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東欧革命30年 強権政治が台頭、EUと溝深める

1/7(月) 22:14配信

産経新聞

 【ベルリン=宮下日出男】旧ソ連圏の東欧諸国で1989年に共産党独裁体制が相次ぎ倒れた革命から今年で30年。各国は民主化の道を歩んできたが、近年は強権政治の台頭など過去の取り組みを後退させるような動きが目立ち、欧州連合(EU)とも対立する。東西の亀裂をどう克服するか。EUには試練だ。

 「加盟国を率いることがどういうことか、理解していない」。EUのユンケル欧州委員長は昨年末、独メディアでこうぼやいた。矛先は1日から半年間、輪番制のEU議長国を初めて担うルーマニア。その手腕に先立って不安を示した。

 EU最貧国の一つのルーマニアは汚職が深刻だ。EUの特別な監視下で改革してきたが、2016年に社会民主党が政権を再び握ると、辣腕を振るった汚職対策局の長官を解任し、捜査のハードルを高める法改正などを推進。欧州委員会は昨年11月、改革が「後戻りしている」と警告した。

 議長国は加盟国の調整などを担い、英国のEU離脱も課題に残る。「他者に耳を傾ける必要がある」。ユンケル氏は議長国の自覚を促すが、ルーマニア最大の実力者で汚職事件に問われるドラグネア社民党党首は「二流国扱いはもう認めない」と反発。同国がハンガリーやポーランドの強権政治に倣う不安もくすぶる。

     

 一方、法の支配や表現の自由などを揺るがすハンガリーやポーランドは、EUの制裁手続きの圧力を受けても強気を崩さない。

 ハンガリー・ブダペストでは5日、「奴隷法」と批判される労働法改正などへの抗議デモが昨年末に続き再開され、野党など数千人が結集した。だが、圧倒的な議会勢力を持つオルバン首相は動じない。「西欧が野党を利用して自らの考えを強要しようとしている」とデモを批判した上、「20世紀に奪われた自尊心を取り戻す」と主張した。

 ポーランドのモラウィエツキ首相は2日、東欧の独裁主義的な傾向への批判を「完全な間違い」と英紙で否定し、「改革が必要なのはEUだ」と強調。同国の保守系与党、法と正義は5月の欧州議会選挙に向け、EUに懐疑的なイタリアの与党、同盟との連携を模索する動きも見せている。

     

 「ポピュリズム(大衆迎合主義)やナショナリズムは東欧に限ったものではない」。独紙フランクフルター・アルゲマイネはこう指摘する一方、西欧と東欧の間には「師弟関係」のような意識が強く残り、東欧では「その感情が政治利用されている」と分析する。

 EUと対峙する東欧では一方でロシアや中国への傾斜も目立つ。オルバン氏はプーチン露大統領らをたたえ、中露に接近。チェコでは昨年末、情報機関が中露の諜報活動を警告する報告書をまとめると、EUに批判的で親中露派のゼマン大統領が「ヒステリー」と一蹴。EUの東西結束の乱れは、中露につけ込む隙を与えかねない。

      

 ■東欧革命 第二次世界大戦後、ソ連(当時)の勢力下にあった東欧の社会主義国で1989年、相次ぎ共産党独裁体制が崩れた一連の民主化革命。同年12月に東西冷戦の終結、91年にはソ連の崩壊に至った。ポーランドで89年6月に東欧初の限定的な自由選挙が行われ、ハンガリーでは10月、社会主義労働者党が一党支配放棄を宣言。11月に東西ドイツ分断の象徴「ベルリンの壁」が崩壊し、12月になると、チェコスロバキア(当時)で「ビロード革命」が成功。ルーマニアでは独裁者チャウシェスク大統領が処刑された。

最終更新:1/8(火) 0:15
産経新聞

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