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中国フィンテックに日本は追いつけるのか?  日本美食・董路×オイシックス・西井敏恭

1/7(月) 12:00配信

MONEYzine

■ふたりの出会い

――日本はこれまで、主にアメリカの先進的なビジネス手法を取り入れてきましたが、フィンテックにおいては中国の存在も非常に大きいと感じています。今日は、董路(ドン・ルー)さん、西井敏恭さんに、おふたりの意外な共通点からお話をうかがえればと思います。

董:僕は中国北京の出身で、1993年、20歳の時にはじめて1人で日本に来ました。日本語学校に通った後、埼玉大学の経済学部で学びながらプログラミングやインターネットの知識を身に着け、卒業後はゴールドマン・サックス(証券)に入社し、東京支店で4年間働きました。ゴールドマン・サックスには、実はエンジニアとして入ったんです。これは僕の出身大学、専攻を考えると異例なことでした。

日本美食 CEO 董路(ドン・ルー)氏 
1972年生まれ、中国・北京出身。20歳で日本に留学し、1994年に埼玉大学経済学部に入学。
同大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。その後、スタンフォード大学にてMBAを取得し、
2004年に中国に帰国。外資系コンサル、ベンチャーキャピタルを経て、2社のベンチャーを立ち上げる。
2014年に事業を売却し、日本に拠点を移す。2015年12月、日本美食株式会社を設立し、
外国人観光客向けマルチ決済と飲食予約サービスを展開中。

 入社後には、皆さんの記憶にも残っている大きな出来事が立て続けに起こりました。アメリカのシリコンバレーでのバブル崩壊、エンロン事件、9.11です。1998年から2002年の4年間のうち、2年間はエンジニア、後の2年はバンカーとして、マーケットがダウンしている苦しい状況を経験しました。一方、僕が入った時は未上場企業だったゴールドマン・サックスは1999年に上場したので、短い間に非常に濃い経験をしました。

 その後、スタンフォードのビジネススクールに2年間通い、世界の金融の頂点であるウォール街とテクノロジーの頂点のシリコンバレーも経験。それから中国に戻り、コンサルティングファームに入社して上海で1年勤務した後、シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルの中国法人の社員として働きました。

西井:中国でも起業しているんですよね。

董:2006年から中国で2社、アパレルECを立ち上げました。ひとつは、男性用シャツのネット販売ベンチャー「Beyond Tailors」、もうひとつは、アメリカのヴィクトリアズ・シークレットのビジネスモデルを取り入れた女性のブラジャーのEC「蘭繆(LA MIU)」です。2007年にCCTV(中国中央電視台)の取材で、ジェフ・ベゾスと中国を代表するECのCEOとして僕が対談する機会があり、番組の中でジェフ・ベゾスがシャツを12枚注文してくれたこともありました。

 この2社を成長させ、売却した後、3社目として今の会社「日本美食」を設立しました。外国人観光客が日本に遊びに来ると当然飲食をしますよね。その際に3つの大きな悩みがあるんです。それが、「飲食店を探せない」「言葉が通じないから予約や注文ができない」「スマホ決済が使えないので支払えない」。それらを解決するために日本美食を立ち上げました。

――ここまでのお話で、本が3冊ぐらいできそうですね(笑)。

西井:そうなんですよ。だから僕は今日、何も喋ることがありません(笑)。1年ほど前に、「面白い人がいる」と紹介されて会ったのが最初です。僕もこれまで世界一周旅行に2回出かけていて本も出しているくらい旅行が好きだし、おいしいご飯も大好き。

 私のキャリアはネットECの黎明期にサイトを立ち上げて、試行錯誤しながら運営をしていたところからスタートしました。その後ドクターシーラボを経て、オイシックス・ラ・大地に入り、自分の会社で様々な会社のコンサルティングをしています。だから、董さんとは最初に会った時からすごく話が盛り上がりました。

シンクロ 代表取締役社長 / オイシックス・ラ・大地 執行役員CMT 西井敏恭(にしい ともやす)氏
2001年~2003年まで2年半かけて世界一周。ブログやSNSのない時代にWEBで旅行記を発信して
人気になり、旅行記を出版。WEBの面白さを知って、デジタルマーケティングの世界に入る。
ドクターシーラボにてデジタルマーケティングの責任者を務め、2014年独立。
国内大手企業のマーケティングアドバイザーを行いながら、オイシックス・ラ・大地では
執行役員CMT(チーフマーケティングテクノロジスト)としてサブスクリプションモデルの
EC戦略を担当。ウェブマーケティングのプロとしてメディア・講演など多数出演。
出版書籍 世界一周旅行記:https://www.amazon.co.jp/dp/4344420497/
デジタルマーケティング:https://www.amazon.co.jp/dp/4798153745/

