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「漫画家と二次創作コミュニティは近くにいる」伝説の漫画家、竹宮惠子さんも「違法DL拡大」に反対

2/12(火) 23:08配信

弁護士ドットコム

違法アップロードされた漫画などの海賊版対策として、違法ダウンロードの対象を著作物全般に広げる著作権法改正が検討されている。しかし、ネット利用や二次創作活動への萎縮効果を招くのではないかといった声のほか、「そもそも海賊版対策として意味がない」といった専門家の批判もあがっている。こうした状況のもと、この問題について考える院内集会が2月8日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。

集会で、ひときわ注目をあつめたのが、『風と木の詩』『地球へ…』などの作品で知られる漫画家、竹宮惠子さんの発言だ。竹宮さんが会長をつとめる日本マンガ学会は、違法ダウンロードの対象拡大について声明を発表している。

●日本マンガ学会の反対声明の内容

漫画村など、いわゆる海賊版サイト対策として、ブロッキング(アクセス遮断)が昨年検討された。しかし、憲法で定められた「通信の秘密」を侵害するなどとして、法律家や学者からの痛烈な批判を受けて、法制化はいったん立ち消えになった。今回の違法ダウンロードの対象拡大案はその代わりとして、突如として昨年秋に浮上したものだった。

昨年12月に中間まとめが公表され、パブリックコメントがおこなわれたが、竹宮さんが会長をつとめる日本マンガ学会は今年1月23日、「著作物の享受や消費行為が、新たな著作物を創造する〈生産行為〉でもありうるという点が考慮されていない」として、反対する声明を発表した。声明は、次のような問題を指摘している。

(1)合法とは言い切れない二次創作のダウンロードまで禁止することで、海賊版研究だけでなく、二次創作研究をも明確に阻害することになる。

(2)現在のインターネット環境においては、研究あるいは新たな創作のために、記事・図版・文章の一部などを合法・違法を問わずメモとしてダウンロードし、クリッピングすることは日常的に行われており、こうした行為を「違法」とすることは、むしろ広範囲での研究・創作の萎縮を招く懸念が非常に大きい。

(3)動画や音楽の違法アップロードと違い、静止画や文章が「違法」アップロードであるかどうかは判断が難しい。たとえば短文のSNS等で正確な出所が示されていない記事はすべて「違法」と判断され、ユーザーがダウンロードを控える可能性がある。

(4)ダウンロードを違法化しても、「漫画村」のようなストリーミング方式の海賊版はまったく取り締まることができない。悪意ある侵犯者に対してはまったく効果がなく、逆に一般ユーザーの萎縮を招き、研究・創作を著しく阻害する最悪の結果となることが予想される。

竹宮さんは院内集会で、違法ダウンロードの対象拡大について、漫画だけでなく、二次創作などの研究についても萎縮を招くと懸念を示した。さらに、二次創作自体の萎縮につながる可能性に触れて、海賊版サイトから被害を受けている漫画家は「二次創作コミュニティとはうまく共存できている」と主張する。以下、竹宮さんの発言をほぼ全文のかたちで紹介する。

●マンガ業界周辺のコミュニティについてたくさんの研究が生まれている

このたびのことで、(日本マンガ)学会員たちが「非常に由々しき問題だ」ということになり、かなり早い時期からメールなどで、きちんと討論して、声明文を出すことを決めました。私自身は、実はパブリックコメントを出していません。著作権を守られる側(漫画家)と研究者としての立場の、両方を持っていますので、なかなかパブリックコメントを書くのが難しかったというのがあります。

ですが、学会員の中で「非常に研究がしづらくなる」「むずかしくなる」と。マンガ業界だけでなく、その周辺のコミュニティについて、たくさんの研究が生まれています。そういうものについて、手に入らない画像をたくさん探しているわけです。

そういう中では、「著作権に触れてしまうのでもないか」というようなものも必要になることがあります。基本的には、研究にきちんと反映されるかたちとして、学術的な使用ということになるわけですが、そういうことも含めて、この法案のかたちだと、違法になるのではないかということが、関心事でした。

●コミュニティの活動を萎縮させないかたちで

私も描く側として、いろいろ考えてみましたが、実は、グレーゾーンと言われるところで、私たちを援護射撃してくれている人たちがたくさんいます。たとえば二次創作の場面です。作者側からしたら、「違反行為なのではないか」ということが起きる場合があります。出版社などから「これは規制したほうがいいのではないか」という抗議も入れるかたちがつくられたこともありました。

その中で、作家側は「(彼らは)応援したくておこなっているのだ」と。きちきちした法律で規制してしまうと、その活動自体が萎縮してしまう。今でも、スピンオフコミックを描くことに関して、「お金を払えばいいなら払いたい」という人もいますが、そういうかたちは作られていない。そのためにそれができない。「もしできるなら、堂々使うことにお金を払ってでもやりたい。それが、自分たちのマンガに対する愛情なんです」と言っている人も多いわけです。

そういった中で、グレーゾーンといわれる部分なわけですけど、作者側は「応援してくれているのだから、黙認してもいいんじゃないか」というかたちで、今まで、それはおこなわれてきませんでした。出版社側の動きもあった中で、作者側はいったん止めたということになります。そういう経緯もあって、漫画ファンのコミュニティと漫画作者は、大変近いところにいます。

映像や音楽だと、もっと大きな業界の中で、資金を出して、コマーシャルすることも非常に大きくおこなわれています。そういうところでの違反行為は大変大きな問題かもしれません。

しかし、漫画では、それは、逆に周りの活動を応援する活動だと思いたい。もちろん二次創作の中には、目を覆うようなものもないわけでもない。作者がそれを見たら嫌だと思うものもあったりします。しかし、その活動をしている人々は、作者に対する敬意として、それを作者の元に送ったりしない、という不文律を持っていたりします。そういう中で、共存しているといえるかたちができています。そのこと自体を重く見てほしい、ということが、ファンコミュニティと近い作者側の言いたいことです。

それが、この法案が通ることによって、崩れていくのではないかということ。唯一とはいえませんが、非常に大きなパワーを持った広報媒体ともいえるようなコミニティの活動も萎縮させないかたちで、法律をつくるならば、そこに対する配慮をもっておこなっていただきたいと思っています。

●まずい部分を刈り取り、そうでない部分を残す

そのコミュニティの活動に関して、文化庁であるならば、ぜひ、そういうところから出てくるのが、漫画であるということをご承知いただいて、それに対する配慮をどうやってするかを考えていただきたいと思うわけです。

実際には、世界的基準から見て、そういうものを規制する法律がまったくない、コミックの世界は無法地帯と思われることも非常に問題だと思います。無法地帯であるべきではなく、法をきちんと持っているけれど、ちゃんと配慮がされている、どこまでがしいていいことで、どこまでがしてはいけないことか、お互いが知るべきだと思っています。

やっている人たちはみなさん「ここがグレーゾーンだ」と知っています。グレーゾーンにならないでほしいとも思っている。堂々とおこなえる状態をつくってほしいと。著作権や、使用方法も、細かくかたちがあってもいいのではないかと思っている次第です。いろいろな意味で、うまくできていないのが、法だと思います。しかし、定めなくてはならないのも法律だと思います。それをどう使っていくかは、その法の中にある人間たちのやり方次第だと思います。

法というのは、どういうふうに解釈して、どういうふうに利用していくのか、うまく使って、まずい部分を刈り取り、そうでない部分を残すという、上手な使い方をぜひしていただきたいと思います。

弁護士ドットコムニュース編集部

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