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坂本冬美「歌は体の一部」生活の中から生まれる演歌の魅力:インタビュー

2/11(月) 7:01配信

MusicVoice

“猪俣メロディ”を届けたい

――昨年12月5日に『ENKAIII ~偲歌~』がリリースされました。冬美さんの師匠である猪俣公章先生の生誕80年、没後25年ということで、今回のテーマが猪俣先生の楽曲をフィーチャーされているんですよね。

 そうなんです。ちょうど節目に当たるということもあって、この作品を作らせていただきました。

――確かこの『ENKA』シリーズは「最低でも3作は続けたい」と過去に仰っていたので、まずは目標はクリアしましたね。このお話が持ち上がった時はどのような心境でしたか。

 ふふ(笑)。何とか3作目が出来て良かったです。このお話がきたときは素直に嬉しかったです。これで猪俣先生の歌を改めて知って下さる方もいらっしゃるでしょうし、忘れられるといったら変な話しですけど、作曲家の先生というのは歌手とは違って表には出ないじゃないですか? テロップでは出てもなかなかクローズアップされないので。こうやって作品を出すことで先生にも喜んで頂けると思いますし、先生を知らない世代の方にも知って頂けるということは、こんなに嬉しいことはないです。

――若い世代の方にも届けたいという想いは強いですか。

 “猪俣メロディ”を届けたいという想いはやっぱり強いです。私のファンの中にも20代の方がいまして、私がカバーすることによって「曲を知った」と言ってくれる方も多いんです。おこがましいかもしれませんが、演歌というものを取っつきにくいと思われている方へのきっかけになってもらえたら嬉しいですし、そこからオリジナルを聴いて頂けたらなお嬉しいです。やっぱりオリジナルに勝るものはないですからね。

――数多くある曲の中からの選曲はどのようなものだったのでしょうか。

 まず猪俣先生の代表曲は収録したいと思いました。以前にも猪俣先生のカバーアルバムはリリースさせて頂いていて、かぶる曲もあるのですが、どうしても外せなくて。でも、少しずつ変えたいという気持ちもありました。ローマ字で「ENKA」ということでそれに合ったアレンジにしたい、それによって新たな魅力を出せる曲もあると感じていました。そして、歌ってみてディレクターさんが「この曲が良いんじゃないか」と話しながら選曲させていただきました。

――その中で「火の国の女」はセルフカバーなのですが、ご自身の中で重要な曲に上げていたということもあり、外せない1曲ですよね。

 自分の作品から選曲するとなった時に、どの曲がこの『ENKA』シリーズには合うかなと思いました。これまでのパートI、パートIIでも、1曲だけロックアレンジにした曲を収録していたのですが、猪俣先生の曲はロックアレンジに合う曲はなかなかなくて、意外と難しいなと感じていました。でも、もしかしたら「火の国の女」だったら合うんじゃないかと思い選びました。

――この「火の国の女」は冬美さんがご自身の中で代表曲に選ぶほど、お気に入りの楽曲ですが、今回歌うに当たってどのようなところをこだわりましたか。

 あまり難しく考えなかったです。とはいえロックサウンドになったからといって、あまり跳ねたような歌い方というのは違和感が出てくると思います。他の曲はアレンジに寄り添った歌い方を考えて歌唱させていただきましたが、「火の国の女」は音を感じながら歌えばいいかなと思いました。この曲の本質はどんなアレンジになっても変わらない、変えようがないとでも言いましょうか。私のデビュー曲「あばれ太鼓」もそうなんですが、他の曲に比べると猪俣先生らしくない曲なんです。猪俣先生が頑張って演歌らしく作って下さった楽曲で、“ド演歌”と呼ばれるものに洋服を着せるというのは、とても難しいと思いました。

――この『ENKA』シリーズは洋服を着せてみるというのもコンセプトのひとつでしたけど、簡単なことではなかったんですね。その演歌というものは、冬美さんはどのように捉えてらっしゃいますか。

 よく聞かれる質問ではあるのですが、すごく答えるのが難しいんです。演歌は生活の中から生まれているものが多くて、身近に起きていることが歌になっているなと感じています。その中で応援歌もあり男歌、女歌もあり、義理人情を歌ったものもあります。

――その身近にあるものからできた曲を、歌手がその主人公を演じながら歌い上げる、それが演歌なのかも知れないですね。

 演じますね。石川さゆりさんの「天城越え」もそうですよね。もちろん、それらを経験されて歌う方もいらっしゃると思いますけど、演じることが出来る歌、演じやすい歌というのもあります。

――「火の国の女」は女歌というものになるんですよね? 女歌は人生経験がすごく重要になるとお聞きしたことがあります。

 そうですね。女性目線で歌われた歌を女歌と言います。どんなに曲調にパンチがあったとしても、歌詞が女性目線で歌われていたら女歌なんです。確かに女歌は人生経験があった方が説得力はでますね。でも、若くして歌わなければならない時は、想像を膨らまして歌うこともあります。例えば不倫の歌を歌うということで不倫をした方が良いかといったら、それは想像でも良いと思います。経験した方が良い歌が歌えるかも知れませんが、逆に重くなり過ぎてしまう可能性もありますから。

――一概に経験すれば良いというわけではないんですね。

 俯瞰(ふかん)して見なければいけないとよく言われます。演じてはいるし、どっぷりとその世界に入ってはいるけど、聴いてくださる方に届かなければ意味がないので、余白みたいなものを聴いてくださる方に埋めてもらう感覚なんです。

――私は昨年、冬美さんの歌を聴かせて頂いて、演歌にものすごく興味が湧きまして、若い世代にも特に生で聴いてもらえたら嬉しいと感じているのですが、冬美さんは演歌を広げていくということについて、どのように考えていらっしゃいますか。

 ポップス系の方たちですと、ツアーというものがあって一定期間コンサートをやりますけど、演歌は様々で、貸切のコンサートもありますし、興行的にも宣伝する場所も違います。テレビに出て新曲が歌えるかといったら難しい部分もありますので。

――そうなるとキャンペーンでレコードショップなどインストアイベントとかが重要になりますね。

 キャンペーンは演歌歌手、とっては大切ですが、私は最近あまりやってなくて、昨年は「熊野路へ」で一回だけでしたね。なぜ、私がキャンペーンをあまりやらないかというと、正直コンサートの興行に影響が出ないようにという事もあるんです。キャンペーンをやりたくないわけではないんですよ(笑)。テレビで新曲を歌わせて頂けるのはNHKさんの『ごごウタ』や、あとはBSの番組ぐらいで。地上波で一回歌えたとしても、それで浸透させるのは難しいんです。

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最終更新:2/11(月) 7:01
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