 その頃は日本でまだこんなにキャッシュレスが騒がれていなかったのですが、董さんから話を聞いて「何それ? 」と。董さんはいつも、「いくら口で言ってもわからない。体験しないと」と言っていたので、彼と一緒に中国に視察に行くことになりました。

■中国視察ツアーで見えてきたもの

董:西井さんはいろいろな国に行っていますが、中国についても非常に詳しい。多分僕よりも、中国の色んな場所を知っていると思います。

西井:僕は17歳の時に北京を訪れたのが最初で、その後20回くらいに分けてトータルで1年ぐらい、チベットや新疆ウイグルを含めてすみずみまで中国を旅行しました。中国の人から「そんなところに行ったの」と驚かれることもあります。だからすごく中国ビジネスに興味があったし、中国視察に行った時には「日本の、3、4歩先を行っている」と感じました。

――「1歩先」ではなく「3、4歩先」なんですね。

西井:正直、もう日本は絶対に追いつけないかもしれないと思いました。

董:いや、わかりませんよ。僕が25年前に日本に来た時、「中国は遅れている」と思いました。成田空港からはじめて新宿までやってきた時、ネオンの明るさに「これが夜なのか! 」と衝撃を受けました。走っている車、皆が着ている服、どれも僕にとっては驚きの連続で、タイムマシンで未来に来たような感覚でした。

 でも、日本と中国の差はだんだんと縮まっています。中国企業も最初はアメリカのテックカンパニーのビジネスモデルをコピーして事業を展開してきました。それがアリババであり、テンセントであり、バイドゥなのです。しかし、最近頭角を現してきた中国企業はコピーではなく、世界のどこにもないビジネスモデルで頂点に立とうとしている。

 僕はそこにビジネスチャンスがあると思い、日本で起業しました。中国で成功しているビジネスモデルの一部を取り入れて日本で再現し、さらに中国では実現していない機能をオリジナルで開発して加えたのです。今は中国が未来を走っている。中国では路上でお店をやっている70代のおばあさんも普通にスマホを使って決済をしていますが、外国の人にはなかなか理解してもらえないので、決済の未来はこうなるんですよということで「中国新経済、体験の旅」というタイトルで中国視察ツアーを企画しました。

西井:何人か僕の周りの経営者も一緒に連れて行ったのですが、みんなすごく衝撃を受けていました。実際に向こうに行ってみると、シリコンバレーを通り越したすごいサービスがあるということがわかる。

 中国でもスターバックス コーヒーは流行っていますが、最近はluckin coffee(ラッキンコーヒー)も流行っています。これは面白いコーヒーショップで、アプリでしか注文できないようになっている。コーヒーが出来上がると通知が来る。取りに行ってQRコードで支払い、飲み物を持ってお店から出ていく。お店で飲むんじゃないんです。日本だと、店内でソファに座ってスマホを見たりして時間を過ごす人が多いと思いますが、ラッキンコーヒーは小さな店舗で、忙しいビジネスパーソンがコーヒーをさっと受け取ってまた仕事に戻るスタイル。なので、広い店舗や接客する店員さんが必要ないんです。

董:1年で1400店舗に成長しているということなので、中国のスピードは本当に驚きですよね。でも、ターゲットを絞って、オペレーションをシンプルにしているから展開しやすい。いまや、オフィスビルには必ずこのお店が入っているという感じ。すごくセグメントされているビジネスモデルなんです。

西井:僕も忙しい時は、待つのは嫌ですね。この間、金沢に行った時にスタバの前を通りかかったのですが、すごい行列でした。観光地だからオフィス街とはちょっと違いますけどね。

