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アップルが「不穏な動き」見せたCES 2019

1/12(土) 9:00配信

アスキー

2019年の携帯業界。2~3月にはサムスンやアップルが新製品を発表する可能性がある。4月以降はドコモを皮切りに携帯料金値下げの動きがありそうだ。10月には楽天が第4のキャリアとして登場するが、初めは苦戦しそうだ。

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アップルがグーグルへの対抗心をむき出しにした 編集部撮影
 
 毎年年始に開催される世界最大のテクノロジー関連展示会「CES」。今年はLGエレクトロニクスの丸めて収納されるテレビや、曲がるスマホなど、実用性はさておき、なんとなく未来感のある、ワクワクとさせられる製品が目立っていたように思う。
 
 そんな中、記者会見やブース出展などはしていないものの、ひそかに存在感をただよわせていたのが、何を隠そうアップルだ。
 
 アップルは10年以上CESに関しては出展などはしておらず、盛り上がりから一定の距離を取っていた。新製品発表は自社でイベントを開催するし、あえて他社と交わろうという気はさらさらないようだ。
 
 しかしグーグルが昨年から大規模なブースを出展し、ラスベガス市内を走るモノレールの外観を「Hey Google」でラッピングする広告を展開。様々な家電メーカーを巻き込んで、Googleアシスタントの普及活動に注力するようになった。
 
 CESは世界中から20万もの人が来場する。今年は日本から電機メーカーのトップだけでなく、世耕経産相も来場するなど、世界的にもさらに注目度の高いイベントに成長した。
 
 アップルとしてもCESの存在を無視できなくなったのだろう、今年からさりげなくからむようになったのだ。
 
●AirPlay 2スマートテレビ対応
 まず1つ目が、テレビメーカーとのコラボだ。
 
 世界最大のテレビメーカーであるサムスン電子のテレビで、iTunesアプリが搭載されるようになるという発表があった。また、LGエレクトロニクスやソニーのテレビでもAirPlay 2に対応。iPhoneやiPadで再生した映像や音楽をテレビに無線で出力できるようになったわけだ。
 
 アップルとしても、iPhoneの販売不振が伝えられる中、ハードウェアだけではなく、コンテンツでの収益をあげたいと考えるのは当然のことだろう。とはいえ、アップルの製品だけに向けてコンテンツを提供していても、成長に限界が来てしまう。
 
 アップルは、自社製品だけにサービスを提供しているように見えるが、古くはパソコンであればWindows、スマホであればAndroid向けにiTunesを提供しているし、昨年11月末には、Apple Musicがアマゾンの音声アシスタント「Alexa」にも対応している。
 
 他社製品にコンテンツサービスを対応させるというのは、アップルにとって決して珍しいことではないのだ。
 
 では、実際に、アップルと電機メーカーでどのようなやりとりがあって、このような話が実現したのか。
 
 ソニーの子会社である、ソニービデオ&サウンドプロダクツとソニービジュアルプロダクツの高木一郎社長によれば「ソニーとして、オープンな機能、便利な機能はどんどん載せていこうというシンプルな話。アップルから売り込みがあったかどうかは、業界全体での秘密ということにしておきたい」という。
 
 ちなみに、LGエレクトロニクスの記者会見では、客席の前方に、アップル関係者用の席が用意されていた。アップルとしても、テレビメーカーがどのようにAirPlay2対応を語るのか、見届けたかったようだ。
 
 このタイミングで、各社が一斉に発表したということは、アップルとしてはあえてCESを狙い撃ちにしていたといえる。
 
●グーグルへの対抗心がむきだしの広告
 もう1つ、アップルのCESにおける不穏な動きが広告戦略だ。
 
 CESのメイン会場であるコンベンションセンターの近くにあるホテルの壁一面を使い「What happens on your iPhone,stays on your iPhone(あなたのiPhoneで起きることは、あなたのiPhoneにとどまります)」という看板を出したのだ。
 
 英語で「旅の恥はかきすて」という慣用句は「ラスベガスで起きたことは、ラスベガス限り」という。このことわざをもじったコピーで、アップルはユーザーのプライバシーにきっちりと配慮していると言いたいわけだ。
 
 実はこの広告、グーグルのブース越しに見えるようになっている。たまたまなのか、狙ったのか、グーグルへの対抗心がむき出しな位置になっているのが面白い。
 
 グーグルは、CESでGoogleアシスタントを積極的にアピールしているが、同サービスは、ユーザーが発した音声やテキストをクラウドにあげて処理して、返事を返すというものだ。ユーザーのデータをクラウドにあげ、ビッグデータとしてAIが処理して利便性を提供するのがグーグルのやり方だ。
 
 一方、アップルは、画像に関しても、iPhone内のチップが処理し、画質をあげたり、被写体に何が写っているかを判断し、タグをつけたりする。アップルとしては、徹底的にユーザーのデータを守ろうという企業姿勢を貫いている。
 
●「5G」話題の裏で静かな訴え
 CESでは、IoTや5Gなども話題となり、家電をネットにつなげるという世界が当たり前になりつつある。今後、ユーザーのプライバシーデータがクラウドにアップされ、さらにおざなりに処理されていく危険性もある。
 
 そんな中、アップルは、声高に叫ぶことはしないが、壁広告という静かな方法で、プライバーの大切さをCES参加者に訴えているようだった。
 
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
 
 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。
 
文● 石川温

最終更新:1/18(金) 9:24
アスキー

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