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五輪渋滞、立ちはだかる首都高 値上げ案に反発の声

2/10(日) 20:52配信

産経新聞

 2020年東京五輪・パラリンピックの交通輸送計画をめぐり、競技会場が集中する都心部の首都高速道路で期間中、新たな通行量抑制策が行われる可能性が出てきた。予測より道路が混雑する恐れがあるためで、大会組織委員会などは3つの渋滞緩和策を提案。このうち、高速料金を調整する「ロードプライシング」が「最も現実的」との指摘がある。しかし、安直な料金値上げには反発も予想され、検討過程に携わる専門家は「国民の理解をどう得ていくかを考えなくてはならない」と慎重な姿勢を示している。

 期間中の交通輸送対策は暑さ対策と並ぶ二大課題の一つ。東京大会には競技会場が集中する「オリンピックパーク」がないため選手や観客の輸送ルートが複雑になるうえ、都心部には流通拠点や港湾施設が集積。経済活動の維持と大会の円滑運営の両立を図るため、他大会には見られない特有の難題がある。

 このため、都や組織委などは各企業や運輸業界に時差出勤や配送時間の変更などの協力を要請。全体の交通量を抑制し、分散する「交通需要マネジメント」(TDM)を実施し、全体の交通量を平日から15%削減する計画だったが、検証の結果、首都高ではTDMの効きが悪いことが判明した。

 選手村から新国立競技場までの移動時間は、五輪招致段階に想定した10分から五輪では30分、パラリンピックでは40分かかることも分かった。

 このため、関係団体や輸送対策の専門家が集まった6日の交通輸送技術検討会では、追加施策が必要との認識で一致。(1)ロードプライシング(2)ナンバープレートの末尾数字に応じた流入規制(3)複数人員が乗車する車両の専用レーン設置-の3案が提示された。今後、国と首都高側がさまざまなパターンを想定してシミュレーションを行い、どの案が適切かを検討していくことにした。

 検討会のメンバーの交通対策専門家の一人は取材に、ナンバー規制や専用レーン設置の方法は「(通行車両の)確認を行う作業があり、現実的ではない」と指摘。ロードプライシング案の採用を推している。

 他の会合出席者もロードプライシングについて、自動料金収受システム(ETC)の機器が区間に設置されていることから「最も対応が簡単だ」と説明。一部で現行の料金の500~3千円の上乗せ案が浮上しているが、「ルートや時間などで料金を上げ下げする必要がある」と語り、夜間帯は逆に値下げする可能性があることを示唆した。

 しかし、実際に抑制策を採用したところで、渋滞緩和につながるかは不透明だ。「なぜ利用者に負担を転嫁するのか」といった批判が噴出する可能性があるほか、ある運輸業界幹部も「高速道を規制したら、今度は一般道が混雑する。いたちごっこだ」と対策を疑問視する。

 都などが組織した輸送連絡調整会議の委員の一人は「ナンバー規制と専用レーン設置案は取り締まりは困難で、警察が嫌がるのではないか。五輪のために協力しても抜け駆けする者が出てくる恐れがあり、正直者が損をする仕組みではやる意味がない」と話す。策定に向け曲折がありそうだ。

(森本利優、高力悠一朗)

■交通政策に詳しい安部誠治・関西大教授の話

 「海外で行われているロードプライシングは元々、自家用車の交通量抑制を目的としており、対象範囲を決めて高速・一般道の区別なくエリア全体で実施するもの。東京はタクシーやトラック、業務目的の乗用車が多く、効果は限定的だろう。首都高だけに限っていえば、バスなど複数人が乗車する車両を優先的に通行させる方法が効果的だと思う。いずれにせよ、五輪期間中に何らかの交通規制は必要なのは確かで、総合的な観点から有効な渋滞緩和策を考えてほしい」

最終更新:2/10(日) 23:53
産経新聞

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