ここから本文です

引退のフィギュアスケーター「町田樹」転んだら、立ち上がる。この日のためだけに作ったプログラム

2/11(月) 22:53配信

テレビ東京スポーツ

そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない

第二の人生を歩み始めた一流アスリート。

彼はもうスケート靴を履かない。町田樹(まちだたつき)はリンクを降りて研究者へと転職した。男28歳、決意の転職。世間ではありふれた話かもしれないが、彼の場合は肩書きが凄すぎる。オリンピック経験者で世界選手権銀メダル、アイスショーの演者としても大人気だった。それなのに、町田樹はもうフィギュアスケートは滑らないと決めた。

【動画】石川佳純・浅田真央が初共演!石川「憧れの存在」浅田「自分の思う夢を叶えてもらいたい」

思えば、競技との別れも突然だった。

群雄割拠の代表争いを勝ち抜きソチオリンピックへ出場し、5位入賞を果たす。続く世界選手権では羽生結弦を脅かす銀メダル。しかし…キャリアの絶頂に立ちながら24歳で競技を引退。その後、舞台をアイスショーに移した。

そしてついにショーともお別れになる。舞台はカーニバルオンアイス。プログラムの内容を聞いて耳を疑った。なんと9分35秒。一般的なプログラムの三倍以上というとてつもない長さ。体の負担はもちろん、振り付けを考え、覚えるのも大変。この前代未聞のプログラムを町田は「人間の条件」と名付けた。

「人間の条件」は彼のスケート人生を綴る物語でもあった。最初からもてはやされたわけではない。つまずきや伸び悩みも経験してきた。

フィギュアスケートから教わったのは、転んではいけないということではない。転んだら、立ち上がるその姿勢だった。それを知る自分が何もしないのか?

その問い掛けが、研究者という答えを導いた。愛するフィギュアの未来のために。二兎を追ってどちらも中途半端にはしたくない。だから引退。もうリンクには戻らない。

ショー当日も練習を続けたが通し練習はできず。ぶっつけ本番で9分越えの大作に挑む。だがその前にもう一仕事が待っていた。同じ日に競技の大会もあり、そこにゲストとして出演。5分半の新作を披露した。スケジュールの関係で引退当日に、まさかの2公演。

そして幕を開けたカーニバルオンアイス。町田は曲を掛けながら振り付けの確認。9分35秒を狭い廊下で演じ切った。メイクをするのもこれが最後。明日からは研究者という別の顔になる。三歳から滑り始めて25年。この演技が終った時、町田樹というフィギュアスケーターはいなくなる。人間の条件。リンクに残る仲間たちに町田が託したメッセージ。

計5本のジャンプはあえて演技の後半に固めた。開始から5分30秒、疲れ切った足で、最初のジャンプ。大きく転倒。しかしすぐに立ち上がる。つまずいたら、立ち上がる。それが人間の条件。町田樹のスケート人生。

どんなに苦しい時でも歩みは止めずにここまで来た。見せたかったのは技術ではない。生きること…生き抜くこと…その尊さを表したかった。一期一会、この日のためだけに作ったプログラム。

これからはショースケーターの高収入を捨て、つつましい研究者になる。

後悔は、みじんもない。

スケート靴を革靴に履き替えた町田樹は今でもフィギュアのことを考え続けている。

テレビ東京/追跡LIVE!SPORTSウォッチャー

あなたにおすすめの記事