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「飲食店の省人化」人手不足…スマホやロボットで対策

1/12(土) 23:34配信

産経新聞

 対面の必要がないスマートフォンによる注文・決済や、ロボットが勤務するカフェ…深刻な人手不足を背景に、飲食店で「マンパワー」を補う試みが目立ってきている。ファストフード方式の居酒屋もオープンするなど、人口減少社会の苦肉の策が、新たな「いらっしゃいませ」を生み出している。(重松明子)

 メニューのQRコードをスマホで読み取り、カフェラテを注文すると、隅で待機(充電)していたロボットがピカッと発光。スイーッと動き出した。コーヒーカップを受け取り、人やテーブルなどを器用に避けながらこちらに向かってくる。多少まごつく姿もけなげな“新人店員”を、思わず応援したい気分になった。

 東京・虎ノ門の城山トラストタワー1階にある「カフェ&デリGGCo.(ジージーコー)」。オフィスビル内で日本初となる米国サビオーク社が開発したロボットによる搬送サービスの実証実験が7日、始まった。ビル内のどこでも注文・配達が可能。“1人”でエレベーターに乗り込むロボットに、「どこ行くの?」「かわいい」と声をかける女性社員の姿も。

 城山トラストタワーは4~5千人が働く37階建ての高層ビル。実証実験の責任者で、デベロッパー「森トラスト」イノベーション戦略室の木原圭一さん(40)は、「ロボットが届けてくれるので、高層階の方にとっては一服するためにわざわざ下まで降りるストレスがなくなる。カフェ側も、省人化しつつ注文を増やす方法の一つとしてロボットが役立つのでは」と期待する。

 ロボットの人件費(レンタル料)は?と尋ねると、「秘密です。社員1人分くらいかな。現状ではマネタイズ(収益事業化)できていません」とのこと。6月末までの実験期間中に改良点と活用策を探るといい、「ロボットの良さは24時間働けること。コーヒーを運ぶだけでなく、いずれは警備や清掃なども担って、ビル全体で活躍してほしい」と話した。

 今月末までロボットの愛称を募集中。名付け親にはカフェ利用券が贈られるそうだ。

 この実験にも使われているスマホによる注文・決済サービス「O:der(オーダー)」を手がける「ショーケース・ギグ」(東京都港区)によると、人手不足対策や客の待ち時間削減を目的に、同社のサービスを導入する店は現在1200店舗。今年中に3千店舗に達する見込みという。

 酔客らでにぎわう夜の歌舞伎町(東京都新宿区)。雑居ビルの地下に伸びる階段の先に、意外にも清潔感ある明るいカウンターが現れた。備え付けのタブレット端末で注文をして会計。呼び出しベルを渡されて席につく。料理ができるとベルが光ってブルブルッ。カウンターまで取りに行き、飲食後は食器を戻す…。さしずめファストフード店の居酒屋版だ。

 昨年11月に出店した「やきとり魁(さきがけ)」。座席は約50席で、出店したユナイテッド&コレクティブの坂井英也社長(44)は「同規模の店で通常なら従業員5人は必要ですが、ここはテーブル接客を省いているのでレジ・調理・雑用の3人で済む。人件費削減により、大きいもも串が99円(税抜き)など低価格を実現。せんべろ(千円でべろべろに酔える)もねらえます」と胸を張った。

 同社は居酒屋チェーン「てけてけ」を80店舗展開しており、食材調達ではスケールメリットも生かしている。「時給1200円でもアルバイトが集まらない時代。人手不足による人件費高騰、食材・酒類の高騰、不動産価格(家賃)の高騰…。コスト高とお客さんの低価格志向とのはざまで苦しむ飲食店の悩みを、このシステムで解決に導きたい」と坂井社長。

 店内は禁煙(喫煙室あり)。広報担当者によると「気軽な雰囲気と価格で、既存店ではリーチできなかった20代女性を取り込めている」。1日当たりの利用(会計数)は200~250件。2月には新宿駅西口に2店舗目がオープンし、年内20店舗を出店する計画という。

 気持ちの良い客あしらいは酒場の楽しみのひとつだが、それも人がいてこそ。バーのママがロボットになり、AI(人工知能)に愚痴を聞いてもらう時代が来るのだろうか…。

最終更新:1/12(土) 23:34
産経新聞

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