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【密着60時間】患者を断らない救命救急(4) ERの「きれいな話」の裏側で

2/8(金) 11:04配信

BuzzFeed Japan

「救急搬送は断らない」という方針を掲げ、年間約1万台の救急車を受け入れる、愛知県豊明市の藤田医科大学病院ER(救急外来)。一般的には重症患者にのみ対応する大学病院のERとしては異例で、「藤田市民病院」と揶揄されることも――そんな同院ERに密着取材を実施。記者の目に映った現場の様子を紹介する連載の第四回です。【BuzzFeed Japan Medical / 朽木誠一郎】

私たち人間じゃないの?

「最近ひっどいでしょ、医師の働き方の。過労死ラインの2倍って。何それ、私たち人間じゃないの?って感じですね。ちゃんと書いてくださいよ!」

冗談めかしているが、目は本気だった。

記者の取材は、ちょうど厚生労働省の「医師の働き方改革案」がまとめられ、話題になった時期と一致する。条件つきではあるが、医師について一般労働者の過労死ラインの約2倍、年間1900~2000時間の時間外労働時間を許容する案が、物議を醸していた。

話題は暗いが、努めて明るく記者にこう訴える木村さん(仮名)は、ある土曜日のER(救命救急センター)の日勤ERリーダー医師で、女性の後期研修医だ。

木村さんが研修医に「もうカルテできてる?」と聞いた。「はい、おおまかに」と答えると「おおまかにじゃなくて。来たらパッて動けるようにしておいて」とぴしゃり。

医師数が平日の半分程度になる体制で、木村さんはキビキビと現場を回す。

同院は土曜日まで通常診療日であるため、他科も午前中は受付をしている。その診察が終わった15時頃から、ERの外来がウォークイン(時間外に歩いて来院する患者)で混雑しだす、という。

「みんなやっぱり、午後くらいから“やっぱり病院に行こう”って動き出すんですよね。基本的に、通常診療の時間内に来ていただきたいのですが」

木村さんが「今日よう(電話が)鳴るんやけどー、もー」と嘆くように、この日は朝から15時頃までに、10台以上の救急搬送があった。平日並みの忙しさだが、そこに輪をかけて、ウォークインの来院が増え始める。

15時半、木村さんの言葉通り、ウォークインの受付に列ができた。すでに10人ほどが並んでいる。

待合室のソファには20人ほどが待つ。研修医たちが救急搬送に対応しながら、フル稼働でウォークインの患者を診察していた。とはいえ、診察室は3部屋しかない。

受付が患者に「かなり待ちますがよろしいですか?」「重症の方から診ますので」と念を押している。

季節柄、ウォークインはインフルエンザが多い。他には「膝の打撲」や「指の切創」など比較的、軽症の患者が多かった。しかし中には「左口角下垂」など脳梗塞と一致する症状もあり、「ウォークインだから軽症だろう」と決めつけることはできない。

「人、増やしてほしいわ」「病床は今日、空いているみたいですよ」「病床が空いてても玄関(ER)がこれじゃあね……」スタッフの会話が聞こえる。

木村さんが「誰か手の空いている人(医師)いないかねー?」と呼びかけるが、そもそもERに人が少ない。「みんな忙しいな」とつぶやき、自ら走っていった。

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最終更新:2/8(金) 11:04
BuzzFeed Japan

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