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<盗撮の闇(6)>取材ノート 犯罪抑止へ議論深めて

1/1(火) 16:38配信

佐賀新聞

 湯気が立ちこめる群馬県の有名温泉街。山を望む露天風呂で、男性スタッフが塀の外を歩きながら不審者や不審物の有無を確かめていた。十数年前、裏山に忍び込んだ男が女性風呂を狙うなど盗撮被害が相次ぎ、外部と仕切る塀を高くしたり、見回りの回数を増やしたりしている。

 「お客さんをより安全に帰すことを心掛けているけど、どんなに対策しても100%は防ぎきれない」。管理者の言葉に切実さがにじむ。盗撮犯の手口は巧妙化し、最近はカメラを搭載した小型無人機ドローンが飛来する騒ぎもあった。

 この連載では、佐賀や和歌山、群馬など各地を取材した。小型カメラなど犯行ツールが容易に手に入る環境をはじめ、盗撮映像が販売されている現状、映像の流出を巡る被害者の苦しみ、盗撮を繰り返す性依存症の存在、法整備の遅れに焦点を当てた。

施設側、対策に消極的

 取材を進める中、温泉や銭湯など施設側の盗撮対策の現状も気になった。全国盗撮犯罪防止ネットワークの平松直哉代表によると、コストや風評面から対策に消極的な傾向という。力を入れている群馬県の露天風呂は珍しいケースで、女性自身で「自衛」するほかない厳しい現実があることを意味している。

 平松氏は「カメラは何にでも偽装できる。盗撮犯の視点を知ることが自衛につながる」と語る。入浴施設なら、女盗撮師がシャンプーなどが入った「お風呂セット」を浴場に持ち込み、中に仕込んだカメラで撮影する手法が主に知られる。

不審者や不審物、見極める目を

 個室トイレでは、床との隙間からカメラを差し込む手口があり、男性も出入りできる男女兼用トイレや多目的トイレはカメラが仕掛けられる恐れが高まる。マッサージ店など施設側が盗撮する場合もある。一方、防犯専門店には、レンズを発見する盗撮対策グッズも置く。こうした事情を知った上で、不審者や不審物を見極める目を持つことが欠かせない。

 連載では、子ども向けの習い事教室があっていた佐賀県の寺で、住職がトイレに盗撮目的のカメラを設置した事案を取り上げた。女子児童がカメラを見つけた後、教室側は事実を確認したのに、警察に届けなかったことを知った。

規制強化 世界的な流れ

 性的な盗撮の規制強化は世界的な流れで、ベルギーでは16歳未満の子どもを盗撮すれば「10年以上15年以下の懲役」の罪に当たる。そんな重大な性犯罪の恐れがある事案を見逃した教室側の対応に、盗撮被害の深刻さと罪深さが十分に社会に伝わっていない現状が透けて見える。今後、施設に対する盗撮対策の義務化や犯罪抑止、被害回復に向けた議論が深まってほしい。

 相手に知られずに盗み撮る特有の犯罪。被害がないのか、それとも見えていないだけなのか。「盗撮の闇」が広がる現代で、個々人や社会の在り方が問われている。=おわり

最終更新:1/1(火) 16:47
佐賀新聞

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