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医者の家族がインフルエンザにかかったら エビデンスと情の戦い

1/18(金) 13:31配信

BuzzFeed Japan

エビデンスと親心に引き裂かれて......

妻のメッセージには、続きがありました。

「最近飲み薬でいいのができたんやろ」

恐るべし、母親情報。確かにゾフルーザという、1回だけ服用するだけでよいという新薬が2018年3月から使えるようになりました。「新しいものはよく効く」と思うのも当然でしょう。

「今までの抗インフルエンザ薬と比べて、特に効果が良いということもない」などと専門家のしたり顔をしようものなら、家族中の反感を買うでしょう。

「日本では抗インフルエンザ薬を使いすぎだ。これでは近い将来薬が効かなくなり、日本国民が深刻な不利益を被る」などと家庭内で公衆衛生の説教を始めようものなら、日本国民以前に、我が夫婦仲に深刻な不利益を被るでしょう。

「元々元気な人には抗インフルエンザ薬は必要ない。せいぜい発熱を1日早く治せる程度、1日余分に寝ていたら良い」などと声高に宣言しようものなら、高熱に苦しむ我が子と元気なときの姿との余りの違いに、自分自身が自己嫌悪に陥ってしまうでしょう。

帰宅までの間、僕の中では、医者としてエビデンスを重視する理性と、父親として子供を案ずるプライベートな本能の葛藤で引き裂かれてしまいました。

理性と本能が戦ったときは、必ず本能が勝利するのです。医者である僕よりも、父親である僕がやはり前に立つのです。

そして、結局抗インフルエンザ薬を自費で購入して持ち帰りました。補足すると、僕の健康保険は医者国保なので、自分も自分の家族も保険診療することはできず、処方箋を書くこともできないのです。というわけで、健康保険を使わず、10割負担でイナビル吸入薬を持ち帰ることにしたのでした。

エビデンスを重視する僕の理性は、まだ研究が不足している新薬のゾフルーザではなく、今まで使い慣れたイナビル吸入薬を選ぶことを主張しました。いや、ちょっとだけ妻に反抗したかったという夫の本能なのかもしれませんが。

さらには、「インフルエンザに罹っている暇は(開業医である)僕にはない。僕がインフルエンザになると誰も代わりに働いてはくれない」と、毎日運動して至って健康な自分もちゃっかり予防投与することにしました。こうなると、エビデンスも何もあったものではありません。

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最終更新:1/18(金) 21:40
BuzzFeed Japan

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