――スターバックスも日本でモバイルオーダー&ペイを始めますが、それが中国では当たり前になっているんですね。

西井:ラッキンコーヒーがスタバと違うのは、わざわざアプリを入れなくてもいいところ。WeChat上で注文ができるんです。

董:先日社内で、日本と中国でO2O(Online to Offline)がどれだけ日常的に使われているのかディスカッションしたのですが、Uberのようなアプリで車を呼ぶのはO2O、ラッキンコーヒーもそう。中国ではO2Oなしには、ほとんど生活ができなくなっている。多くの中国人はO2Oのシステムの中で生活しています。一方、日本ではO2Oが関与するのは10%ほどではないでしょうか。

西井:僕ら外国人が行くと、中国の銀行口座を持っていないから電子決済ができなかったりする。しかも、中国のアプリ市場は中国だけでほとんど成り立っているから、インターフェイスも中国語なんですよね。だから中国人と一緒にいないとお金も払えないし、タクシーも呼べない。

――コピー機の画面にも、傘のレンタルマシンにもQRコードが。本当に至るところにQRコードがあるんですね。

董:銀行口座・携帯番号・アプリ、必ずこの3つが連携している。だから、この3つがないと中国ではほとんど生活できない。

西井:そうなると、スマホの充電がめちゃくちゃ重要。切れると何もできなくなるから、充電器のシェアリングとかありますよね。それも、日本で例えると、渋谷で借りて新宿で返すとかできちゃうんですよ。どこでも返却できる。

董:バッテリーが命です(笑)。充電が切れたら財布を持っていないのと一緒。世界との接点がなくなるんです。

■大企業からではなく、一般人からキャッシュレス化

西井:こういう現象は僕たちが訪れた上海だけでなく、中級の都市以上はほとんどそうですね。ホームレスの人もQRコードでお金をもらっている。現金は誰も持っていないから。屋台で焼き栗を売っているおばちゃんたちもQRコード。日本だとフランチャイザーががんばって加盟店に端末を導入してもらってキャッシュレスにしているイメージですが、中国は違いますね。

董:日本では、まず大手が技術を取り入れて展開するイメージがありますが、中国は逆。小さな焼き鳥屋さん、焼き芋屋さんたちがレジを設置するのが難しいから使っている。大企業ではなく、一般人が最初にキャッシュレスを導入している。それが中国市場の大きな特徴です。

西井:考えが逆なんですよね。そこが刺激的ですごく面白い。ホテルでの支払いの場面でも、スマホ決済の利便性を体感しました。董さんはQRコードで、僕たちはカードで支払ったんですが、QRだとものの10秒ぐらいで終わる。僕らはカードでピッとやって通信に結構時間がかかり、サインして……という感じ。Suicaのタッチの速度とクレジットカード払いの速さを比較するとわかりやすい。

董:先ほど、西井さんが「中国に一生追いつけない」とおっしゃってましたが、僕がそうは思わないのはそこなんです。Suicaは世界一進んでるんですよ。「日本人はキャッシュが好き、キャッシュレスは嫌い」というのはナンセンスだと思います。だって、Suicaは立派なキャッシュレスですよ。

 なぜSuicaがこれだけ普及したのか考えてみてください。Suicaがなかったら、自分が乗る路線や値段を調べて券売機にお金を入れて乗車券を買わなければならない。この差は歴然ですよね。速いし、便利。自動的に計算してくれるのはもちろん、Suicaで大事なのは現金で乗車券を買うより安いということ。

 人間は合理的に動きます。だからSuicaは日本で普及した。キャッシュが好きとか嫌いということでは、正しい議論はできないと思います。そのロジックで、LINE Pay、楽天ペイなどがどんな体験を作れるかです。がんばればSuicaと同じ、あるいはそれ以上の体験が作れると思っています。便利で安ければ、人間は一瞬のうちに動く。

 日本の社会は民族の多様性はそれほど高くないですから、ティッピングポイントに至るまでの時間は短い。しかし、中国やアメリカはその社会構造や民族性から考えるとティッピングポイントに至るまでが長いはず。中国は2年から5年でティッピングしましたが、日本ではもっと早いはずです。

■人を動かすものは何か

――日本の課題として、高齢者にどう使ってもらうかというのがあると思います。先ほど驚いたのは、70代のおばあさんがやっているお店でもスマホ決済が使えるということなのですが。

西井:日本でも、60代でスマホを使っているという人は多いと思います。10年後にはもっと多くなっていると思います。PCもそうでしたが、昔はインターネットで物を買うのは若い人だけだと言われていました。でも今は全然そうではないですよね。使っているユーザーの幅は広がっています。

