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対中経済外交と日米欧連携 新ルール構築を主導せよ

2/12(火) 11:00配信

産経新聞

 丸2年を超えたトランプ米政権ではっきりしたのは「新冷戦」と評される厳しい対中認識である。民主主義や市場経済、人権などをないがしろにし、経済、技術、軍事などあらゆる面で覇権を追求する中国の強国路線にノーを突きつける。これは与野党を問わない米国の総意だろう。(論説副委員長 長谷川秀行)

 国際社会に地殻変動をもたらす覇権争いだ。どう対応するかは、安倍晋三政権が明確にすべき外交の最優先課題である。もちろん、関税で脅して要求を通そうとする米国の手法が日本などの同盟国にも向かっている現実はある。日米協議で理不尽な数量制限などが迫られる懸念もある。

 それでも、中国が眼前の脅威となっている日本にとっては、米国の攻勢で中国に真の変革がもたらされるかどうかは重大な意味を持つ。同盟国である以上、対立よりも連携を深めるよう努めるのは当然だ。対中政策では米国と歩調を合わせ、この機を逃さず包囲網を築く必要がある。

 では、日本はどう動くべきか。政府は中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)などを政府調達の対象から事実上排除した。技術窃取などの疑いがある中国企業に、各国と足並みをそろえて規制を強化するのは妥当だ。

 同時に、米国が揺さぶる既存の国際秩序の再構築を主導したい。中国の不公正貿易や知的財産権侵害、デジタル保護主義などを封じるルール作りは、米中協議のいかんを問わず、自由貿易を推進するために必要な作業である。

 その際に重要なのは、欧州とともに米国に連携を促すことだ。来日したドイツのメルケル首相は中国の覇権主義的な動きに懸念を示したが、もともと欧州では、トランプ政権発足前から中国への警戒感が強まりつつあった。

 だが、トランプ政権後に米欧関係が悪化し、日米欧の連携機運は一気にしぼんだ。対中共闘を図ろうと、一昨年暮れに日本の呼びかけで始まった日米欧の三極貿易大臣会合も、当初は結束どころか米欧の亀裂ばかりが際立った。

 そんな最悪の状況も昨年後半以降は幾分変化したようである。米国の主たる標的が中国に絞られてきたほか、米国が日欧の自動車に対する高関税発動をいったん見送ったのも大きい。最近は三極会合などの場で、新たなルール作りの議論が活発化している。

 米国には世界貿易機関(WTO)体制が中国の不当な振る舞いを効果的に抑えていないとの不満がある。デジタル分野など新たな課題も多く、WTOは時代遅れだという米国の問題意識は正しい。

 だからといって米国がWTOに完全に背を向けているわけではなく、むしろ改革には前向きである。昨年末の20カ国・地域(G20)首脳会議の首脳宣言に「WTO改革を支持」と記されたのも米国の意向の反映だ。中国の動きを封じることが眼目である。

 例えば三極会合で議論されている問題の一つに、中国が国有企業などに出す過剰な補助金がある。補助金を受けた企業が安値で輸出攻勢をかけて世界の鉄鋼業界が打撃を受けたこともあった。米中協議でも米国が批判している。

 だが、WTOはこの問題に対応できていない。補助金を出す際にはWTOに通報する義務があるのに、違反を取り締まる手立てがないため中国は義務を守らず、補助金の実態を隠してきたのである。

 昨秋には、日米欧が中心となって罰則を盛り込んだ改革案をWTOに出した。WTOの補助金規定を厳格化する議論も三極で行っている。こうした改革が実現しなければ中国に補助金問題を根本的に改めさせるのは難しい。

 一方、日米欧などWTO有志国は1月、電子商取引分野のルール作りの交渉を始めることで合意した。国境をまたぐデータ移動が焦点だ。中国は外国企業が得た顧客情報の国外持ち出しを封じるなどデータを囲い込もうとする。デジタル覇権と絡む問題だけに日米欧で足並みをそろえられるよう知恵を絞る必要がある。

 WTOをめぐっては紛争解決手続きの上級審に当たる上級委員会の再任人事を米国が拒否している問題もある。上級委の権限拡大に不満を抱く米国と、これを是とするEUなどの溝は深いが、欠員で上級委が機能不全に陥る事態は避けたい。打開への協議を加速すべきである。

 安倍首相はスイス東部ダボスの演説で「ルールに基づいた国際秩序の強化に打ち込みたい」と語った。既存秩序が揺らいでいる今はむしろ、その限界を再認識し、新たなルールを確立する好機ととらえたい。日本が追求すべきは、そのための大胆な構想と具体化に向けた行動である。

最終更新:2/12(火) 11:00
産経新聞

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