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トランプ大統領は日本をイジメる気はない

1/8(火) 12:31配信

ニュースソクラ

トランプ大統領の再選は民主党の候補次第

 ――2020年の大統領選で、ずばりトランプ大統領が再選される確率は? (聞き手はニューヨーク在住ジャーナリスト、肥田美佐子)

 今の時点では予測がつかない。民主党の大統領候補が誰になるかわからないからだ。トランプ大統領の不人気ぶりを考えると、再選は容易ではないだろう。だが、大統領選では、中間選挙よりもっと多くの有権者が1票を投じるものと予想され、トランプ大統領は、通常なら投票所に足を運ばない有権者層の間で優位を保っている。

 今、トランプ大統領の勝率を当てろと言われたら、たぶん6対4の確率で彼の敗北に賭けるだろう。だが、時期尚早だ。カギは、民主党候補が誰になるか、である。急進左派か女性か、カリスマ性のある人物か若手か、はたまた党外の人物か。民主党候補者指名争いに打って出る人は20人を超えるとみられるだけに、候補者が定まらないかぎり、トランプ再選の行方は五里霧中だ。

 (出馬に意欲的な)ジョー・バイデン前副大統領は非常に人気があるが、70歳代半ばであり、党主流派に属する白人だ。前回の大統領選で民主党候補者だったヒラリー・クリントンや、共和党候補者指名争いに出馬したジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事など、トランプ大統領に挑んだ候補者たちと同じネガティブな要素が多い。バイデンを非常に魅力的だと考える人は多いが、民主党は、必ずしも彼に立ってほしいとは考えていないだろう。

 ――来年以降、トランプ政権の外交政策はどう変わる? あなたは、日本経済新聞への寄稿「強硬姿勢続くトランプ外交」(11月23日付)のなかで、ロシア疑惑の調査結果を基に、トランプ大統領に弾劾を求める圧力や批判が高まった場合、トランプ氏は強い指導力を誇示すべく、「外国(そして内政上)の『悪役』を探すかもしれない。その候補になる可能性が高いのはイラン、メキシコ、中国だ」と述べている。

 そのとおりだ。(ねじれ議会により)首都ワシントンDCが、さらなる対立に陥った場合、民主党が、(2016年大統領選でのトランプ陣営とロシア政府との共謀)疑惑を徹底調査することもありうる。そして、モラー特別検察官による捜査報告書が議会に提出されたら、トランプ大統領が喜々として国内外に「敵」を求めようとする環境が浮上しそうだ。

 まず、中国が狙われるのは確かだ。ロシアとは事を構えないだろう。次にイラン。トランプ大統領は(今年5月)、イラン核合意からの離脱を宣言しているが、今後の関係はイランの出方次第だ。これも潜在的な危険となりうる。とはいえ、トランプ大統領から最も攻撃を受けやすいのは中国だ。米中間の緊張が今よりはるかに高まれば、安全保障より通商問題がターゲットになるのは明らかだ。

 ――対中東外交はどうなるのか。今年10月、トルコの総領事館で、サウジアラビア政府に批判的だった同国ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が殺害され、ムハンマド皇太子の関与が疑われている。だが、トランプ大統領は、これを否定するサウジ政府の意向を尊重しているもようだ(注:米政権は2017年、サウジと巨額の武器売却契約を締結)。

 サウジは、民主党政権下でも共和党政権下でも、一貫して米国の強固な同盟国であり続けてきた。その位置づけが変わるとは思わない。特にトランプ大統領は、サウジと温かい個人的関係をはぐくんできた。大統領として、初の外遊先はサウジだった。トランプ大統領が、(ジャーナリスト殺害という)人権問題などお構いなしなのは明らかだ。

 とはいえ、殺害事件の報道が現実の政策と大きくずれていることを認識すべきだ。率直に言って、米国とフランスの対中東外交は瓜(うり)二つである。しかし、メディアは、トランプ大統領がサウジアラビアに対し、あたかもクレージーに一線を踏み外したかのような報道をしている。これは真実ではない。

