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「笑い」ヘイト助長 人傷つける意識薄める 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈9〉~まとめサイト❷

1/12(土) 5:04配信

琉球新報

 被害者の傷をえぐるような攻撃的な内容の数々。悪意と中傷に満ちた記事は「現実でも暴力や嫌がらせを受けるのではないか」という不安や恐怖を被害者に植え付ける。ネット上の匿名掲示板に投稿される複数の文章を運営者が恣意(しい)的に集める「まとめサイト」。緑ヶ丘保育園に米軍ヘリの部品が落下した事故後、「まとめサイト」からは園の中傷記事が次々と拡散された。


 ファクトチェック取材班が緑ヶ丘保育園を訪ね、「まとめサイト」を園児らの保護者に見てもらうと、保護者は身をすくめた。「すごく怖かった。震えるくらい。子どもや保護者が何か被害に遭うのではないかと思った」。城間望さん(38)は声を震わせた。部品落下は園関係者がつくった虚構という前提で「自作自演だ」と断定し、園を中傷する短文が20本以上も並ぶ。似たような内容でも圧倒的分量で繰り返されることで、受ける恐怖は何倍にもふくれ上がる。

 匿名掲示板の特徴は素性を隠した状態で気軽に投稿できるところにもある。「あれあれ~w もしかして自演なの?w」。投稿された短文は、末尾に笑うことを意味する「w」や「(笑)」という記号を付け被害者を「ネタ」にあざ笑う。「まとめサイト」では中傷したり、侮辱したりする投稿が集められる。

 差別の問題に詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「『笑い』は差別のキーワードだ」と指摘する。笑いながらピースサインをして「朝鮮人を殺せ」などと街宣で叫ぶ人たちも見てきた。「笑い合う空間をつくることが過激なことを許容させている」と話すのは、大阪大学大学院准教授(コミュニケーション論)の辻大介さんだ。被害者を「ネタ」に笑うことで、人を傷つけている自覚は薄まる。

 さらに悪質なのは被害者がまじめに反論しても「どうして本気になっちゃっているの」などとかわされることだ。辻さんは「差別や中傷に対抗することが難しい空間が生まれてしまう」と話す。少数者を差別する街宣での行動についても「ネットの匿名掲示板的な空間が現実に出てきた感じがする」と警鐘を鳴らした。

 「まとめサイト」は街角でよく聞く悪口や居酒屋談義を集めた内容に過ぎないと無視していいのだろうか。

 ネットメディア「バズフィード」創刊編集長の古田大輔さんが説明する。都内の大学の授業で気になるニュースを持ち寄り、議論をするという課題が出た。その時、ニュースとして「まとめサイト」の記事を印刷してきた学生がいたという。古田さんは「その学生にとってはまとめサイトも朝日新聞もNHKも一緒で、ニュース記事だと思っている」と指摘する。影響力は否定できない。

 「まとめサイト」が攻撃し、嘲笑の対象にするのは沖縄だけではない。在日朝鮮人などのマイノリティーにも矛先は向かう。

 昨年12月11日付で最高裁が下したある判断が話題になった。「まとめサイト」から人種差別、女性差別などを受け、精神的苦痛を被ったなどとして大阪府在住の在日朝鮮人の女性が起こした裁判だ。大阪地裁と大阪高裁がサイト運営者に損害賠償200万円の支払いを命じる判決を下した。さらにサイト運営者の上告を最高裁が退けた。「まとめサイト」の法的責任が初めて認められた判決だった。
 (ファクトチェック取材班・安富智希)

琉球新報社

最終更新:1/15(火) 10:48
琉球新報

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