
中国の習近平国家主席が包括的な台湾政策を提示した年初の大演説は、敵に塩を送ったようだ。国家統一問題をめぐって、「一つの中国」を認めない蔡英文台湾総統に圧力をかけようとしたが、その主張があまりに一方的だったことから、台湾の親中派までが混乱。中国側の意図とは逆に、昨年11月の統一地方選で野党・国民党に惨敗した民進党政権の威信回復を手助けする結果となった。
「一国二制度」反対7割=台湾当局が世論調査
「事実と正反対だ」。在京の台湾当局者は1月後半に開かれた日本メディア関係の懇談で、習氏が先の演説で台湾側に対話を呼び掛け、柔軟路線を示したという見方を強く否定し、「一つの中国」受け入れを迫った習氏に詳しく反論する文書を出席者全員に配布した。統一問題で民進党政権が中国側に反論するのはいつものことだが、今回は特に積極的だ。
この演説は1月2日、中国本土との平和的統一を台湾に呼び掛けた「台湾同胞に告げる書」の発表40周年を記念する会議で行われた。習氏は演説で「両岸(中台)各党・各界」の対話を呼び掛けたものの、同時に、台湾に対する武力行使の可能性に言及。習氏が今の台湾当局を対話の相手にしなかったこともあり、蔡総統は即日、呼び掛けを拒否した。
米国家安全保障会議(NSC)報道官は中国に対し、台湾への威圧をやめ、「民主的に選ばれた台湾の政権」との対話を再開するよう要求して、蔡総統を擁護。また、米国で中国法研究の第一人者として知られるジェローム・コーエン・ニューヨーク大学教授ら欧米などの識者44人も公開書簡で、台湾に対する中国の威嚇を批判した。
欧州でも各国政府・議会から同様の声が上がっている。欧米ではこのところ、反中・親台の傾向が強まっているが、習氏の演説は火に油を注いだ形になった。
また、習氏が演説で、台湾に適用する一国二制度の具体案検討と、中台が「一つの中国」の原則を確認したとされる「92年合意」を基礎とする対話を同時に提起したことも、台湾側で物議を醸した。
親中的な国民党は民進党と異なり、92年合意の存在を認めて順守を主張してきたものの、「一つの中国」の意味は中台がそれぞれ解釈するとして、中国側の一国二制度は受け入れていない。しかし、習氏の今回の演説を受け、民進党から「中国側の言う92年合意はすなわち、一国二制度であることがはっきりした」と指摘され、国民党の呉敦義主席らは「92年合意と一国二制度は関係ない」と火消しに追われた。
中国政府も同じように釈明しているが、最高指導者が同じ演説の同じ文脈の中でこの二つの概念に言及したのは事実で、台湾側には「台湾は香港と同じように併合するしかないという習政権の本音が出たのではないか」との疑念が残る。
故蒋介石総統のひ孫(故蒋経国総統の孫)で、血筋から言えば「ミスター国民党」のような存在である蒋万安立法委員(国会議員)までが一時、習氏は92年合意イコール一国二制度と定義したとの認識を示し、「受け入れられない」と公言するなど、台湾の親中派では混乱が起きている。
1月中旬に実施された台湾のある世論調査では、年金削減への反発などから18年末まで人気が低迷していた蔡総統の支持率は34.5%と前月から約10ポイントも上昇した。関係各国・地域の有力メディアでは「蔡総統は中国国家主席という予想外の援軍を得た」(1月19日の米紙ニューヨーク・タイムズ)、「台湾との統一に関する習氏の強硬な演説は裏目に出た」(同31日の香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト)といった論評が相次いでいる。
(外信部長・西村哲也)
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