ここから本文です

進学か就職か…熊本地震3年、再び岐路に立つ16歳

2/11(月) 8:04配信

西日本新聞

 受験シーズンもいよいよ本番。2016年4月の熊本地震は、被災地の受験生にとっても試練だった。南阿蘇村次世代定住課の佐藤桂輔係長(43)の長女さくらさん(16)もその一人。当時中学3年生だったさくらさんは、熊本市の県立高校に進学。2年生になった今は生物部の部長を務め、部員一丸で取り組んだ昆虫の生態研究が昨年末、全国コンクール九州大会で最優秀賞に輝いた。家族は娘の成長に、少しずつ復興が進む村の姿を重ねている。

【写真】熊本城石垣から400年前の人物画 地震による崩落で発見

 両親や祖母ら計10人で暮らす佐藤さん一家の自宅は、村役場近くの久木野地区にある。本震の日、桂輔さんと妻由美子さん(43)、娘3人は1、2階に分かれて寝ていて「ベッドが跳び上がった」。地震直後、夫妻は一緒に寝ていた末娘に覆いかぶさり、隣室から来たさくらさんに「大丈夫?」と声を掛けられ、われに返った。

 桂輔さんは家族の無事を確認後、履物を配り、車に誘導した。消防団員だったため、集落を回って救助に当たった。ガラス片で足をけがした人もいた。

 自宅は一部損壊で、家族はしばらく敷地内で車中泊。桂輔さんはそれから約1カ月間、分庁舎の持ち場で業務に追われ、家に帰れない日が続いた。

 さくらさんが通っていた南阿蘇中は当時、統合校として発足したばかり。授業は5月の連休明けから再開されたが、避難所となった体育館から通う級友も少なくなかった。

 「地震を言い訳にせず、前を向こう。君たちは受験生なんだから」。担任の先生からはそう言われた。

支援物資として届けられた受験参考書「ありがたかった」

 不安と焦りの中、先生たちが放課後、苦手の英語などを個別に指導してくれた。支援物資として学校に届けられた受験参考書も「ありがたかった」。

 「受験は団体戦だからな」。担任の言葉に、生徒同士の学び合い、教え合いの輪も広がった。

 志望校は三者面談で絞り込まれていった。「行きたい所に行きなさい」と言う桂輔さんに、さくらさんは「将来、公務員になりたい」と話した。桂輔さんが中学入学祝いに贈った冊子「日本の仕事」を参考に、そう決めたという。

 涙があふれた卒業式の後、県立高校の合格発表。さくらさんは由美子さんと一緒に高校に行き、自身の受験番号を見つけて小躍りしたが、番号がなかった同級生もおり「素直に喜べなかった」。酷な明暗だった。

1/2ページ

最終更新:2/11(月) 8:04
西日本新聞

あなたにおすすめの記事