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在韓米軍撤退観測高まる 分担金で米韓折り合えず

1/24(木) 11:43配信

ニュースソクラ

北朝鮮外交に偏る文政権 日本の安全保障に悪影響も

 今年のお正月を、韓国国民は北朝鮮の金正恩委員長の新年の辞で迎えた。1月1日午前9時、韓国の国営放送KBSは、北朝鮮の朝鮮中央テレビが録画放送した新年の辞を生中継した。トランプ米大統領の書斎を真似たような執務室で、金委員長は見慣れない背広姿でソファーに座って演説文を朗読した。その突飛な演出は、新年早々から韓国人の目と耳を虜にした。

 しかし、演説内容は従来の立場を繰り返すだけだった。非核化問題では、北朝鮮はすでに具体的な措置を取ってきたので、これからは米国側が6.12合意を守らなければならないと求めた。さもなければ「新しい道」を模索するという脅迫も忘れなかった。

 一方、韓国国民に対しては、「平和と繁栄の新しい歴史をともに作り上げた南の同胞」と称し、2019年には、「南北関係の発展と平和繁栄、統一に向けて(一緒に)闘争し、より大きな前進を果たしていこう」と提案した。具体的には、外勢(米国)との合同軍事演習および戦略武器の搬入中止、平和協定のための多国間交渉、開城工業地区や金剛山観光の再開、外部の制裁と圧迫に対して南北が手を取り合って団結して抵抗しようということだった。

 新年の辞に対する韓国世論は賛否両論だったが、金氏が言及した「韓米軍事訓練中断」「9・19南北軍事合意の積極実践」「金剛山観光再開」などのキーワードが各メディアやネットなどで終日取り上げられ、関心を高めた。

 2日、文在寅大統領も大統領府で開かれた「2019年新年会」で、「韓半島(朝鮮半島)が中心となって北にロシアと中国、南にアセアンとインドまでを結ぶ平和と繁栄の共同体を作っていこう」と演説、金正恩氏の新年の辞に応じた。

 続いて7日、大統領府で設けられた中小企業関係者との懇談会でも、文大統領は金正恩氏の新年の辞を取り上げた。「(北朝鮮が)開城工業団地と金鋼山観光を条件なしに再開すると言ったことは歓迎に値する」「国際制裁問題が解決すれば素早く(開城工業団地と金鋼山観光の再会を)進めたい。南北経済協力には中小・ベンチャー企業も参加しなければならない」

 文大統領は10日の新年記者会見でも南北経済協力に対する意志を強く表明した。「国際制裁が解除して北朝鮮経済が開放され、インフラ建設になれば、中国など様々な国際資本が競って北朝鮮に入る。そのとき、韓国が機会を逃さないことが非常に重要だ」「南北経済こそ新たな画期的な成長動力になるだろう」「(南北経済協力は)われわれにだけに与えられた祝福だ」「南北経済協力が本格化すれば地域経済も活性化する」

 16日に発刊された文政権の初の国防白書は、「北朝鮮は主敵」という表現を削除した。韓国軍の主敵を北朝鮮から、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅し、侵害する勢力」へと転換した。加えて、北朝鮮を刺激すると指摘されていた「キル・チェイン」(Kill Chain 北朝鮮軍の非対称戦力に対応するための防御システム)や、「大量膺懲報復」(KMPR  北朝鮮が核・ミサイルを使用した場合、それに報復して北朝鮮軍首脳部や主要施設を素早く破壊する戦略)という用語も消えた。

 その代わりに、白書全般にわたって、昨年9月の南北軍事分野合意の履行を強調し、南北間の軍事的緊張緩和と信頼構築に向けて韓国軍が努力していかなければならないと何回も強調した。朝鮮半島情勢についても「北朝鮮は(南北軍事合意の)事項に対して忠実に履行する姿勢を見せている」「今後も北朝鮮は経済活路づくりのための外部的環境づくりへ向け、大枠で南北間の協力および交流基調を維持するものと見なされる」という楽観論で埋め尽くした。

 一方、韓国内では北朝鮮の非核化に対する文政権の楽観論と、北朝鮮第一主義外交に対する批判の声も多い。文政権が北朝鮮との関係改善だけに力を注ぐあまり、伝統的な米韓同盟を弱体化させるとともに日韓関係を悪化させることで、自ら孤立を招いているという指摘だ。

 特に、次第に現実味を増している「在韓米軍撤退」は、韓国の安保に決定的な危険をもたらすという警告が相次いでいる。大統領候補時代のトランプ氏は、韓国が防衛費増強にかなりの貢献をしない場合は駐韓米軍を撤退すると何回も強調した。2017年の韓米首脳会談や2018年6月のシンガポール米朝首脳会談後の記者会見でも「いつかは彼ら(在韓米軍)を家に帰らせたい」と述べた。昨年末には、同盟擁護派のマティス国防長官がついに電撃辞任し、シリア駐留米軍の撤退が確定したことで、次は在韓米軍という観測が拡散された。

 米韓が去年の3月から10回にも上る会議を持ちながらも、在韓米軍の防衛分担金について合意に至らなかった点も、在韓米軍の撤退の可能性を高めている。

 現在、韓国政府は2万8500人の在韓米軍駐留費用の46%である9、600億ウォン(960億円)を支払っている。今回の交渉で、トランプ大統領は最初2倍の増額を求めたが、最近では1.3倍の1兆3千億の増額を 提案してきたという。また、交渉の期限をこれまでの5年から1年に縮め、毎年交渉する意思も伝えてきた。これに対し、韓国政府は、「建設費と人件費、各種税制上の恩恵まで含めると、すでに5兆ウォン以上を支払わされている」「分担金が1兆ウォンを超えれば、世論が反対する」と激しく抵抗している。

 米マスコミ各社は、防衛費負担交渉の決裂が在韓米軍の撤退につながると警告してきた。米国の議会専門誌「ザ・ヒル」は、「トランプ大統領がSMA(防衛費分担金)交渉決裂を駐韓米軍撤退の機会と見なす恐れがある」とし、「米韓の戦略的同盟関係の悲劇的で突然の終息になるだろう」と報じた。米国の外交専門誌「ディプロマット」は、韓国政府がトランプ大統領の防衛費分担金増額要求を拒否する場合、「トランプ大統領が2回目の米朝首脳会談で、北朝鮮政権に対する好意の証として一方的に在韓米軍削減を宣言する恐れもある」と見通した。

 米韓同盟の弱体化は、最近の米国側の北朝鮮核問題に対する姿勢の変化からも感じ取ることができる。第2次米朝首脳会談に向けて、その準備に着手しているポンペオ米国務長官は11日、「究極的に最も重要なのは米国国民の安全」と述べたが、この発言は韓国で大きな波紋を呼んだ。膠着状態に陥っている米朝間の非核化交渉の局面転換のため、米国側がCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)の代わりに「適切な水準の核凍結」へと後退し、ICBM(大陸間弾頭ミサイル)の廃棄の合意で交渉を終わらせようとするのではないかという疑問を生んだのだ。

 在日米軍が公開した広報映像に「北朝鮮を核保有国と認めたような内容が含まれている」という韓国メディアの報道も、韓国民に衝撃を与えている。

 経済も外交も北朝鮮に偏る文政権と、金のために容赦なく同盟を切り捨てるトランプ政権によって、韓米同盟は未曾有の危機にある。新年早々大揺れの米韓関係は、日本の安全保障にも大きな影を落とすことになるだろう。

金 敬哲 (ジャーナリスト 在ソウル)

最終更新:1/24(木) 11:43
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