANGO Swanka」「狂気のデッドヒート」で再び会場を沸かせ、メンバー紹介を終えた後のことだった。「病室でみんなの……」と言ったところで思わず言葉を詰まらせる。歓声に後押しされて語ったのは、感謝の思いだった。「たくさんのお見舞いメール、励ましの手紙、本当にたくさんいただきました。この場をお借りしちゃってすみません」。延期になった公演について「みなさんにいい機会をもらったので、来年遊びに行きます」と詫びながら、最後に「スタッフとメンバー、何も言いませんがどうもありがとう。たくさんのLOVEありがとう」と語った。そして「感謝の気持ちを込めて歌います」と「鼓動」を披露。“生きていたいと思う/愛されているなら/ごめんなさい/ありがとう”。1995年に生まれたこの曲が、今リアルな言葉となって目の前の一人一人へと届けられる。ファンもまた、当時とは違う思いを受け止め、噛み締めたことだろう。

歌い終わった櫻井が、そっと今井の肩に手を置きステージを捌けると、今井がセンターへ立ち、アウトロのバンドアンサンブルを牽引していく。途中、櫻井自身の原体験を歌詞に投影した「禁じられた遊び-ADULT CHILDREN-」のイントロのメロディを織り込んだのは、彼を想ってのことだったのだろうか。ライヴハウスツアーではこの曲で締めくくっていたのだが、今井が元の立ち位置に戻り「きらきらぼし」のメロディを弾き始めた頃、櫻井が再びステージへ戻ってきた。そして大きな愛で会場を包み込むように「夢見る宇宙」を奏で、ステージを締めくくった。

『No.0』における愛と死の循環は、BUCK-TICKが生み出すこの優しい宇宙の中で幾度となく繰り返される。延期した4公演はすでに振替日が発表されているが、この日のライヴでアルバム『No.0』の一つの完成形を観た気がする。さらには、31年目を迎えたBUCK-TICKの揺るぎないバンド力と底力を、改めて思い知らされた日でもあった。

興奮冷めやらぬ会場で、終演後2019年5月25日(土)・26日(日)に幕張メッセでワンマンライヴ『ロクス・ソルスの獣たち』を開催することが発表された。BUCK-TICKが幕張メッセで単独公演を行うのは初のこと。どんな奇想天外な夜が繰り広げられることになるのか、タイトルを見ただけでもワクワクする。壮大な『No.0』の旅を終え、新章に突入するBUCK-TICKの未来に期待は高まるばかりだ。
(取材・文/大窪由香)

最終更新:1/1(火) 0:45
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