 日本人は新しいものを取り入れて、自分自身も柔軟にどんどん変わっていくのが得意だったと思います。でも、なぜかある時からそうでなくなってしまった。そこは意識を変えないといけないところなのかなと思います。

 この間、北欧のエストニアに行ったのですが、この国は世界で1、2位を争うくらいキャッシュレス化が進んでいるところで日本とは常識が違いました。フェリーに乗るために窓口にチケットを買いに行ったのですが誰も並んでいない。最初は「あれ? 思ったよりも簡単に買えたな」と思ったんです。日本だとめちゃくちゃ並ぶから。でも後でネットを見たら、ネットで買ったほうがチケットが安いことがわかった。冷静に考えたら、受付の人の人件費がかかっているからそちらのほうが高いのは当然なんですよね。

 現金で支払う窓口では人件費を料金にプラスすることで、キャッシュレスの利便性がはっきりするし、そうなれば年代が上の方でも使うようになると思います。使ってみれば、実際そっちのほうが簡単ですし。

 この写真はエストニアの駐車場の看板なのですが、ゲートのないアプリだけで使える駐車場なんです。あと街中ではピザ配達マシーンにも遭遇しました。まだテスト段階だと思いますが何台も見かけました。

董:「簡単で安い」この2つだけです。でも、もうひとつ高齢者がスマホを使う理由がある。僕の96歳の祖母も、WeChatを最近使うようになりました。その理由は「寂しい」から。だって、自分の子どもや孫とコミュニケーションを取りたいじゃないですか。我々とコミュニケーションしたいから、我々に合わせるんです。

 これは技術革新のそもそもの原点ですよね。人間を楽にする、生活を楽しくする、効率を良くするから安い。だから、中国ではシニアの人たちもコンバージョンした。それは日本でも起きると思います。

――私も「高齢者はこうだ」と思い込んでしまっていたのかもしれません。

董:自分が高齢者にならないと、その気持ちはわかりません。決めつけはダメですね。

■スローガンは「Nobody cares about payment」

董: QRコードが中国で普及した一番の理由は、安くて便利だから。QRコードは印刷コストがありません。画面に表示して読み取るだけ。カメラとQRコードがあればいい。本当は非接触決済のFeliCaがもっと良いのですがコストが高い。だから普及しない。

 そうなるとQRコードがどんどん進化して、ローカル通信でも認証可能になり、改札でも使えるようになる。地下鉄で通信ができなくても、ローカルで通信できる時に残高から引かれるというシステムです。カメラとQRコードが優れているから広まったというより、ここでも原点は安さ・便利さだと思います。

――日本ではATMがたくさんありますが、中国ではどうですか? 

董:ATMは電話ボックスと同じで、どんどん消えています。スマホが普及したことで電話ボックスが消え、スマホ決済が普及したことでATMが消える。ATMの最後の場所は銀行の窓口とコンビニ。ATMの運用コストは高いですから。日本では年間2兆円かかると言われています。

西井:それニュースになってましたよね。ATMの維持費が銀行企業にとって負担になっていると。これから銀行がそのコストをどう下げるかに取り組んでいけば、変わっていくと思います。

董:我々ベンチャーがやることは、より安くて、便利なサービスを作ること。「老人でも使いやすい〇〇」「子どもが使いやすい〇〇」、そういったベンチャーがこれからたくさん出てきます。そうすると必然的に簡単に安くなるはずです。

 たとえば最近「ウェルスナビ」という、スマホアプリに投資をお任せできるサービスを提供している会社が日本で成功しています。コンセプトはすごく簡単ですから、これをAlipayやWeChat Payのウォレットで「1元から投資できるサービス」として展開したら大当たりすると思います。

――ウェルスナビCEOの柴山さんには、MONEYzineでもインタビューしました。

董:ひとつ言っておくと、僕は「キャッシュレス」という言葉はほとんど使いません。目的と手段が逆転しているから。よく「自社サービスで、キャッシュレス化を実現する」とスローガンを掲げている会社がありますが、僕のスローガンは「Nobody cares about payment」。キャッシュレスにすることによって何をしたいのか、ということが大事だと思います。消費者がほしいのは、より楽で、より便利で、より楽しく生活すること。その手段がキャッシュレスかどうかは問題ではないんです。議論のポイントがずれていると思います。

