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今こそメンツ捨て、脱原発へ大転換を

2/1(金) 14:01配信

ニュースソクラ

【緑の最前線(64)】日立の英原発中断 原発推進路線を変えるきっかけに

 日立製作所は英国での原発建設計画の中断を来週にも決める方針だ。約3兆円の事業費を巡る日英の政府や企業との交渉が難航して現時点での事業継続は難しいと判断したためだ。2千億~3千億円規模の損失を2019年3月期決算で計上する見通しだ。同社が断念すれば、日本企業による海外での原発事業は事実上ゼロとなり、安倍晋三政権が成長戦略の重要な柱のひとつに掲げた原発輸出は頓挫することになる。

 原発輸出が非現実的であることは、この数年本欄でも繰り返し指摘してきた。東京電力の福島原発事故以降、各国政府は原発の安全性への配慮を強化してきたため、建設費が急騰している。原発推進派の米国でも、採算上無理があるとして、新設はほとんど進んでいない。専門家の間で「原発はもはやビジネスとして成立しない」が常識化する中で、日本は経済産業省主導で「原発輸出」を積極的に推進してきた。

 だが、結果は惨憺たるものだった。経産省の優等生だった東芝が、米国の大手原子炉メーカー、WH(ウエスティングハウス)を巨額で買収したが、海外での原発需要が縮小し,巨額の赤字を抱え、倒産の危機に追い込まれたことはまだ記憶に新しい。

 昨年12月に日本政府と三菱重工がタッグを組んで取り組んできたトルコの原発建設計画も事業費などが膨らみ過ぎて断念した。今回英国の原発建設を断念した日立はこれまでにリトアニア、ベトナムでも原発建設計画を進めてきたが、財政上の理由などで16年に中断しており、海外での事業計画はすべて失敗したことになる。

 原発輸出の破綻は、日本の原発推進路線が時代の変化に遅れ、万策尽きてしまったこと示す典型例と言えるだろう。中国やロシアが採算無視で国策として推進する輸出競争に敗れたなどと無理なこじつけ理由でお茶を濁すべきではない。

 福島原発事故を契機に国民の原発アレルギーはかってなく強まっている。事故前の日本では、国民の多くが日本の原発はかつてチェルノブイリの大惨事を引き起こしたソ連製の原発と違って、二重、三重の安全チェックをしており、事故など起こりえないという政府、電力会社の「原発神話」を堅く信じてきた。

 ところが福島原発事故によって、日本の原発も「100%の安全とはいえない」ことを学んだ。しかも深刻な放射能汚染で16万人を超える人々が避難民として住処を追われ、いまだに多くの人々が帰還できない状態が続いている。

 しかも近い将来,日本列島で大地震が発生する可能性が高いと多くの地震学者が警告している。特に危険が指摘されているのが南海トラフ大地震の発生だ。2050年頃までに起こる可能性は極めて高いと予想されている。内閣府の試算によると、南海トラフ大地震が起これば、最大32万3千人が死亡し、経済被害は215兆円に及ぶと推計している。

 大地震が発生する前に大事故につながりかねない原発を廃止することは,国民の安全対策として政府の最優先課題であるはずだ。

 しかし政府を主導する経産省は、国民の反原発意識の高まりを無視し、原発事故後も事故前と同様、原発推進の旗を高く掲げ続けている。昨年7月初めに閣議決定した新エネルギー基本計画でも2030年度の全電源に占める原発比率を20~22%にする目標を掲げている。

 だが現実と遊離した政府の原発推進政策は次々と裏切られている。

 30年度の原発比率20~22%を実現させるためには既存の原発を30基程度稼働させなければならないが、現在は9基稼働させたに過ぎない。地域住民の反対を押し切って30基稼働させることは簡単にはできそうにない。まして新増設は不可能だろう。核燃料サイクルも2兆円超の巨費が投じられながら20年以上も稼働しない状態が続いている。高速増殖原型炉「もんじゅ」の解体で、次世代高速炉の開発も行き詰まっている。増え続ける高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も適地が見つからない状態だ。 

 原発推進に必要な様々な計画の矛盾がこの数年の間に一気に噴出し事実上破綻したと見られることは、政府の原発政策が「絵に描いた餅」に過ぎなかったことを物語っている。

この際、政府はメンツにこだわらず、既存の原発推進路線を大転換させ、国民感情を尊重し、脱原発、再生可能エネルギー中心の新たなエネルギー政策を作成し、実施していくべきだろう。

■三橋 規宏:緑の最前線(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。

最終更新:2/1(金) 14:01
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