ここから本文です

社会福祉法人の首都圏進出 背景を探る〈上〉

1/22(火) 9:40配信

福祉新聞

 ◆都内法人に余力なく

 36道府県の156社会福祉法人が首都圏に進出して、468施設を経営する新・福祉事情。その背景の一つには、行政の施設整備計画を首都圏の法人だけでは担いきれない現実がある。

 東京都が、2018年3月に策定した「第7期高齢者保健福祉計画」では、25年度見込みで約9万6000人分の施設整備が予定されている(グラフ参照)。25年末までに特別養護老人ホームの定員を4万6623人から6万2000人に、老人保健施設の定員を2万1937人から3万人に増やすという。

 特養ホームの定員も毎年2000人増やす計画だが、財政面・人材面で『体力のある』都内の法人は既に新設・増床しており、余力はない。

 都福祉保健局支援課は「都として政策的に都外法人の誘導はしていないが、この10年間に新たに整備された高齢者施設の4割は『都外法人』が経営している。『都内法人』だけで対応するのは難しい」と話す。

 施設用の土地が少なく、複合施設を計画する自治体が多い、という首都圏ならではの事情もある。

 首都圏には、地方法人が経営する複合施設が15カ所ある。複合施設では、高齢者、障害児者、医療など複数分野の施設経営経験が求められるが、対応できる首都圏の法人は限られる。

 地方の法人への期待の高さは、保育行政も同じだ。進出法人が経営する保育施設が18カ所と都内で最も多い足立区。04年度から公立保育所の民営化を進める一方、12年度に待機児童解消アクション・プランを策定し、保育サービスの確保に努めている。

 11年度から7年間で18公立保育所を民営化し、30カ所・3728人分の認可保育所を整備した。18年度は19カ所・1296人分、19年度は22カ所・1209人分を整備する計画だ。だが、区内に保育所経営法人は17しかない。近隣自治体も待機児童対策を進める中、地方の法人を頼らずに計画達成は難しいのが実情だ。

 ◆地方法人は存続かけて

 進出の背景には、経営基盤の維持・強化や、法人存続をかけた地方の法人の事情もある。

 都内で高齢者施設を経営する法人は、本部のある地方自治体に施設整備計画がなく、高齢者人口がピークに達して今後サービス利用者が減少する見込みから進出を決めた。

 「このままでは施設の閉鎖などで法人の経営基盤が揺らぎかねない。今後も高齢者人口が増える首都圏に進出すれば経営基盤を維持・強化できる」と説明する。

 首都圏で高齢者施設を経営する84法人中56法人は、本部が県庁所在地以外にあり、10法人は町村部にある。利用者が減少する法人にとって首都圏進出は、経営基盤を維持・強化するための懸命の経営努力といえる。

 保育施設はさらに切実だ。1法人1施設が47%を占め、平均施設数も3・7カ所と少ない(全国保育協議会11年度保育所実態調査)。1施設の経営実績が法人全体の経営に直結するだけに、子どもが減少する地域の法人にとって、首都圏進出は法人の存続をかけた必死の挑戦なのだ。

 一方、保育施設経営法人の中には、毎年2~3カ所新規開設している法人がある。この中には、学校法人や学習塾を経営する株式会社のグループ法人も多く、保育の質を懸念する声も出ている。

 進出を促している一つの制度があった。土地借料の減額や建設費補助などの手厚い補助制度だ。

 例えば、東京都では、国有地や都有地に高齢者施設を建てる場合、土地借料が10年間減額される。市区町村所有地の場合は、無償貸与のケースもある。民間宅地を活用すると、土地借料が5年間補助される。

 建物整備には実行経費の約2分の1が補助される。例えば、定員100人の特養ホームを建てる場合、平均建設費の約17億円に対し、8億円が補助される計算だ。

 保育所への補助はさらに手厚い。例えば、定員80人の保育所を3億6000万円で建てると、2億7000万円が補助される。

 手厚い補助制度は地方法人にとって大きな魅力であり、首都圏進出を下支えする大きな要因になっている。

最終更新:1/22(火) 9:40
福祉新聞

あなたにおすすめの記事