 一方、企業にとっては、スマホ決済であれば毎日の集計が簡単にできるし、何が売れて、何が売れないのかも簡単に把握できる。従来の3分の1の店員で利益を出せたり、店員に外国語を習得させなくても顧客満足度を高められる。全部合理的な目的があるんです。企業の目的はひとつ。店長、オーナー、観光客、消費者、彼らを幸せにするためにどういう技術が必要なのかということ。これが原点じゃないかと僕は思います。

■やれることはたくさんある

――ここまでのお話で、日本でビジネスを展開する人にヒントとなる情報がたくさん出てきました。

董:中国にあって日本にはまだないサービスがあれば、コピーしてとことんやればいい。日本人がやれないわけはないと思う。日本は、家電、車、携帯電話などで世界の頂点に立ちました。僕から見て、なぜ日本の成長が止まったかというと、「頂点に立つ=まねできる人がいなくなる」からなんですよ。

 次にどうするかという壁は、中国もアメリカも同じです。シリコンバレーのイノベーションも少しずつ減ってきている。今、中国がリードしている領域があるならそれを日本はフォローして展開すればいい。ずっと先頭を走るのは難しいことです。企業の人たちはシリコンバレーに行くより、今は中国に行ったほうがいいと思います。

西井:本当にその通りですね。中国に行って何が楽しかったかというと、これまでにないユーザー体験を提供している場所が街の中のあちこちにあるということ。

 たとえば、バーみたいなお店の中でお客さんが歌っているところをニコ生みたいに全国に配信していて、コメントがバンバン入ってくる。それをみんなで見ながらお酒を飲んだりしている。

 スーパーでは、アリババが作った「盒馬?生(ファーマーションシェン)」。アプリで注文すると30分以内に商品が届くんですが、店内に商品をピックアップするスタッフがいて、注文した商品がまとめられて、外に運ばれてバイク便でバンバン配達に行く。産地もQRコードで全部確認できるようになっている。もちろんレジがないから並ばずに済む。

董:彼らはスーパービジネスのコンセプトを変えました。スーパーは商圏が決まっていて、人数×客単価×頻度で売上が決まってくる。一見するとコストが高そうに見えますが、スーパーの倉庫にデリバリー機能を持たせると、店員の手が空いている時にピッキングをやることで商圏が広がり、コストがダウンする。Amazon Goもそうですが、彼らは根本的に小売を変えつつある。これを「ニューリテール」と呼びますが、通常のスーパーより、楽しい、簡単、楽なんですね。

――やれることはまだたくさんありますね。

董:まだまだあります。日本人はイノベーション、コピー、改善が上手です。中国に行ってコピーできるものはコピーして日本で実現すれば、日本はまた中国以上のものを作り始めるという良い循環になるのではと思います。それは絶対できる。スーパーにしてもカラオケにしても、西井さんが手掛けたらまた中国とは違うものになるのではないでしょうか。それをまた中国人が見て「ああ、いいな」とお互い刺激になる。それは面白いビジネスの瞬間ですよね。

西井:カラオケは本当に面白かった。カラオケボックスみたいなものが駅にあるんですよね。自分が歌ったものが転送されて録音やシェアが簡単にできる。今までは、YouTuberみたいな人たちは自宅に録音や撮影の設備が必要だったかもしれないけれど、もっと手軽に、身近にいる歌のうまい人が人気ミュージシャンになれる可能性があると思いました。

董:カラオケ自体は日本人の発明です。それが新しい技術を取り入れて変わっている。正直、最初はバカにしていましたが面白かった。あれは癖になります。

西井:そうなんです。1人カラオケしたくなりました(笑)。コンビニにもあるのでちょっと歌うの恥ずかしいですが、ローカライズして日本で利用しやすい場所に作ってしまえばいいかもしれません。

――そう考えると、厳しい日本のカラオケビジネスも……。

董:復活しますよ。

西井:あれだったら、ミュージシャンになりたい高校生や中学生が自分の歌をSNSに上げるだけで、YouTuberのように人気者になれるかもしれない。中国に行くたびに、そういう楽しい体験ができる。本当に面白い旅でした。

董:そう言ってもらえるとうれしいです。また行きましょう! 

※記事内の中国の写真は董氏、西井氏提供。エストニアの写真は西井氏提供。


(慎 芝賢)

最終更新:1/7(月) 12:00
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