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スポーツ選手の視界、動き体感 高専生が観戦システム開発

1/9(水) 9:35配信

毎日新聞

 スポーツ選手と同じ視界と動きを体験できる新しい観戦システム「シンクロアスリート」を、東京工業高等専門学校(東京都八王子市)の学生が開発した。実用化を目指しており、2020年東京五輪・パラリンピックが近づく中、さまざまに活用される可能性がある。【野倉恵】

 シンクロアスリートは選手の視界と動きの情報をデータ化してインターネット送信するシステム。例えば、カヌー・スラロームなら、専用のイスに腰掛けてゴーグルをつけると、次の瞬間、目の前で水しぶきがはじける。イスが上下左右に揺れ始め、体は一瞬で、激流をゆく選手と一体化した世界に運ばれる。

 カヌーに360度撮影できるカメラとサーバー、スマートフォンを取り付けており、映像と、スマホのセンサーが記録した選手の動きが、観客がつけたゴーグル型ディスプレーに反映される。イスも、選手の動きに合わせて動く仕掛けだ。

 選手の視界や動きの再現だけでなく、競技のライブ中継・配信もできる。例えば、装置をマラソンのペースメーカーに装着すれば、自分は観戦しながら、選手が走っている状況をリアルに体感できる。

 開発に向けて学生を指導してきた情報工学科の松林勝志教授(制御工学)によると、きっかけは2015年10月、学生たちが文化祭のために造ったアトラクションだった。車の修理などで使うジャッキを利用して、CG(コンピューターグラフィックス)映像に連動するイスを製作。仮想ジェットコースターを造った。好評だったことから、松林教授は学生たちに、16年の「全国高等専門学校プログラミングコンテスト」(プロコン)への出場を提案した。

 プロコン出場に向けて、学生たちはイスを電動式にして、小型化して持ち運べるようにしたほか、上下にも動くように工夫。回路が燃える、雑音が出るといった課題も相次いだが、修正を重ねてプロコン出品にこぎつけると、最優秀の文部科学大臣賞を受賞。その後も改良を重ね、昨年1月には第7回「ものづくり日本大賞」で内閣総理大臣賞に輝いた。

 設計もプログラミングもすべてチームの手によるシステムは特許申請済み。実用化に向け競技団体の見学や大型イベントへの出展依頼も相次ぐ。

 「スポーツなどの観戦スタイルを根底から変え、選手育成にも活用できる」と松林教授。メンバーの専攻科1年、瀧島和則さん(21)は「苦労も多かったけれど、いろんな分野のメンバーで手がけたからこそ形にできた。(スポーツだけでなく)災害現場など全く違う分野にも生かせる」と話し、すでに災害復旧車両の遠隔操縦で活用する研究にも取り組んでいる。

最終更新:1/9(水) 9:35
毎日新聞

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