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ある再生コンサルの逮捕劇から見える事業再生の現場

2/8(金) 14:38配信

東京商工リサーチ

 事業再生コンサルとして知られるA氏は、東京商工リサーチ(TSR)のデータベースで100社を超える企業の代表に就いている。代表を務める企業は北海道から九州まで全国にまたがる。だが、再生どころか事業停止や倒産した企業もかなりあることがわかった。
 そのA氏が今年1月18日、国税徴収法違反の容疑で札幌地検に逮捕された。
 経営不振に陥った企業の代表取締役にA氏が就任すると、その企業は資金ショートや他地域への本社移転が目立つ。取引先には、「お金がないので取立に来ても支払いできません。破産を申し立てたければ勝手に申し立ててください」旨の開き直った通知を出す。
 逮捕前にTSR情報部はA氏に取材を申し込んだが、「回答しない」と取材拒否の姿勢をとり続けていた。

 A氏のある事件の代理人は、「(A氏逮捕の)詳細を把握していない」とコメント。そこでA氏が代表を務める都内の雑居ビルに入居する会社を訪問したが、実態はなかった。
 A氏が過去代表を務めた一般社団法人の現在の関係者は、「(一般社団法人は)登記しただけで事業はしていなかった」と赤裸々に話した。A氏の関与については、「ここにいる人は誰もわからない」と、A氏の存在を消し去りたいような口ぶりだった。

◇A氏が代表に就任した企業のトラブル
 A氏などを相手取り損害賠償を請求した企業の訴訟記録や関係者への取材で、訴訟の争点が「会社の財産隠蔽」であることが浮かび上がってくる。原告側は、「A氏は代表に就任後、全金融機関に今後一切返済しないと支払停止を宣言した。一方、会社の預金を隠匿する不法行為に及んだ」と話す。預金を別の口座に移したとも指摘する。
 A氏ら被告側は「預金の移動指示はしていないし、移動したことも知らない」と容疑を否定。棄却を求めて現在も裁判は継続中だ。
 このような中、札幌地検特別刑事部が1月18日、A氏ら4名を逮捕した。
 北海道に本社を構えていたY社。A氏は2017年7月に代表に就任したが、7カ月後の2018年2月、Y社は札幌市から千葉県に本社移転した。
 札幌地検の逮捕容疑は、Y社は「消費税等を滞納」していたが、A氏らが虚偽の債権譲渡通知を取引先に郵送し、Y社の売掛金を別会社に振り込ませて消費税等の滞納処分の執行を免れたことだという。

 A氏が役員に就任した企業が本社を移転する理由について「税務当局や債権者のかく乱が狙い」と指摘する人がいる。他地区への本社移転は事実把握が難しくなるためだ。
 中小企業の事業再生は社会的意義が大きく、A氏の手腕に期待する人はいる。これに対し、回収不能が生じた債権者の多くは悔しさを込めてA氏を「整理屋」と断罪する。
 事業再生は、再生後の事業発展のために金融機関や債権者の信頼と協力が欠かせない。A氏を受け入れる企業の多さは、事業再生を望む企業に核となる人材や支援者が少ないことの反映でもある。

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