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中華娯楽週報 第45回:模倣はイノベーションの母?中国の一大カルチャー「山寨文化」への案内(中)

2/11(月) 13:02配信

IGN JAPAN

中華娯楽週報 第45回:模倣はイノベーションの母?中国の一大カルチャー「山寨文化」への案内(中) - Part 1

こんにちは!「香港ガリ勉眼鏡っ娘ゲーマー」こと歐陽です。中国・香港・台湾を含む中華圏のゲームや映画、アニメなどの情報を発信し、社会事情を分析するコラム「中華娯楽週報」。先週は、現代中国社会を理解するのに知らなければならない「山寨(さんさい)文化」について、初歩的な紹介をした。山寨といえば、『水滸伝』の梁山泊(りょうざんぱく)をイメージする人も多いが、今の中国における山寨は、おおよそ模倣行為を意味する。その語源をめぐる諸説については、先週の上篇を参照されたい。前回は、まずIGN JAPANのメインテーマであるゲームから入り、いくつかの古典的な山寨作品を紹介した。詳細は上篇を読んでほしいが、ここではまず簡単に振り返ってみよう。
中華圏における「山寨遊戯(山寨ゲーム)」は、最初は台湾から始まり、やがて中華圏全体に広まった。上篇では数々の台湾製のファミコン版『街頭覇王II(ストリートファイターII。略称は“街覇”)』を取り上げ、アーケードゲームやスーパーファミコンのソフトとしての正規版「街覇」と同時に、ファミコン版の「山寨街覇」も中華圏で一世を風靡したことを紹介。一方、中国大陸では「小覇王」というファミコン互換機をはじめ、多くの山寨ゲーム機が量産されてきた。「山寨街覇」にしても、山寨ゲーム機にしても、品質が劣悪なものが多く、ジャッキー・チェンをCMに起用し、PCとファミコンを合体させた「小覇王学習機」など、一部の例外を除いて洗練されていない。

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しかし、山寨から事業を始めて、やがて大成する例もあり、例えば海外で「海賊版ファミコンのインチキメーカー」と思われてきた小覇王のメーカーは、2018年夏にハイエンドコンソール市場への参入を発表し、AMD製SoCを搭載したデュアルブートのゲーム機「小覇王 Z+」――定価も4998人民元(約8万3000円)とハイエンドな設定――をアナウンスして、世界を驚かせた。また、かつての「山寨街覇」と違って、近年の中国製ゲームも、山寨と言われながら高評価を獲得した作品が多い。本家を山寨することから入って、やがて自分が新たな本家となり、一家を成すというのは、多くの中国人に共有されるチャイニーズ・ドリームである。そして山寨が一般市民に深く広く浸透した文化となり、山寨文化はいまや中国の一大カルチャーなのだ。今週の中篇は、前回に引き続き、21世紀の現代山寨遊戯の光と影を概観する。そして来週の下篇では、さらに山寨文化を掘り下げ、山寨を中心に形成された市民カルチャーを素描していく。
ここで一度、先週に紹介されたいくつかの重要な概念を復習しておこう。

「盜版(とうばん)/翻版(ほんばん)」:無許可の複製品。単純なコピーであり、創作性は皆無。法律上ではブラック。日本語の「海賊版」は大体これに該当する。
「抄襲(しょうしゅう)」:独創性の乏しい剽窃。法律上ではブラックに近いグレー。
「山寨(さんさい)」:模倣品・模倣行為全般。抄襲も含むが、独自の意匠を加えたものも多い。法律上ではブラックに近いものからホワイトのものまである。
「正版(せいばん)」:正式なライセンスによる正規版。法律上ではホワイト。あくまで著作権法上の分類で、オリジナリティがグレーな山寨に勝るとは限らず、またホワイトの山寨も含む。

   
山寨とは、必ずしも違法なものではなく、レベルの低い「抄襲」からクリエイティビティに富む作品、正版として販売できるものまで、幅広い範囲となっている。


『荒野行動』や『アズレン』――山寨遊戯のサクセス・ストーリー
中国では、とにかく国内でヒットしたゲームがあれば、その山寨が必ず大量に出現すると断言しても良いほど、山寨遊戯が盛んである。最近話題になったトピックとして、始めに『ディアブロ』フランチャイズの実例を見てみよう。昨年11月のBlizzCon 2018にて、ブリザード・エンターテイメントは中国のゲーム大手、ネットイース(網易)との共同開発によるモバイルタイトル『ディアブロ イモータル』をアナウンスした。『ディアブロ4』を待ち望んだファンの反感を買い、業界内でも本作が「巨大なおとり商法」と批判されているが、実はこのゲームこそ、本家の山寨から自ら本家になった代表例のひとつである 。 ネットイースは以前、複数の『ディアブロ』のクローン的なゲームを作っている 。 2016年、ネットイースは

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最終更新:2/11(月) 13:02
IGN JAPAN

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