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タイ総選挙 王女擁立に国民「衝撃」 王室と軍、関係変化か

2/8(金) 20:57配信

毎日新聞

 【バンコク西脇真一】タイの民政復帰に向けた総選挙で、タクシン元首相派政党の一つ「タイ国家維持党」がワチラロンコン国王の姉ウボンラット王女(67)を首相候補に擁立したニュースは、国民に驚きを与えた。選挙の焦点は2014年5月から続く軍事政権を信任するかどうかだが、王女擁立は「反軍政のタクシン派政党に有利に働くとみられる」(タイ政治専門家)。ただ、反タクシン派との激しい対立が続く政治の世界に王女が飛び込んだことを懸念する人もいる。

 記者に囲まれたプリチャーポン党首は「幹部で決めた」などと語ったが詳細は伏せた。反タクシン派からは、国王のきょうだいという立場を問題視する声も上がるが「法律の専門家にも相談した」と強調した。

 タイ政治に詳しい水上祐二・タマサート大客員研究員によると、王女は「今年は大きな徳を積む行いをする」とソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に書き込み、最近は社会的な発言や庶民的なアピールも目立っていた。このため「かなり前から練られた計画だったのかもしれない」と話す。

 首相は選挙後、軍政の影響を強く受ける上院と下院が一緒に選出するが、かつてない候補の登場にチュラロンコン大のアモーン・ワニウィワット教授は「プラユット暫定首相も含め、各党の候補に首相の芽はなくなった」とみる。

 プミポン前国王時代は王室と軍が事実上の協力関係を保つことで、国内の安定が維持されてきた。しかし、今回の総選挙は「王制護持」を金科玉条とする軍政が、ウボンラット王女と「対立」する極めて異例の構図となった。王女擁立の背景は不明だが、ワチラロンコン国王を中心とする王室と軍との関係に変化が生じている可能性がある。

 バンコクで市民に尋ねると「タイには変革が必要だ」(56歳男性)と歓迎の意見が上がる一方、「王室はタイの中心。政治に関与すべきではない」(70歳女性)との声もあった。ある女性会社員(65)は「法的に問題がなくてもあそこまで高い地位の人が候補になるのは不適切だ。政治の世界に入ればこれまでの名声は落ちるかもしれないのに」と、涙ながらに話した。

最終更新:2/8(金) 22:58
毎日新聞

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