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「欲しいのは物ではなく、人」 大企業を辞めた私が飛び込んだのは児童養護施設だった

1/12(土) 11:08配信

BuzzFeed Japan

「欲しいのは物じゃなくて、人なの…」

当時、児童養護施設で働いていた知人が口にしたこの一言を聞いた。大山遥さんは、気が付けば1週間後には当時働いていた教育関連企業・ベネッセへ辞表を提出していた。

働いていたのは「進研ゼミ」の教材を制作し、出版する部署。リニューアルのたびに廃棄されていく教材を児童養護施設へと寄付できないかと考えたのが、児童養護施設の扉を叩いたきっかけだった。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】

このとき、大山さんは児童養護施設やネグレクトという言葉すら知らなかったと振り返る。従姉妹に話を聞いて初めて、施設に入ってくる子どもの多くが虐待を経験していることを知った。

「当時、知人が勤めていた施設は本当に職員不足で、本来施設で働く上で必要とされる資格を持った人を採用することができていない状況でした。大学を出て就職した直後でも、幼児から高校生まで年齢も幅広い8人の子を一人でみなくてはならない。『そこに進研ゼミの教材を送られてきても、なんの意味もないんだよね』と言われて、なんとかしたいと思ったんです」

ベネッセを退職し、非常勤職員として児童養護施設で働きながら、夜は保育士の資格を取るために専門学校へと通う日々がこうして始まった。

施設への就職に興味を持つ学生はいる。でも、その多くが途中で脱落してゆく現実。

通っていた専門学校のクラスメイトは36人。入学当時、児童養護施設などについて聞いたことがあると答えた学生はたったの4人だった。

数ヶ月授業を受けていくなかで、大山さんは興味深い事実に気付く。夏休みを前にしたタイミングでは、11人のクラスメイトが保育園や幼稚園だけでなく社会的養護にも関心を持っていた。クラスの3分の1近くが社会的養護の現場で働くことに興味を持っている。

では、なぜ職員不足の問題が起こるのか?大山さんは3つのボトルネックがあると考えている。

1つ目はネットで検索をしても児童養護施設に関する情報が出てこないこと。求人情報はおろか、そもそも施設の概要について知ることも容易ではない。

2つ目は連絡先を見つけて電話で問い合わせをしても、簡単には受け入れてもらえないこと。児童養護施設では子どもたちの安全などを考慮してむやみに人を受け入れることはできない。こうした事情を知らずに『子どもたちの様子を見たい』と気軽に電話をすると、誤解を招いてしまい断られてしまうことがあるという。

3つ目はNPOなどが実施している学習ボランティアで提供されている勉強を教えるという機会と、専門学生が持つ 「施設の概要が知りたい」というニーズの間にギャップが存在していること。多くの場合、こうした学習ボランティアでは施設の日常をかいま見ることは難しい。また学習ボランティアの参加者の多くは国公立大学や有名私大に通う大学生たち。そこで求められている学力レベルは多くの専門学生にとって高い壁となる。

社会的養護に関心を持った11人のその後を大山さんは注意深く観察した。するとネットで検索しても有力な情報がヒットしないために、6人は児童養護施設への就職を諦めてしまった。

その後もそれぞれのボトルネックでつまづき、最終的に児童養護施設へと就職を決めたのは大山さんただ一人だった。

「ネットで検索しただけでは、どの施設がいつ説明会をやっているかがわからない。施設の採用情報が出ていたとしても、書かれているのは施設名と住所、そして初任給だけといったケースも少なくありません。施設の採用情報を知りたいと思う学生がいても、そこに必要な情報が届けられていないのが現状です」

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最終更新:1/12(土) 11:08
BuzzFeed Japan

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