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医者の家族がインフルエンザにかかったら エビデンスと情の戦い

1/18(金) 13:31配信

BuzzFeed Japan

確実な予防法は「引きこもり誰とも接触しないこと」だが......

でも、どうやって医学的な知識がきちんとある人に相談したら良いのか。実はそのために診察があるのです。診察の基本は症状を聞くことと、患者の考えを聞くことです。薬を処方することではありません。

ところで、昔から「体を冷やすと風邪をひく」と言いますが、体を冷やした人が、なぜウイルス感染の機会が高まるのか科学的には分かりません。

気温が下がり空気が乾燥するとインフルエンザを含めた風邪の患者は増えますが、実際はいくつかの仮説はありますが、どうして流行する季節があるのかよく分かっていません。当たり前の事でも、意外と科学では分からないことだらけなのです。

もう一つの確実なインフルエンザの予防法があります。家で引きこもり誰とも接触しないことです。

子供を感染の機会が多い場所、学校に行かせないことが一番有効なインフルエンザの予防方法なのです(もちろんそんなことはできませんが)。

冬の病院、特に小児科はインフルエンザの子供達であふれかえっています。あの中が一番感染の機会が多いのではと思います。また診察する医者も自分が感染するのを防ぐのに必死です。というより、病院で勤務する限り半ば無理と諦めていました。

僕が診察のためいつも往診する高齢者の方は、インフルエンザの患者があふれる病院通いもせず、人の集まるスーパーにも滅多に買い物に行かないため、インフルエンザに罹りにくい生活をしています。

そして、僕も病院勤めを辞めて、開業してからはインフルエンザに罹ることなく6年が過ぎました。でも本当は、不顕性感染といって症状もなく、自分の知らない間にインフルエンザ罹っていたこともあるのかもしれません。

我が家の場合、現代医学の力で万全に備えたつもりでも今年のインフルエンザウイルスには全く無力でした。子供は、クラスで流行しているインフルエンザをあっさりともらってしまいました。

妻の要求と医者としての受け答え

そして、いつものように妻から連絡がありました。僕は電話で話すと不機嫌になる悪い癖があるので、いつも大切な用事はメッセージで届きます。

「薬持って帰って」

「あと、インフルエンザの検査してやってな」

さて、最近の報道やネット情報で、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザ)が、日本で突出して多く処方されていることが示されています。

この抗インフルエンザ薬を服用しても、せいぜい1日(成人0.6~0.7日、小児1日)発熱する日を減らせるくらいの効果しかなく、値段が高い上に、今後抗インフルエンザ薬の耐性、つまり今は効いても今後薬が効かなくなる強力なインフルエンザウイルスになってしまう危険があるのではとも言われています。

医者としての僕は、こういう記事や研究を読むと、目の前の患者だけではなく、もっとこの地域の市民全体のことを考えなくては、国の医療費の増大を防がなくてはと、簡単に感化されてしまいます。「そうだ、元々元気な人は家でおとなしく寝ていればいいんだ」と。

元々は、健康な人で高熱で喉の痛みがあり、関節痛があると言って診療に来られる人には、型通りの診療を繰り返していました。

「ではまず、インフルエンザの検査をしましょう。鼻からこの検査の棒をいれます。痛いですけど直ぐ終わりますから頑張って」「さて、検査の結果インフルエンザAと分かりました。このインフルエンザの薬を5日間続けて服用して下さい。それではお大事に」

しかし、薬の使いすぎがよく言われるようになった最近では、次のように診療して、帰宅させてしまうこともあります。

「あなたは、多分インフルエンザでしょう。でも元々元気な人だから、インフルエンザの薬は要りません。早く家に帰って休んで下さい。解熱薬は処方しましょう」

でも医者としては、薬を処方しないことの方が、薬を処方するよりもずっと大変です。まず、患者は納得して帰ってくれるとは限りません。

時には、「インフルエンザの薬をもらいにここに来たんだ」と、露骨に不愉快な口調になる人もいます。その気持ちも分かる気がします。発熱し、つらい体で長い時間待たされて、わずかな時間で診察が終わってしまって満足できるとは思えません。医者と話せただけで満足、直接助言をもらえただけで納得なんて人はいません。

今はネットでも親同士でも情報のやりとりがかなり高度で、医者の話なんて最初から期待していませんし、僕もそれほど有り難い話はできません。僕が診察しただけで、パワーとか波動が患者に伝わり、驚くほどインフルエンザが治るというほど、特別な力は残念ながらありません。

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最終更新:1/18(金) 21:40
BuzzFeed Japan

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