ここから本文です

【巨人】得られぬ信頼、眠れぬ夜 小林誠司が苦境にも立ち向かっていく理由

2/9(土) 11:07配信

スポーツ報知

 「ぐわぁぁ!!」 叫び声が響いた。男はその端正なマスクを大きくゆがめて、バーベルスクワットを続けた。
 2019年1月、大阪府内のウェートトレーニングルーム。巨人の小林誠司捕手(29)は、バーベルを下ろすと、よろめくように床に座り込んだ。額から流れる汗が、床にぽとりと落ちた。

【写真】参拝を終えた小林誠司(左)と丸佳浩

 「今まで通りじゃあかんな、と」。一心不乱になりふり構わず20秒間一気にこぎきったバイクから、崩れ落ちてあお向けに倒れ込んだ。肩で息をして、腕で目を覆った。
 「やばい…」言葉は短くしか出てこない。見ている方もしんどくなるほど、肉体をいじめ抜いていた。誰もが認めてくれる存在になりたい―。その思いが、小林を動かしていた。
 新たなシーズンが始まる。「不安と恐怖しかない」そう言って、目線を下げた。
 プロ3年目の16年シーズンから毎年100試合以上でマスクをかぶってきた。
昨年も143試合中119試合に捕手として出場。セ・リーグでは3年連続となる、盗塁阻止率トップの座をまもった。

 これは巨人では“栄光のV3時代”の正捕手・森昌彦が1960~62年に達成して以来の偉業。同い年のエース・菅野智之とのコンビは「スガコバ」と呼ばれ、17年には最優秀バッテリー賞も受賞している。
 甘いマスクもあって、ファンからの人気も絶大。約束された立場があってもおかしくない。それでも、小林には危機感しかなかった。
 「今年は、じゃない。毎年毎年、色んなキャッチャーが入ってくるし」
 チームの捕手補強が止まらない。17年オフには“即戦力”の期待がかかる社会人出身の2捕手をドラフト上位で獲得。そしてこのオフにはフリーエージェント(FA)で西武から炭谷銀仁朗がチームに入った。

 13年のドラフト1位指名で自身を獲得してくれた当時の指揮官・原辰徳氏が3度目の監督に就任したばかり。小林にとって追い風になるどころか、その原監督が自ら炭谷を口説き落として獲得した。
 炭谷は小林の2歳年上。若手の台頭で18年シーズンは47試合の出場にとどまったが、12、14、16年と3度のパ・リーグ盗塁阻止率トップに君臨。ゴールデン・グラブ賞に12、15年と2度輝き、捕手として抜群の試合経験を誇る。
 堅守強肩がウリなのは、小林と同じ部分。年俸6000万円の小林に対し、炭谷には年俸1億5000万円の3年契約が準備された(金額は推定)。球団の期待値は言わずもがな、だ。
 「自分自身に対して、やっぱり情けないな、って言うか…」。
 トレーニング場内は、1月の外気とは無縁。動いた体の熱気も手伝って温かい。その中の1つの器具にちょこんと腰掛けて、心ここにあらずという感じで遠くを見つめながら話し出した。
 「自分が出て、勝ててない。優勝してない。そういう勝負の世界だから仕方ない、って部分と自分自身が情けない」。

1/4ページ

最終更新:2/9(土) 11:07
スポーツ報知

あなたにおすすめの記事