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既存事業を強化するデジタル変革 現場を巻き込み全社的に戦略構築を

1/12(土) 10:30配信

SankeiBiz

 企業トップの年頭あいさつでは「デジタルを活用した企業変革」が数多く取り上げられた。多くの企業がデジタル戦略を専門に扱う組織を立ち上げ、新しい技術の活用方法についての検討を進めてきた。今年はいよいよ成果を出すぞ、という強い意気込みが感じられる。(ビジネス・コンサルタント 小塚裕史)

 昨年までを振り返ると、新しい技術を実際に使って試す実証実験が頻繁に行われるようになった。説明を聞いただけだとピンとこないので、具体的な事業や業務の中に応用して可能性を評価するものだ。技術に対する理解が進む。スタートアップ企業への投資や提携も進んだ。社内のイノベーション活動だけでは不十分だと考える大手企業が外部のノウハウを取り込んで自社への転用を目指す。一方で気になるのは、デジタル活用の取り組みの話と、新規事業立ち上げとがごっちゃになっているように感じられることだ。デジタルというと、ついつい新しいことをやらなければならない強迫観念にとらわれがちだ。

 いくら新しい技術を使っても、ゼロから新しいサービスを生み出すのは簡単ではない。技術は何かを実現するためのツールに過ぎず、根本的には新しいビジネスモデルをつくり上げることが必要になる。たとえ良いモデルを思いついたとしても、既存事業と同等規模のものに仕上げていくのはさらに難しい。

 新しい事業やサービスを狙うのも良いのだが、デジタル技術を応用して既存事業を強化する可能性を徹底して検討すべきだ。今のサービスを強化することが、既存顧客を大切にすることにつながる。

 金融や自動車などの産業では、収益を損なう脅威にさらされている。だが考えてみると、新規参入者は、金融や移動などの顧客が必要としていることに対して、デジタル技術を生かした従来とは違うやり方でサービスを提供しようとしているにすぎない。

 既にサービスを提供しているのであれば、いくらでも顧客から利用方法を確認することができる。顧客が必要としていることの本質は何か。サービス提供者の目線ではなく、利用者の立場で考える。ここでいう顧客とは必ずしも最終消費者とはかぎらない。販売代理店や業務オペレーター、場合によっては危険作業を請け負う従業員などの可能性もある。

 この検討を行うためには、顧客の行動を理解している現場担当者を巻き込みたい。会社の考えている方向や、新しい技術でできることを理解してもらう。そして、どのようにすれば、新しい技術を活用して顧客をより快適にすることができるかを考えてもらう。顧客がどのような行動をとっているのか、なぜこのサービスを利用しているのか、といった根本的なことを何となくは分かっていても整然とは話せないことがある。そのために議論を誘導するガイド役も置く。

 すぐには答えが出ないかもしれないが、継続的に場を持つことが重要だ。現場に戻り、これまでよりも顧客の行動に対するアンテナを高く張ることが期待できる。他部門の人と意見を交わすことで新たに思いつくこともあるだろう。デジタル組織やIT部門にも参加してもらうとさらに発想が広がる。

 企業によってデジタル変革の進め方は異なるだろう。だが、経営幹部やデジタル組織だけが理解していても進まない。全社、特に現場のキーパーソンを巻き込み、既存事業を強化する戦略を考えて実行する場作りを行う。そしてこれを継続することが重要だ。

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【プロフィル】小塚裕史

 こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、ブーズ・アンド・カンパニー、マッキンゼー、ベイカレント・コンサルティングを経て、ストラドル シニア・パートナー。主な著書に『デジタル・トランスフォーメーションの実際』。兵庫県出身。

最終更新:1/12(土) 10:30
SankeiBiz

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