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目指すは「名選手すなわち名指導者」?高校ラグビー部を指導する元トップリーガーたちの戦い

1/23(水) 17:01配信

VICTORY

ラグビー界では、元有名選手が高校の指導者となるケースが増えている。

2003年にできた国内最高峰トップリーグには、ラグビー専業のプロ選手と各クラブの親会社に務める社員選手が混在する。他競技と違い、プロとアマチュアが交流しにくい歴史的背景は皆無だ。選手時代から大学へ通い教員免許を取るプロ選手は多く、かねてから高校教諭は人気のセカンドキャリアのひとつだった。

その流れが目に見えたのが、先の年末年始だった。大阪の東大阪市花園ラグビー場で開かれた第98回全国高校ラグビー大会では、千葉の流通経済大学付属柏高校(流経大柏)を率いて4強入り。2013年に同校コーチとして赴任した元リコーの相亮太が、監督就任4年目にしてクラブ史上最高成績を収めたのだ。

また、パナソニックの主将や日本代表入りの経験を持つ霜村誠一は、群馬の桐生第一高校(桐生一)の監督として同大会初出場を果たした。一部の中堅校が手堅い力勝負に固執しがちななか、ボールを大きく動かすスタイルを志向。2回戦で大阪の強豪である常翔学園高校に0―67と大敗も、こんな哲学をパフォーマンスににじませた。

「(力勝負重視のスタイルは)もしかしたらラグビー離れを招いてしまう。怪我をしないためにもフィジカル強化は大事。その一方で、世界を見据えるなら高校生のうちからスペースを使う感覚でアタックした方がいい」

ずっと教員志望だった相、霜村がプロ活動をしていた2000年代から2010年代序盤は、トップリーグに海外の有名な選手や指導者が相次ぎやって来た時期と重なる。両者は、国内の競技力が高まるさなかにプレーしていたと言える。また2人ともスパイクを脱いで間もなく、現役選手などとの強いネットワークも持つ。少なくとも現時点では、国内最先端の知見にアクセスしやすい。

相はかつての同僚で元7人制日本代表の小吹祐介をスポットコーチに招き、今季の全国7人制大会で初優勝。霜村も週に2日は古巣パナソニックのグラウンドで練習し、自らのタックルスキルを選手に伝授した。自身のリソースをチーム力強化に還元している。

高校日本代表のコーチの1人は、名選手だった指導者の増加に「集まった選手に『このレベルから教えなきゃいけないのか』と思うことがなくなるのでは」と喜ぶ。現状では、基本プレーや近代戦術のトレンドに疎い候補選手がいる様子。競技への造詣が深いコーチが各校に散らばれば、従来よりも高水準でのセレクションができそうだと期待する。

もっともこの世には、「名選手、名指導者にあらず」という格言もある。器用ではない選手との感覚の乖離に気づかない指導者、選手引退後に競技の進化へ追いつけなくなる指導者を指してのフレーズだろう。

元20歳以下日本代表ヘッドコーチで現サントリー監督の沢木敬介は、昨季までにトップリーグで2連覇を達成。「コーチングは、学ばなきゃいけない」と自らの態度を示し、こうも言った。

「色々な経験を積んだ人間がコーチとして成長する志があれば、その人はいいコーチになりますよ。ただ、トップリーグでやっていましたという自分の経験だけで高校生を教えても、少しは良くなるかもしれないですけど、あまり(成長への)影響力はないんじゃないですか。(プレーの注意点を)言ってもすぐにできない選手がいるとする。ただ、そのできないことを選手のせいにしちゃうと、指導者の成長は止まる。選手がわかるように説明したり、(誰にでも指導内容が)わかるようなストラクチャーを作らなきゃいけない」

まして対象が高校生となれば、なかには金の卵も、卒業後にラグビーを辞める部員もいる。高校の指導者には、教え子にラグビーが好きでよかったと思わせること、部活を通じて心身のしなやかさやたくましさを身に付けさせることなど、競技力向上以外の使命が多くある。それらは、元トップリーガーだからといってできるとは限らない。

そんななか霜村は、元トップ選手がはまりがちな罠に早くから気づいたという。

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最終更新:1/23(水) 17:01
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