 (殺害事件をめぐる騒ぎも収まり)米国とサウジは元の関係に戻った。サウジとアラブ首長国連邦、イスラエルに重きを置くことは、近年の米国の中東離れに逆行するが、トランプ大統領は、この姿勢を崩しそうにない。

 だが、少し意外だったのは、トランプ大統領が、イラン核合意からの離脱を除き、オバマ政権と一貫した政策を取り続けていることだ。たとえば、シリアへの軍事介入がそうだ。トランプ大統領は、基本的に軍人がやりたいようにさせている。

 つまり、「米国第一主義」は、むしろ、中国封じ込め政策をはじめ、中国の台頭に対処するための攻撃的な政策にフォーカスしたアジア・ピボット(注:アジア太平洋地域重視のリバランス<再均衡>政策)の遂行に焦点が絞られていると言えよう。米国にとって、中東の重要度は下がっている。

 ひるがえってトランプ大統領は、どのような外交を展開したいのか。それがまったく見えてこないのは、一つには彼が外交政策の素人であり、それぞれの持ち場に任せているという事情がある。

 ――今後、米国と中東関係のカギになるのは?

 イスラエルやトルコ、サウジアラビア、イランなど、大国の動きだ。イスラエルとの関係は決して変わらないが、(イラン核合意からの離脱により、米国がイランへの経済制裁を復活させたことで)経済的圧力を受けているイランが、どう出てくるか。トランプ大統領に食って掛かってくるのか、それとも、「いや、西欧、特に米国には融和的態度で臨みたい」と言ってくるか。

 次にサウジだが、ムハンマド皇太子は、イエメンやシリア、イラン、カタールなどに対する挑発的な外交政策を抑えるのか。また、トルコは、(米国人牧師の拘束問題をめぐって米国から課された経済制裁により)経済的圧力にさらされてきたが、エルドアン大統領は、来年3月末に予定されている地方選挙をどう乗り切るのか。こうした問題がカギになるのは間違いない。

 ――次に日米関係だが、ねじれ議会になることで、対日関係に影響は出そうか。

 いや、関係ない。重要なのは、トランプ大統領と安倍首相が二国間貿易交渉を始めるという事実だ。安倍首相は1年前、同交渉に関心を示さなかったが、(今年9月26日の日米首脳会談で合意した)交渉開始に向けて動いている。交渉は米国側の勝利に終わる可能性があるとはいえ、日本の主要閣僚複数が交渉にかかわることを考えても、日米間の推進力になる。

 日本は、米国が依然として間違いなく最も重要な同盟国であることを理解している。当面、そうした関係が変わることはない。トランプ大統領には日本イジメをする気などない。特に中国(との貿易戦争)問題が未決のなかにあって、彼は日米関係を高めようとしている。

 一方、対メキシコ・カナダ関係には、やや問題が生じるかもしれない。民主党が下院を制すると、(北米自由貿易協定<NAFTA>再交渉で生まれた新協定である)米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の署名が難渋する可能性が出てくる。

 だが、日本は違う。ねじれ議会の影響は、まったくない。トランプ大統領は強硬姿勢をちらつかせることは多々あるが、日米関係は目下、かなり良好だ。

■肥田 美佐子(ジャーナリスト 在NY)
ニューヨーク在住ジャーナリスト。東京都出身。「ニューズウィーク日本版」編集などを経て1997年、単身渡米。米広告代理店などに勤務後、独立。08年、ILO(国際労働機関)メディア賞受賞。米経済、大統領選など幅広く取材。現在、経済誌を中心に寄稿。カーリー・フィオリーナ元ヒューレット・パッカードCEO、ジム・オニール前・英財務省政務次官、シカゴ連銀副総裁、トム・リッジ元国土安全保障長官など、米(欧)識者への取材多数。

最終更新:1/8(火) 12:31
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