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鈴木俊彦・厚生労働事務次官インタビュー 2040年問題への展望

1/7(月) 9:59配信

福祉新聞

 2040年問題への対応が注目を浴びています。団塊の世代が75歳以上になる25年問題から、さらに高齢者が増えピークに達し、日本の社会保障制度は最大の山場を迎えます。厚生労働省は18年10月に大臣を本部長とする40年問題に向けた改革本部を設置しました。現在の議論は、持続的な社会保障制度への分水嶺と言えるでしょう。そこで、40年に向けた社会情勢の変化と、厚労省としての問題意識について、鈴木俊彦・厚生労働事務次官に尋ねました。

       ◇

ーー高齢化がピークを迎える2040年に向けた取り組みが、政府全体で進んでいます。その頃にはどういう社会状況になっているのでしょうか
 
 これまで、団塊の世代が75歳となる25年を見据えた社会保障・税一体改革を進めてきましたが、19年10月に予定されている消費税の引き上げで区切りを迎えます。

 40年代というのは、いわゆる団塊ジュニアが高齢者になり、高齢化のピークを迎える時期。これを見据え、新たな時代の社会保障ビジョンを構築する必要があるのです。

 25年までと、それ以降では、人口の局面が相当変わります。高齢者が急増する問題への対応から、高齢者数の伸びが緩やかになる代わりに現役世代が急減する問題へと、主題が移るのです。

 18年度に121兆円だった社会保障給付費は、40年度には約190兆円となります。対GDP比でみると、18年度の21.5%から40年度には約24%と2ポイント程度しか上がりません。

 これは現在のスウェーデンやフランスよりも低い水準です。つまり「高齢者の急増で負担しきれないという状況ではない」ということを意味しています。

ーー社会の支え手である現役世代が急減する問題の影響が大きくなるのですね
 
 15~64歳の生産年齢人口は18年に6580万人だったのが、40年には5650万人程度に減ります。特に、福祉や医療の担い手は、40年に1060万人必要と見込まれます。現在の823万人ですら人手不足が叫ばれているにもかかわらずです。これにどう対処するかということなんです。

 したがって、今後とるべき方向性は、健康寿命の延伸と、医療・福祉の生産性向上の二つです。

 健康寿命を延ばして働き手を増やすとともに、より少ない人材で、できるだけ多くの質の高い給付・サービスを実現できるよう、生産性を高めるということです。

ーー厚労省は18年10月、根本匠・厚労大臣を本部長とする「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置しました。メンバーには省内の局長がすべて入っています

 先ほど申し上げた二つの方向性が出発点です。部局横断で(1)健康寿命延伸(2)医療・福祉サービス改革(3)高齢者雇用(4)地域共生ーーという四つのプロジェクトチームを発足させました。健康寿命と医療・福祉サービス改革は、今夏に向けて改革プランを策定します。

 医療・福祉改革では、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)、ロボットなどの活用・実用化を速やかに進めます。介護の場合、人材は生身の人間にしかできない対人援助に注力する体制を確立します。

 サービス提供や業務プロセスも、効率的で質の良いサービスを実現するよう組み立て直すべきです。組織マネジメントについても、法人の連携や合併も含め、どうすればパワーアップできるかを考えたいですね。

ーー25年度以降の社会保障制度で負担の議論は出てこないのでしょうか
 
 社会保障において給付と負担の在り方の議論は避けて通れませんが、今後、局面が変わる中では、健康寿命延伸や生産性向上というマンパワーに関わる問題を解決しないことには、サービスや給付が成り立たないのです。今後は、「給付と負担」と「マンパワー」の問題を車の両輪として取り組む必要があります。

 日本の社会保障は、年金・医療・介護などの制度を通じ、多くの国民にできるだけ中間層にとどまってもらう方向で、制度が発達してきました。

 しかし、社会構造が変化する中、格差と貧困が社会に影を落としています。特に、一人親家庭や子どもの貧困の問題は見過ごせません。

 他方、かつて高齢者は豊かだと言われていましたが、今は昔です。高齢者が生活保護を受ける割合も増加傾向で住まいの問題もあり、これらを受け止め、いかにバランスの良い全世代型社会保障を形作るかが課題です。

 そのためには、さまざまなデータを基に日本社会の現状と将来の絵姿を国民と共有し、給付と負担の水準について国民的な議論を行うことが不可欠です。高齢者だけでなく、子どもや子育て世代も含め、どうバランスを取るかも大事です。

ーー日本の社会保障は新たな転換点を迎えていますね

 社会保障制度は国民の共有財産です。これまで国民を支えてきた各種制度やサービスが機能不全にならないよう、時代に合わせて手を打たねばなりません。

 そのためには現実を直視して国民が共有できる理念を形成し、責任ある選択をする。こうした積み重ねにより、新たな時代の社会保障を確立すべき時にきています。

 そうした中で、核になるのが「地域共生社会」です。その実現を目指して、社会福祉法人の皆様には、その「ど真ん中」でご活躍いただきたいと思っています。

◆鈴木俊彦(すずき・としひこ)
1983年厚生省入省。大臣官房会計課長、社会・援護局長、年金局長、保険局長などを経て、2018年7月から現職。趣味は読書、絵画鑑賞など。

最終更新:1/7(月) 9:59
福祉新聞

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