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震災後の「親子でボタンつけ」授業に怒り  自分たちの体験を次に生かす大切さ〔陸前高田市長〕

1/11(金) 17:12配信

時事通信

 ◇復興の妨げになる法律の見直しを

 そのためには、専門家の人たちがこうしたプログラム作りにもっと入りやすいようにしないとまずいと思います。災害後に学校を始める時、どういう形で、どういう授業を、どのように始めるのかという内容のフォーマット作りをしないとだめですね。

 政治家が「心のケアは大事」と言っても、具体的に政治家がどうすればいいかが分かるわけじゃない。しかし、私どもは経験してしまったんです。その上で、「ああ、こうすればよかった」「これが必要だ」ということがたくさんあるんです。

 そういう調査をきちんとしてほしい。それがなされていないです。「次に生かす」ということが大事だと思います。

 実は復興を進めていく中で、復興の妨げの原因になっている法律もたくさんあります。それを改善してほしいと言っても変わらなくて、もし次の震災が起こると、また同じことではないかと心配になるんです。

 【注釈】

 私たちの心の中には「楽観バイアス」が存在します。いくら危険と言われても、「まだ大丈夫だろう」「何とか自分だけは災害に遭わないだろう」「自分が住むところは大丈夫だろう」と思い、リスクを軽く見るというものです。この楽観バイアスがあるがゆえに、私たちは心を平静に保つことができるわけですが、一方でこのバイアスのために、避難が遅れたり、リスクを軽視したりしてしまうのです。

 ◇寂しさを乗り切った息子

 ――国がそうした提案を聞いても、震災に備えないとしたら、非常に心配です。ところで、市長の息子さんたちはもう大学ですか。

 上の子は大学に入り、下の子は専門学校に行きます。男の子ですが、保育士になると。子どもの時、寂しかったのではないかと思います。震災後、私の叔父の家に息子たちを預けましたが、私のいとこの子の面倒を見ることで、寂しさを乗り切ったのだと思います。世話をすることで、救われたように思います。

 ――子どもの世話をすることで、自分を支えたんですね。誰かの世話をしたり、面倒を見たりという役割を持つことは大事ですね。つらい中で、誰かの面倒を見ることで、自分の力が出たのでしょうね。

 そういう経験で、保育士を目指すことになったんだと思います。

 ――南海トラフ地震や直下型地震の危険が叫ばれている一方で、備えはどうかというと、いまひとつ十分ではないという気がします。

 われわれの経験をどう生かしていくかということが大事で、災害が起こったとき、われわれはどういう気持ちになり、減災のためにどう行動すればいいのか、という私たちの得た教訓や反省を学べるようなプログラムを大学と力を合わせて作ろうとしています。ただ、心のケアの部分は、どうしても専門家が必要です。

 ――災害後の学校のプログラムの中に、先生方が一定のものを提供できるようなマニュアルや研修が必要ですね。お手伝いしたいです。

 戸羽 太(とば・ふとし)

 陸前高田市議会議員(3期12年)を経て、2007年3月、同市助役に就任し、翌4月から10年12月まで副市長。11年2月から現職。
 1965年生まれ。東京都町田市出身。

 海原 純子(うみはら・じゅんこ)

 東京慈恵会医科大学卒業。医学博士、心療内科医、産業医。日本医科大学・特任教授。ハーバード大学・客員研究員(2008~10年)。近著に「男はなぜこんなに苦しいのか」(朝日新書)、「今日一日がちいさな一生」(あさ出版)、「こんなふうに生きればいいにゃん」(海竜社)。20年間休止していた歌手活動を1999年より再開。

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最終更新:1/11(金) 17:41
時事通信

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