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ストーカー殺人事件傍聴記~粘着性の裏に見え隠れした「中年男性」の孤独と寂しさ

1/10(木) 0:20配信

DANRO

「いつか出ることができれば、遺体を捜索する活動をしたい」

ストーカー殺人事件の法廷。最終弁論の後、裁判長から「最後に言いたいことは?」と問われると、52歳の被告人はこう答えた。

【画像】東京のおひとりさまの室内

東京都目黒区に住む元交際相手の女性(当時24歳)を殺害し、バラバラにして遺棄したとして、殺人や死体遺棄などの罪に問われていた無職、佐賀慶太郎被告人の判決公判が昨年12月14日、東京地裁で開かれた。検察の求刑は無期懲役だったが、佐々木一夫裁判長は懲役29年の有罪判決を言い渡した。

この事件は、2016年9月に起きた。殺害された女性の遺体が発見されていない「死体なき殺人」だ。そのような背景もあり、被告人は公開の法廷で冒頭のような言葉を発した。

筆者はこの裁判員裁判について、被告人質問や求刑、最終弁論など重要な場面をこの目で見るため、裁判所に数回、足を運んだ。傍聴を通じて、被告人の粘着性や依存性と同時に、彼が抱えていた「孤独」を垣間見ることができたように思う。(渋井哲也)

今回と過去のストーカー事件の「3つの共通点」

筆者がこの事件に関心を持った第一の理由は、ストーカー事案が増加していることだ。ストーカー規制法の制定以降、ストーカー事案の認知件数は年々増加し、今では年間2万件を突破している。検挙件数も2000件前後で、身近になりつつある。

もう一つ、今回の事件が、過去の重大なストーカー事件といくつかの点で共通していたことも裁判傍聴の動機となった。

共通点としてまずあげられるのは、一人暮らしの女性宅で起きた事件だったことだ。

2015年8月、東京都中野区のマンションで劇団員の女性(当時25歳)の遺体が発見された。翌年3月に殺人容疑で逮捕され、裁判員裁判で有罪判決を受けた戸倉高広受刑者は、実家がある福島県から東京に戻ったとき、女性を見つけて「友達になりたい」とあとをつけた。殺人や強制わいせつ致死の罪に問われた裁判で、東京地裁は無期懲役の判決を言い渡した。控訴審も一審判決を支持した。

今回の目黒区の被害女性も、一人暮らしだった。目黒区の事件では、被告人が女性のマンション前で待ち伏せしていた。

次に、被害者が元交際相手の女性というのも、過去の重大事件と同じだ。今回の事件の被告人と被害者は一時、同棲していたが、破局。しかしその後も、被告人は「お金を返してほしい」と迫り、被害者につきまとおうとした。

加害者と被害者が交際していたという意味では、2013年10月に東京都三鷹市の女子高生(当時18歳)が自宅前で殺害された事件を思い出す。殺害したのは元交際相手の池永チャールストーマス受刑者。出会いはフェイスブックだった。

破局後、復縁を迫ったが、女子高生が別の男性と交際していることをSNSで知り、殺意が芽生えた。女子高生の自宅に忍び込んで殺害に及んだが、犯行前にわいせつな写真と動画をアダルトサイトにアップロードしたことが大きな問題となった。この事件をきっかけに、リベンジポルノ防止法が制定された。

ネットがきっかけの出会いは今では当たり前だ。恋愛や結婚に発展することも珍しくなくなってきた。しかし、一度交際して信頼を置いていた相手が別れたあとに殺意を持つとなれば、安易に人付き合いもできなくなってしまうに違いない。

さらに、被害者が警察に相談していたというのも、今回の事件と過去のいくつかの重大事件と共通する点である。目黒区の女性は警察署にストーカー被害の相談をしていた。同じく警察に相談していたという点では、2016年5月に東京都小金井市内のイベントスペースの前で、シンガーソングライターの女性が切りつけられた事件と同じだ。

小金井市の事件の被害女性の意見陳述によると、2014年6月ごろから、岩崎友宏受刑者はライブ会場にやってきて、「結婚してください」などと言ってきたり、ツイッターで嫌がらせをしたりしていた。殺人未遂に問われ、一審は懲役14年6カ月の有罪判決。控訴したが、その後取り下げて、判決が確定した。

警察に相談して警戒していても、被害にあうとなれば、いったいどんな対策をすればいいのか、と考え込んでしまう。こんな不意打ちの犯罪は恐怖でしかなく、不安を覚える。

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最終更新:1/10(木) 9:42
DANRO

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