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北海道 縮む公共交通 地方の人口減、直撃

1/14(月) 10:28配信

毎日新聞

 JR北海道は2016年11月、経営の厳しさから自社単独では路線を維持できない「維持困難線区」10路線13線区(区間)を発表。関係自治体に協力を迫った。維持困難とする総延長は、現存線区の半分にも上る。人口減少が進む中、各自治体とも生活基盤である公共交通の大幅な見直しを迫られる時代を迎えた。【山下智恵】

 JR室蘭線の栗山駅(栗山町)。約80センチの雪が積もる駅のホームに2両編成の列車が滑り込む。午前7時15分ごろ、通学の高校生を中心に約20人が乗り込んだ。

 栗山駅には上下1日各7本が停車する。一方で、ほぼ線路と並行するバス路線の岩見沢行きは1時間に1本。駅舎と合同の待合室でバスを待つ会社員女性(57)は「岩見沢の病院に入院中の母の所に通っている。バスなら1時間に1本あって便利。最近JRは使っていない」と話す。ただ、長男の学生時代は定期代の安さからJRを利用。「若い人が鉄道を使えなくなると早くから外に出て行ってしまうかも」とつぶやく。

 栗山駅のあるJR室蘭線の岩見沢―沼ノ端間(67キロ)は維持困難線区の一つ。通学時間はにぎわうが、1987年に1629人だった輸送密度は17年度には439人に減少した。豪雪地帯で除雪費などもかさみ、区間の収益は17年度は12億3300万円の赤字だった。

 「駅中心の街づくりをしてきた。鉄路があることは、町民の足だけでなく観光客の足、災害時の輸送路など安心にも関わる」。栗山町の担当者は鉄路の重要性を強調する。同線区は国と自治体の負担を前提に維持を目指すことが決まったが、その負担割合などを巡り協議が難航することも予想される。

 国鉄民営化に伴うJR北海道の発足は87年。その歩みは平成の30年間とほぼ重なる。九州の2倍以上ある広大なエリア、積雪期の整備維持費の重い負担などで採算が取れにくかったうえ、経営安定化基金運用益の目減りなどで経営危機が顕在化。近年は事故やトラブルも相次いだ。

 輸送人員は発足翌年の1億300万人から札幌圏の増強により1億3627万人(17年度)に増加したが、鉄道の収益はピークの800億円(96年度)から730億円にまで減り、線路は20線区3192キロから14線区2552キロに縮小した。

 一方、空路の利用はこの30年間で大きく伸びた。89年に1197万人だった新千歳空港の利用者は17年度で2271万人と倍増。格安航空会社(LCC)の就航や、近年の外国人観光客の急増による国際線ターミナルの拡張工事も進む。

 ◇地域維持へ対策急務

 98年12月に新千歳―羽田間で就航、「北海道の翼」を掲げる北海道国際航空(現エア・ドゥ)も昨年末、20周年を迎えた。一時は経営危機もあったが、全日空グループの支援を得て、現在は10路線を運航する。

 空路でも地方路線は苦戦した。道内の拠点都市を結び、航空便の空白地帯を解消するため98年3月に新千歳―函館間などで就航した北海道エアシステム(HAC)。経営不振により、09年に日本航空(JAL)が経営から撤退するなど存続が危ぶまれ、不採算路線の整理を余儀なくされた。その後は債務超過が解消され、14年にJALグループに復帰。丘珠―函館便の好調などもあり、17年には拠点とする丘珠空港(札幌市東区)の利用者が20万人を超え、再建が進む。

 平成最後の年となる19年以降、公共交通機関は陸空、それぞれで転換期を迎える。JR北海道を巡っては、19年度は国が200億円の支援を行うと同時に経営に対する「集中改革期間」に入る。目に見える成果が示されなければ、21年度以降の国の支援継続は困難になる。

 空路では、新千歳空港など道内7空港が一括民営化され、20年から事業者による委託運営が始まる。民間の創意工夫が地域活性化につながると期待されるが、赤字空港や路線を維持できるのかは不透明だ。

 地方の人口減少と札幌などへの一極集中が顕著になった平成時代。公共交通を維持し、生かすための新たな仕組み作りは次の時代に持ち越される。

 JR北海道の路線存続運動に携わってきた小田清・北海学園大学名誉教授は「赤字路線だから廃止では、地方の可能性を摘み、現在進行している札幌圏一極集中と過疎拡大も加速させることになる。公共交通の議論には地域が成り立つための道内全体の青写真が必要だ」と述べた。

最終更新:1/14(月) 10:28
毎日新聞

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