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金正恩氏が4度目訪中 環球時報(中国)「朝鮮半島の安定・平和占う鍵」 中央日報(韓国)「北朝鮮カード」みせ中国にも利点

1/14(月) 14:51配信

産経新聞

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が8、9両日、中国の習近平国家主席と北京で会談した。昨年の3度の訪中に続き4度目。今年2~3月に米朝再会談が開催されるとの観測もある中、米国に緊密な中朝関係を見せつけた形だ。中国メディアは、会談の内容よりも北朝鮮経済の行方を注視。米紙は中朝の利害が一致していることが背景にあると分析。韓国紙は米国と貿易戦争をしている中国にも利点があると指摘した。

■環球時報(中国) 朝鮮半島の安定・平和占う鍵

 北朝鮮の金正恩氏が新年早々、4度目の訪中を行ったことについて、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は11日付の社説で、「2019年は朝鮮半島が安定・平和の道を進むことができるかどうかを占う鍵となる年だ」とし、今回の金氏訪中はそれに向けてよい環境をつくり出したと評価した。

 中国英字紙、チャイナ・デーリーも10日付社説で、(1)金氏が誕生日を中国で過ごした(2)金氏が今年初の外遊先に中国を選んだ-などの点を挙げて、北朝鮮と中国の特別な関係を強調した。

 ただ、今回の訪中をめぐっては両国の報道ぶりに差異がみられた。北朝鮮の朝鮮中央通信は中朝首脳会談の内容をより踏み込んで報道。金氏が米朝関係の改善と非核化協議の過程で生じた「難関と憂慮、解決の展望」について説明したのに対し、中国の習近平氏が「中国はこれからも(北朝鮮の)頼もしい後ろ盾である」と述べた-と伝えている。北朝鮮側としては、背後に控える中国の存在を内外にアピールする狙いがあるのだろう。

 これに対し、中国メディアでは北朝鮮の経済建設をめぐる報道にも重点が置かれた。環球時報は11日付社説で、「19年は北朝鮮が社会主義経済建設の新たな道を切り開く元年でもある」と指摘。「新戦略路線を進む朝鮮労働党は今年、経済建設に全力を集中するだろう」との見方を示した。同紙は10日付の記事で、金氏が北京の経済技術開発区の視察を終えて同区を離れた後も、訪中団のメンバーが残り視察を続けたことを評価している。

 中国が北朝鮮経済の行方を注視するのはなぜか。同紙の11日付社説は「北朝鮮の最も重要な貿易パートナー」である中国の経済発展は北朝鮮に利益をもたらす一方、「北朝鮮の発展も中国経済、特に東北地方の経済力アップに有利である」とし、低成長にあえぐ東北地方の経済活性化の起爆剤として北朝鮮の発展に期待を寄せた。(北京 藤本欣也)

■ニューヨーク・タイムズ(米国) 貿易戦争決着求める中国のサイン

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは9日、米国との非核化交渉が行き詰まる中で実現した金正恩氏の訪中は「中朝の親密ぶりを印象付けた」とし、対トランプ米政権で一致する両国の蜜月関係を警戒した。

 同紙は、ロンドン大東洋アフリカ研究所のスティーブ・ツァング所長のコメントを紹介し、中朝は「利害が一致する」と指摘。中国は米国との貿易交渉で北朝鮮を交渉材料として利用でき、北朝鮮はトランプ大統領との2度目の首脳会談に向け中国の支援が必要だとした。また、北朝鮮問題で、中国が役立つ存在であることを米国に改めて認識させることが「中国の利益となる」と指摘。一方、北朝鮮側には中国に制裁の緩和を要請する狙いがあったとし、中国にエネルギー支援の拡大を求めていく可能性があるとの識者の見解を紹介した。

 米紙ニューヨーク・タイムズは9日、金氏の電撃訪問が、北京で開かれていた米中の次官級貿易協議の最中に行われたことを重視。「米中が貿易協議での合意に失敗した場合には、中国が、北朝鮮の非核化を含むトランプ政権の目的の追求を困難にさせる可能性があることを明確に印象付けた」と指摘した。また、金氏の訪問は、中国側が米国との貿易戦争の早期決着を求めていることの「明らかなサインだ」と言及。米国との対立激化で新車販売が低迷するなど中国経済は不透明感が増していると指摘し、中国側は、貿易交渉がさらに長期化して2月上旬に始まる中国の春節(旧正月)に向けた商戦に影響を与えることを懸念しているとの見方を伝えた。

 米国との非核化交渉で金氏は、米国が制裁を続ければ「別の道」を模索すると牽制(けんせい)。こうした北朝鮮のかたくなな姿勢は、貿易戦争の終結を目指す中国にとって「とても必要な交渉材料となる」と位置づけ、北朝鮮を巻き込み、米国にゆさぶりをかける中国に警戒感を示した。(ニューヨーク 上塚真由)

■中央日報(韓国) 「北朝鮮カード」みせ中国にも利点

 韓国紙、中央日報(電子版)は社説(9日)で金正恩氏の電撃訪中の背景について、過去の訪中が南北または米朝の首脳会談の前に実施されていることから、今回も米朝再会談に先立ち「中朝間の意見調整のための訪問」とした上で、「北朝鮮としては自分の背後に中国がいるということを誇示することにより交渉力を高めようとしているのが明らかだ」と主張した。また、「トランプ政権と貿易戦争をしている中国も、いざというときには北朝鮮カードを使えるところをみせることができる」とし、中朝ともに利点が十分にあると指摘した。

 韓国紙、東亜日報(同)も「金正恩、習近平にしがみついても非核化以外に迂回路(うかいろ)はない」と題する社説(9日)で、「金正恩の訪中は長年の血盟という中国からまず関係を固め、これをてこに対南、対米外交に乗り出すという策略だろう」との論を展開。「とくに貿易戦争の解決に向けた米中交渉が行われている中、訪中して中国の北朝鮮に対する役割を浮かび上がらせ、米国の関心を促す効果を狙った」とした。

 一方、東亜日報(同)は10日、北朝鮮情勢に詳しい中国の消息筋の話として、今回の電撃訪中の背景に、金正恩氏が北朝鮮内部で米国との非核化交渉の必要性を説得できていないことがあるという。北朝鮮側の関係者と接触した複数の韓国の消息筋も同様の内容を伝えているとした。これは「米国が北朝鮮に対する制裁を緩和し、敵対政策を和らげてこそ非核化措置が可能という北朝鮮の宣言戦である可能性はあるが、一方で金氏が直面する北朝鮮の現実を反映しているとの分析もある」と記している。

 保守系の韓国紙、朝鮮日報(同)は社説(10日)で、文(ムン)在(ジェ)寅(イン)政権の外交を問題視し、北京に大統領府の人事異動のため韓国大使が不在だったことを取り上げ、「韓国政府による中国との外交は外交とはいえず、中国の一方的な横暴にただ引きずられているだけだ」と批判した。(水沼啓子)

最終更新:1/14(月) 14:51
産経新聞

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