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明石市長暴言問題 批判一転…擁護論急増の訳 報じ方、メディアに課題

2/4(月) 10:07配信

西日本新聞

 兵庫県明石市の泉房穂前市長(55)=2日付で辞職=が道路拡幅工事に伴うビルの立ち退き交渉を巡り、市職員に「(建物に)火付けてこい」などと暴言を浴びせた問題は、批判を浴びた市長が謝罪して辞職する一方、地元紙の詳報をきっかけに擁護論が高まる異例の展開をたどっている。背景には何があるのか。

【写真】記者会見で謝罪する明石市の前市長

 「今から建物壊してこい。損害賠償を個人で負え」。2017年6月の市長室での暴言を、地元の神戸新聞と全国紙が一斉に報じたのは先月29日付の朝刊。本紙は、共同通信の配信記事を同日付夕刊と翌30日付朝刊に掲載した。12年に工事が始まったJR明石駅前の国道拡幅に伴い、交差点付近の雑居ビルの立ち退きが進んでいないことについて罵倒する内容だった。

暴言には「続き」があった

 市によると、泉氏が記者会見した29日、市役所に「暴力団のような暴言だ」などの批判が337件届いた。市長を擁護する声は31件だった。

 実は、暴言には「続き」があった。付近では事故が多発、複数の死者が出ており、泉氏は「あっこの角で人が巻き込まれて死んだわけでしょ。だから拡幅するんでしょ」「私が行って土下座でもしますわ」「市民の安全のためやないか。言いたいのはそれや。そのためにしんどい仕事するんや、役所は」と述べていた。

 こうした発言の後半部分を当初報じたのは神戸新聞だけ。同紙記事がネット上で拡散すると、「一生懸命やっているからこその発言」「前後の発言を聞けば大したことない」など擁護論が急増。泉氏が辞意を表明した今月1日までに市に届いた意見の総数は、擁護が批判を上回った。

1年半前のデータがなぜ今、出回った?

 泉氏はNHKディレクターや弁護士、衆院議員を経て11年の市長選で初当選。子育て支援や犯罪被害者支援策などで注目を集め、今春の統一地方選で3選を目指していた。

 暴言の音声データは1月下旬、報道機関や一部市議に出回ったという。1年半前のデータがなぜ今、出回ったのか。

 神戸新聞明石総局で市政取材を担当する藤井伸哉記者(40)は「市長選とは無関係と断言はできない」と話す。暴言部分だけが意図的に報道機関に持ち込まれた可能性も「あると思う」。同紙は発言全体を把握していたが「全国紙と報道内容が違ったので、持っているデータが違うのかなと思った」と明かす。

 実際、発言の後半部分を当初把握していなかったメディアもあるようだ。結果的に発言の一部を切り取った報道になり、ネット上などで「公平さを欠く」と批判された。

 メディアの在り方に詳しい田島泰彦・元上智大教授は「公権力を担う人物の発言を厳しくチェックすることは大切で、今回の発言は問題だ」と指摘。その上で「発言の全貌を入手できない場合、背景や情報がもたらされた意図を吟味し、どんな文脈での発言で、どんな意味を持つか判断できる形で伝えなければ、一面的な報道になりかねない」と説く。

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最終更新:2/4(月) 12:50
西日本新聞

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