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EUにほしい柔軟性 離脱延期を探る動きも

1/14(月) 15:08配信

産経新聞

 欧州連合(EU)からの離脱案の審議を9日再開した英議会は、15日に採決を行うが、依然として議員の反対が根強く、協定発効に不可欠な議会承認を得るのは困難な情勢だ。否決なら「合意なき離脱」が現実味を増すため、英国とEU双方で、3月29日の離脱期日を最大1年間延期する可能性を探りはじめた。英国では、北アイルランドの国境管理をめぐる「バックストップ(安全策)」への反発がやまず、「再交渉は受け付けない」とかたくなに原則論を崩さないEUの強硬姿勢に批判が高まっている。

■いぜん強い反発

 「妥当な合意」と考えている有権者は18%-。メイ英首相がEUと合意した離脱案について世論調査会社ORBは7日、こんな調査結果を発表した。59%が「妥当な合意とは思わない」と回答、21%が「分からない」だった。

 昨年12月11日に予定された採決を延期後、約1カ月間、反対派の説得のため、メイ氏はEU側からさらなる譲歩を引き出す努力を年末年始も続けた。英メディアによると、EUのユンケル欧州委員長やドイツのメルケル首相らと電話会談を続け、国内でも反対派議員を説得するため、協議の場となるパーティーを開催し多数派工作に努めた。

 だが反対派議員の態度が軟化することはなかった。

 「何度採決しても、結果は同じ。反対への姿勢はかわらない」。メイ氏降ろしの旗を振った与党・保守党の離脱強硬派のリースモグ議員はデーリー・テレグラフ紙に寄稿し、対決姿勢をあらわにした。メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は、「バックストップ(安全策)」が削除されない限り、反対票を投じると表明。離脱後、バックストップが発動された場合、北アイルランド議会に新しいEUルールを拒否できる権限を付与するとの政府の新たな提案も、「まやかしだ」と一蹴した

 下院で過半数の議席に達しない保守党には反対派が100人以上いるとされ、否決は「ほぼ確実」(英紙)との見方が有力だ。否決なら、世界経済に混乱をもたらす「合意なき離脱」が現実的となり、首相退陣や解散・総選挙、国民投票も取り沙汰される。

■延期の可能性探る

 そこでタイムズ紙は、下院では、「合意なき離脱」回避に向けて超党派の議員が3月に予定される離脱を最長7月まで延期する緊急避難措置の検討を始めたと報じた。またデーリー・テレグラフ紙は3人のEU関係者の話として、英政府当局者らが離脱手続きの延期が「実行可能か探っている」と伝えた。

 英首相官邸は、「首相は一貫して3月29日にEUを離脱すると述べており、延長はない」と回答するが、EU高官がロイター通信に語ったところでは、「(離脱)延期がおそらく最も可能性の高い結果だろう」として、EUとしても英国の離脱延期に応じる用意があり、既に方法について協議しているという。ただ、「総選挙か、国民投票再実施か。何のために延期するか」。英国が問題を解決できるか不透明なため、延期の意味を疑問視しているとも報じている。

 欧州司法裁判所(ECJ)が先月、英国にはEU離脱の決定を一方的に撤回できる権利があるとの判断を示したことも大きい。

 離脱案が否決されれば、離脱手続きは未知の領域に入る。EU当局者は(1)5月の欧州議会への影響を回避するため、離脱を7月まで最長3カ月延期(2)英国がEU基本条約(リスボン条約)50条に基づき、最長1年の離脱延期を要請。英国を除くEU加盟27カ国による全会一致で承認される(3)英国が離脱の方法または是非を問う2度目の国民投票か総選挙を実施するまで離脱通知を撤回-などのシナリオが検討されているという。

■中露が狙うEU地盤沈下

 「EUの属国になる」。離脱案をめぐっては、バックストップ(安全策)で離脱後もEUの政策決定に口出しできないままEU規則に縛られ続ける恐れがあることや、EUと唯一陸続きの英領北アイルランドを英本土と異なる扱いとする可能性が残っている点などに「主権の回復」を主張する強硬派を中心とした多くの議員らが不満を示している。

 議員から承認を得るには「安全策をなくすか、残したとしても一方的に英国が抜けられる仕組みを作ること」(ストラスクライド大学のジョン・カーティス教授)との指摘がある。

 メイ氏は、EU側から安全策はあくまでも「暫定措置」であるとの確約を得ることなどを模索しているが、EU側は、「再交渉には応じない」(トゥスク大統領)との原則論にこだわる。つれなく、一切の修正を拒否して平行線をたどるばかりだ。EU首脳会議は関税同盟残留が「一時的措置」であるという文書を採択したが、強硬派議員が主張する法的保証には程遠い。

 日本と自由や民主主義、法の支配などの価値観を共有する英国を含む欧州の“内紛”にほくそ笑むのは、価値観が異なり、EU諸国の分断を図ってきたロシアであり中国だろう。EUの地盤沈下を阻止するために「光輝ある孤独」を貫く英国が決断を下すには、EU側にもう少し柔軟性が必要ではなかろうか-。(ロンドン 岡部伸)

最終更新:1/14(月) 17:12
産経新聞

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