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【金沢21世紀美術館】現代の「死」を発明せよ。「DeathLAB」キュレーターが追究する、近代的な人間観が滅びた後の芸術

1/8(火) 11:57配信

SENSORS

 「死」という言葉を耳にして、何を思い浮かべるだろうか。 忌まわしいもの。非日常的なもの。突然訪れるもの。命の終わり。―そんなイメージが湧き出てくる。

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 しかし、歴史を紐解くと、こうしたイメージは18世紀から20世紀の間につくりあげられてきた先入観に過ぎず、当たり前のものではなかった。むしろ、古来より人間は「死」に親しみを持っていたのだ(※1)。

 金沢21世紀美術館では、そうした現代の「死」のイメージを疑い新たな形を問いかける、「DeathLAB:死を民主化せよ」という展覧会が行われている。コロンビア大学にある最先端の「死の研究所」の総体を紹介するこの企画は、都市における「死」をめぐるさまざまな問題―人口集中とそれに伴う深刻な墓地不足、少子高齢化、無宗教を支持する人の増加、火葬の二酸化炭素排出による環境負荷など―を解決するため、これまでにない葬送の方法を提案している。

 新しい「死」の形は、いかにして表現されるのだろうか。本展覧会の企画を担当した金沢21世紀美術館学芸員・高橋洋介氏に、DeathLABとの出会い、企画の意図から、キュレーターとして探求しているテーマまで話を伺った。

※1 フィリップ・アリエス『死と歴史 西欧中世から現代へ』伊藤晃・成瀬駒男訳、みすず書房、1983

異質なまでのシンプルさが、周囲のスペースに溶け込む展覧会「DeathLAB:死を民主化せよ」

 「DeathLAB:死を民主化せよ」の展示スペースは、金沢21世紀美術館の一角、透明なガラスに囲われた場所にあった。洗練された雰囲気を醸し出しながらも、透明な壁から外の光が多分に差し込んでいるせいか、周囲のスペースと融け合い、一体化しているかのような印象を受けた。

 中へ足を踏み入れると、動画が映し出されたモニター群が柱に掛けられており、さらに奥には不思議な形の建築模型が置いてある。金沢21世紀美術館は、外から覗くと服を着たままプールの中にいるように見える「スイミング・プール」、見る場所や太陽光の差し込み具合によって見える世界の色合いが変わる「カラー・アクティヴィティ・ハウス」など、派手で“インスタ映え“するような作品のイメージが強い。それらと比べ、本企画の展示は、美術館の外観に似て、異質なまでにシンプルだった。

 柱に掛けられたスクリーンには、DeathLABの概要や、今まで手がけてきたプロジェクト、哲学者や民族学者、建築家らによる死についてのインタビュー動画が流れていた。これらを見れば、DeathLABがなにを目指し、どのようなプロジェクトに取り組んでいるのか、全貌が理解できるようになっている。

 奥にある建築模型は、2014年に構想された《星座の広場》というプロジェクトの、3Dプリントによる再現である。棺の中の遺体を、バクテリアが1年かけてゆっくりと分解し、分解の際に生じるエネルギーで棺を光らせるというもの。死者が光となり、いまを生きる人々を照らすという意味では、まさに「人は亡くなった後、星になる」という詩的な想像力を現実のものにしている。

 しかし、これは単なる詩ではない。ニューヨークや東京をはじめとしたさまざまな都市で社会問題化している墓地不足や環境破壊、エネルギー問題の解決策のひとつとなるとともに、都市の中で、いまを生きる人を死者が光となって寄り添うような世界が訪れる―そんな新たな「死」との向き合い方を予感させる展覧会だった。

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最終更新:1/8(火) 11:57
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