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中国経済、長期的な減速は不可避

2/7(木) 12:05配信

ニュースソクラ

【経済着眼】鍵は米中関係 経済面は妥協も、政治は対立避けられず

 最近、中国経済の停滞が目につくようになった。元々、中国はリーマンショック後の2008年11月に速やかに4兆元に及ぶ景気対策を実施して、中国のみならず世界景気を反動不況に陥るのを救済した。しかし、10年後の今日、中国の景気悪化が世界的な景気後退につながるのではないか、との不安が広がっている。

 ちなみに中国の昨年第三四半期の実質GDPは6.5%とリーマンショック直後以来の低水準となった。確かに、中国では自動車販売が28年ぶりに前年割れとなると見込まれるほか、固定資産投資も前年比5%程度にまで落ち込んでいる。雇用面でもテック部門や半導体などの関連業界では大量解雇が始まっていると伝えられている。

 中国の景気悪化はすでに世界中に伝播している。米国のアップル社が今月2日に中国におけるiPhoneの販売が減少しているとの発表が「アップル・ショック」と呼ばれて世界的な株価急落につながったのは記憶に新しい。また、日本の中国向け工作機械受注額が半導体製造装置などを中心に落ち込み、昨年11月は前年比67%も減った。オーストラリアなど資源国では、鉄鉱石や石炭など中国向け原材料の輸出が落ち込んでいる。

 世界景気は米国が利上げと減税効果の一巡、政府機関の閉鎖などの政治不安などから景気スローダウンが懸念され、日本やドイツは昨年第三四半期にすでにマイナス成長になっている。ここで中国の景気が大幅に後退でもすれば世界同時不況になるのではないか、と懸念されている。

 しかし、ある意味で中国にかつてのような高成長は望めない。つまり長期的観点から見れば、中国の成長率が徐々に低下していくのは避けられないからだ。日本と同じように中国の実質成長率が10%を超した高度成長期には、中国では農村から都市に余剰労働力が大量に移動した。そして、低賃金を武器に「世界の工場」と冠されるほどの製造大国となった。しかし、もはや農村部から都市に移動するような余剰労働力は残っていない。いわゆる「ルイスの転換点」を2004年ごろには過ぎたのである。さらに悪いことには人口動態からみても、生産年齢人口が減少局面を迎えて2012年ごろには人口ボーナスを喪失したとみられる。トレンド成長率が次第に下方屈折していくのは避けられない。

 第二には中国の過剰債務問題の是正を意識した習近平政権が大気汚染や河川の汚濁などの環境問題への対応に加えて、シャドーバンキングに対する規制強化や過剰設備の廃棄などの施策を講じたことも景気には抑制的に働いた。これらは必要不可欠な政策であり、とくに日本のバブル崩壊の経験をよく学んできた習近平政権がGDP比290%におよぶ債務を抑制しようとしたのは正しい政策選択であった。こうした行き過ぎ是正を通じて、習近平政権は中国の「新時代」を築くとして、量的な拡大よりも成長の「質」を問う方向に舵を切ろうとした。しかし、シャドーバンキングの抑制指導も国営銀行で資金調達できない中小企業やマネーゲームに踊りP2Pレンディングなどのフィンテックで損失を出すなど個人には多くの損失を与えたものの、肝心の国営企業の淘汰整理は大きく進まなかった。

 さらに生産年齢人口の減少と高賃金化のもとでは、従来の重厚長大製造業から宇宙開発、コンピュータ、5Gなどの通信技術振興などの高付加価値産業に転換するのが理にかなっている。これが「中国製造2025」構想を打ち出した背景である。

 毎年、共産党幹部が集まって開催される昨年夏の北戴河会議では上記のような緊縮気味の政策から景気刺激策への転換が合意された。折からの米中貿易摩擦の激化に伴う悪影響への配慮もあった。さらに現在では財政面では景気後退を恐れて減税や地下鉄敷設などのインフラ投資の拡大に乗り出した。金融政策面でも年明け後に預金準備率の引き下げで1170億ドル相当の資金開放にうごくなど、金融緩和に動き出した。次は金利の低下に動くかどうかが注目点だ。

 第三にはトランプ米大統領が仕掛けた米中貿易戦争の悪影響が加わった。中国としては内需が刺激策で持ち直すまで外需の増加に期待をしたいところであった。しかし、トランプ政権は中国に対する高関税措置を打ち出した。トランプ政権は、今年1月から対中輸入2,500億ドルに対する10%の関税を25%に引き上げる予定であった。しかし、アルゼンチンにおけるG20でのトップ会談で取りあえず90日間執行を猶予することになり、この間に両国で歩み寄りがみられるか、と注目を集めている。

 先月、ワシントン、ニューヨークをまわって驚いたことは、共和党、民主党の別を問わず、また日頃トランプ政権に批判的な良識派を含めて、みな対中強硬策を支持していることだ。ただ、対中貿易赤字を問題にしているのではない。中国がサイバー攻撃など不正な手段を通じてハイテク科学技術を米国等から窃盗を続けるのを見過ごしていては、5Gなどの通信技術、月面裏側にまで到達するような宇宙開発技術などで米国が中国に追い越されることを懸念しているためだ。

 このままでは米中双方にとって打撃が大きい。そこで、習近平政権も輸入拡大を約束するなど貿易摩擦の改善のためには妥協をしてこよう。しかし、一方で、海洋強国、製造強国などを目指すという政治スローガンを崩すわけにはいかない。第二の冷戦とも呼ばれるが、冷戦時代の米ロ関係と違って現在の米中経済関係はお互いに最大の貿易相手国となっているほど密接な関係となっている。経済面では妥協しても政治面では長期間にわたって対立が続く可能性が高いであろう。

 こうした下での中国経済は内需では金融財政政策を通じる景気刺激策の効果で下支えされると同時に、外需でも米国との貿易交渉で着地点を見出して輸出がこれ以上大きく減少することは避けられそうである。この結果、成長率は5~6%にダウンしつつも、景気底割れに至ることはなさそうである。とくに政治面では、2019年は中国建国70周年に当たり、さらに2021年は共産党結党百周年という一大イベントを控えているだけに習近平政権は必死になって持続的な成長を続けるべく手を打ってくるであろう。

俵 一郎:経済着眼 (国際金融専門家)

最終更新:2/7(木) 12:05
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