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中華娯楽週報 第40回:“BL同人誌”で懲役10年!中国の性表現規制とLGBT事情(後編)

1/7(月) 20:01配信

IGN JAPAN

中華娯楽週報 第40回:“BL同人誌”で懲役10年!中国の性表現規制とLGBT事情(後編) - Part 1

こんにちは!「香港ガリ勉眼鏡っ娘ゲーマー」こと歐陽です。中国・香港・台湾を含む中華圏のゲームや映画、アニメなどの情報を発信し、社会事情を分析するコラム「中華娯楽週報」。読者の皆様のおかげで、昨年1月にスタートした本コラムは年を跨いで、本編第40回を迎えるときが来た。年末には過去の1年間の中華娯楽事情を総ざらいした大晦日の回に加え、中国の年越し番組で、政治や世相を反映する“世界最大”の国民的TV番組「春晩」を紹介する特別号を公開したが、その前の12月25日には中国本土でアダルト向けのボーイズラブ(BL)同人誌の関係者らが懲役10年の厳罰を言い渡された事件(作者のペンネームを冠して「天一同人本事件」と呼ばれる)を取り上げ、中国および香港・台湾を含む中華圏の性表現規制について案内した。2019年の最初の回は、その後編として、中華圏のLGBT事情を紹介しておきたい。
BL同人誌への厳しい取り締まりは、BLという「コンテンツ」そして「ファンタジー」の制作者に対するものであり、BLあるいはLGBTを題材とする作品と、LGBTの当事者たちとはイコールではないということをまず提起しておきたい。一方、規制当局から見れば、どのような性表現を重点取締対象とするかというのは、LGBTに対するオフィシャルな態度を表していることもまた事実である。実際、中国本土ではあらゆる性表現を含むアダルト向けコンテンツがすべて違法とされているが、ヘテロセクシュアルあるいは女性同士の性愛(いわゆる“百合”)を描いた同人作品で「天一同人本事件」ほどの厳罰に繋がったことがなく、前編で述べたように、今回の事件を含めてBL作品は手痛い打撃を何度も受けている。こうした偏りから、ゲイそのものに対する当局の姿勢が見え隠れしているとは言えるだろう。そのため、後編ではLGBTの「コンテンツ」と「当事者」の両方を扱うので、誤解のないように読んでほしい。

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ゲイコンテンツには厳しいが、トランスジェンダーには優しい中国本土
中国には、実に数千年にわたる同性愛の歴史がある。中国古来の土着の宗教――儒教と道教――には同性愛に反対する教えが存在しない。春秋時代、衛の霊公(紀元前540年~紀元前493年)は弥子瑕(び・しか)という美男子を寵愛していたが、二人が果樹園へ遊びに出たところ、弥子瑕はそこの桃が大層美味だったので、食べ尽くさずに半分を霊公に食べさせた。これは中国で有名な「分桃(桃を分ける)」の故事である。
また、漢の哀帝(紀元前25年~紀元前1年)は董賢(とう・けん)という3歳年下の男性を非常に寵愛し、惜しみなく財宝や称号を与えるだけでなく、彼に皇位を禅譲しようとしたり、死後は彼と同じ墓での合葬を希望したりして、普段は彼を片時も側から離さなかった。ある日、一緒に寝ていた二人のうち、哀帝が先に目を覚ましたが、横には自分の衣の大きな袖の上に董賢がぐっすり眠っていた。彼を起こすことは忍びないと感じた哀帝は、その袖を切り落とした。この故事は「断袖(だんしゅう)」と呼ばれ、「分桃」と共にゲイを象徴する言葉――「断袖分桃」――となった。
中国の歴代皇帝や諸侯の多くは、女色だけでなく男色も同時に楽しみ、数多くの男娼を養っていた。「中国は伝統的に異性愛と同性愛を二分法的に峻別していない」と著書で主張する学者もいる(ただし、男尊女卑の伝統から、古代中国ではレズビアンへの言及が極端に少ない)。この現象は近代まで続いたが、清の晩期から中華民国の時代には西洋の思想が入り、同性愛に対する抵抗感が芽生えていった。中国語には元々「彼」「彼女」の区別はないが、欧州の影響を色濃く受けた現代漢語は「He/She」に対応して「他/她」という代名詞を作った。


今の中国は、基本的に清末以降の流れを汲んでいる 。 1997年には男性同士の性行為が犯罪ではなくなったが、政府は無視を貫き、社会がゲイやレズビアンをより受け入れるようにする啓蒙活動をしていない 。 同性愛はセンシティブなトピックとして避けられる傾向にあるが、同性愛者への嫌がらせも当局は積極的にしていない 。 ゲイとレズビアンは自らを「同志」と称し――マルクス・レーニン主義を国是とする中国では、元々「同志」は社会主義運動の仲間を指す言葉だった――相当な規模のコミュニティに発展している 。

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最終更新:1/7(月) 20:01
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