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般若「ここに立てて本当に良かった」笑いあり涙あり初の武道館公演ワンマン:レポート

1/19(土) 12:11配信

MusicVoice

 ラッパーの般若が11日、日本武道館で『おはよう武道館 ワンマンライブ』をおこなった。このライブは20年以上のキャリアを持つ彼の、自身初となる日本武道館での単独公演。全11人の客演を交え、事前に公言していた自身の年齢と同じアンコールを含む全40曲を披露した。テレビ朝日系の音楽番組『フリースタイルダンジョン』での“ラスボス”としても知られている般若。この日はいちアーティストとして、時にコミカルに、時にクールに、さらに涙ものぞかせ「俺は生きて、頑張って、ここに立てて本当によかった。マジでありがとう」とマイク一本で戦い抜いた。彼の生き様がつまった、この日の模様をレポートする。【取材=小池直也】

■これまでの歩みを感じさせる客演陣

 この日は般若にとって、一世一代の大勝負の日だった。会場は年齢層の広いオーディエンスで埋め尽くされている。あとはステージを待つのみだ。そして、突然の暗転からオープニング映像。般若が119歳になった設定で、崇勲扮する息子とYellow Pato(BAD HOP)扮する孫に囲まれるコミカルな内容が映し出されてから、「ぶどうかんのうた」のイントロが鳴った。いよいよ開幕だ。

 黒いジャケット姿の般若は、スタンドに添えたマイク一本を武器に戦場に現れた。前半はシリアスな曲を並べる。2曲目の「ここにいる」では<武道館にいる>と歌詞を変えて熱唱。会場から合唱も起きた。気付けば、誰に強いられることもなく座席から立ちあがっているオーディエンス。マイクを通して放たれる般若の言葉に耳を傾ける。

 7曲目「FLY」ではラップだけではなく、歌声も聴かせた。力強く歌う姿に熱いものがこみ上げる。活動を始めてからの20年以上のキャリアで積み重ねたものをそこに感じたからだ。後方スクリーンに映し出された「般若」というモノクロの文字と同じく、ステージ上にいたのは飾ることのない「ただの般若」だった。そこに若いラッパーにはない力を感じた。

 続く「3時56分」を歌い終えてから、119歳の般若があの世に旅立つ映像が挟まれる。この中でラッパー・裂固が閻魔大王として登場。彼の「40歳の時の武道館で、序盤から暗い曲やりすぎて客にドン引きされたのは本当か?」というセリフで会場には笑いが起きた。映像が終わると全身白の衣装に着替えて般若がステージに帰還し「理由」で第2ステージ開始。冒頭とは対照的に跳び跳ねながら歌う。続く「はいしんだ」でも観客を煽って盛り上げる。

 ここから客演曲が続く。まずはMACCHOとNORIKIYOを迎えた「Beats&Rhyme」。7年前の楽曲だが、それぞれの今の感覚でマイクリレー。「HUNGRY」はSHINGO★西成とZORNがステージに乗り込み、観客もヒートアップする。そして「MONSTER VISION」ではCHICO CARITO、T-Pablow、DOTAMA、漢 a.k.a. GAMI、サイプレス上野、R-指定の『フリースタイルダンジョン』初代モンスターが勢ぞろい。最後はt-Aceを呼び込んだ「ダレも知らないブルース」で締め。般若のこれまでの歩みを感じさせる客演陣だった。

 その後、仲間を讃える般若。そして「いい知らせと悪い知らせがあります」と予告。それは良くも悪くも「この後俺がずっと一人でやるということ」なのだそうだ。続く「最ッ低のMC」のイントロでも「誰だっけ? 俺の武道館チケット売れないって言ってたの? 周り見てみ。いっぱいいるぞ!」とMCして、会場をわかせる。さすがは般若、リップサービスも貫禄が違う。

 さらに自身の自伝と同じタイトルである「何者でもない」では「ここに来るまで時間かかったね。遅くなっちゃってごめんね。アイドルとかやってればよかった。メジャーでやってればよかった。色々な所で出禁になったり、ケンカしたりしまくっちゃった。ごめん。後悔してないわ。これが俺の道だったわ」と毒を混ぜながら話した。

■頑張って、ここに立てて本当によかった

 また「今やらなきゃいけない曲」として「土足厳禁」と「オレ達の大和」を披露。他国との外交問題や平和への願い、いちアーティストとして政治的な話題にもしっかり触れていく。そこから「ゼロ」へ。細かいフロウから、半分のスピードになる場面にぐっときた。そこから本編最後の32曲目「夢の痕」まで走り抜ける。ここまで、どれだけの言葉数を吐き出したことだろう。それでも彼の喉は疲れることはなかった。ステージ上のふるまいにも洗練を感じた。彼はただのラッパーではなく、エンターテイナーだということがわかった。

 冒頭から数えて第3の映像が流れる。そして観客からのアンコールで、もう一度般若がステージに上がった。アンコールはラッパー・KOHHと制作した「家族」から。自身の両親について切実につづったこの曲を「その時は寂しかったけど、今日ここにいる全員家族だろ」と前置きしてから歌い上げた。続く「家訓」のエンディングでは、息子も壇上に上がり大好きな荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の話をする一幕も。人気曲「やっちゃった」はレアなフル尺での披露で大合唱になる。

 「俺が狂ったのは長渕剛のせいだよ。兄貴がいなかったら俺は般若にはなってなかった。妄走族がなかったら、般若にはなってなかった。色々なことがあった。だけど今日これだけは言えるよ。俺は生きて、頑張って、ここに立てて本当によかった。マジでありがとう」いよいよ、宣言していた40曲までラストスパート。38曲目「サイン」、39曲目「乱世」と続き、もう一度般若が語る。

 「またさ、次はマイク一本で帰ってくるよ。修行し直して必ず帰ってくるよ。ありがとう。まじでありがとう。母ちゃん、俺のこと生んでくれてありがとな。若い頃たくさん迷惑かけた。色んな人に感謝の気持ちしかないわ。次の曲で本当に最後だ。また会おうぜ」

 フィニッシュは「あの頃じゃねえ」。最初の二小節は涙で歌えなかった。目をふさぐ般若。それでも力強い三連符を中心にラップしていく。<あの頃じゃねえ/一番強えのは今だぜ>。ブレずに自分の道を進み続けてきた男。その言葉にある説得力には、誰も反論できるわけがない。そして、般若は三時間、40曲を走り抜いた。「2019年1月11日、『おはよう武道館』ありがとうございました」そう告げて、大きな拍手とともにステージを去っていった。

最終更新:1/19(土) 12:11
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