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「バイトテロ」は訴えても抑止できない、3つの理由

2/12(火) 8:27配信

ITmedia ビジネスオンライン

低賃金は「バイトテロ」のリスク要因

 「出た! 何かとつけて賃金上げろ、賃金上げろ病。人として最低限のルールを守られないバカどもが問題であって、賃金など一切関係ない!」と怒りでどうにかなってしまう方もいるかもしれないが、賃金を上げるだけでも、「バイトテロ」のリスクはかなり軽減できる。

 学生がバイトを選択する際に重視するのが、「勤務日数・時間・シフト変更・休みの融通がきくこと」とともに「給与が高いこと」というのは、「anレポート」の調査でも明らかになっている。つまり、給与を上げれば、それだけ人が集まるので、企業の採用活動と同様に優秀な若者に働いてもらえるということなのだ。

 逆に言えば、給与が低いと、優秀な学生バイトは集まらないということでもある。さりとて、店は人手不足なので誰かを雇わないといけない。選り好みはしてられないので、面接時に言動がおかしな者、素行の悪そうな者でもサクサクと採用をしなくてはいけないのだ。

 そういう危ない若者でもとにかく働いてくれるだけでもありがたいので、立ち振る舞いや社会常識などを口うるさいことは言えない。辞められたら明日からどうシフトを回せばいいのかという心配が先にきてしまうからだ。

 つまり、低賃金は「バイトテロ」のリスクファクターとなっているのだ。

 6年前のバカッター騒動から現在の「不適切動画」などを振り返れば、世間の注目を集めてきたのは、ほとんどが外食、コンビニ、宅配など、学生たちにとっては、仕事が山ほどあるわりには時給が安いバイト先が多い。

 一方、これらのバイト先よりも比較的高い時給であるホテルや結婚式場での配膳係、高額バイトの代名詞である交通量調査、さらにキャバクラやスナックなどの水商売ではこれまで大きな「バイトテロ」は起きていない。

 なぜか低賃金・低待遇で働く若者たちだけが、「悪ふざけ」をするのだ。

「バイトテロ」が一部の業界で続発している原因

 そう考えていくと、低賃金・低待遇ゆえに、「いつ辞めてもいい」という思いが後先を考えない愚かな行動の背中を押している可能性はないか。

 基本的にコンビニや外食は、若者を「使い捨ての労働力」として使ってきた。ある日、突然辞めてしまう無責任な人間を想定して、応募がきたら即採用、辞めたら補給というサイクルで回してきた。こういうところで働く若者は自分のことをどう思うか。

 「代わりはいくらでもいる使い捨ての労働力」だと思うだろう。

 「使い捨て」なので、仕事に対する責任感も誇りも生まれない。だから、教室の悪ふざけのノリで、バカ動画を撮ってしまうのだ。

 では、どうすれば彼らに「使い捨て」ではないと分からせるのかというと、彼らがバイトに求めているものしかない。そう、シフトを優遇したり時給を上げたりするのだ。

 「いや、働くことは金だけじゃない。大切なのはやりがいやコミュニケーションだ」とか言う人がいるが、賃金や待遇を改善しないで、労働者に精神論を押し付けて不満を封じ込める職場を、世間では「ブラック企業」と呼ぶ。

 ちなみに、今回の問題があったと言われる「くら寿司」の店舗のバイト募集を、Webサイトで確認したら「時給936円以上」だった。大阪府の最低賃金は936円なので、ここから技能や経験でグングン時給アップするのだろうが、学生の感覚からすれば、決して「高額バイト」ではなかったはずだ。

 これまで日本企業の多くは「賃金は低く、労働者の質は高く」を合言葉に右肩上がりの成長を遂げてきた。そのビジネスモデルが限界にきて、あちこちで崩壊しているのだ。

 この日本を支える「低賃金労働者」がたちゆかなくなっているのは、明らかに深刻な人権問題を引き起こす外国人労働者という移民政策へとゴリ押しでかじを切ったことからも明白だ。

 「バイトテロ」は許されることではない。徹底的に断罪すべきだ。そう訴える企業側の気持ちもよく分かるが、法的措置の前に、なぜこのような「テロ」が一部の業界で続発しているのかという原因も、考えるべきではないのか。

(窪田順生)

ITmedia ビジネスオンライン

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