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JASRACに「自分が作詞、作曲した曲」の使用を拒まれた…異例裁判のポイント

2/17(日) 9:35配信

弁護士ドットコム

自分で作詞・作曲した楽曲なのに、使用許諾を拒まれて、ライブが開けず、精神的苦痛を受けたとして、シンガー・ソングライターの、のぶよしじゅんこさんら3人が、JASRAC(日本音楽著作権協会)を相手取り、計385万円の損害賠償をもとめる訴訟を東京地裁に起こした。1月11日、第1回口頭弁論が開かれて、JASRAC側は請求棄却をもとめた。このあと弁論準備に入るが、ミュージシャンによる提訴は異例ということだ。はたして訴訟のポイントは何だろうか。

●ライブを開けなかったミュージシャン

訴状によると、のぶよしさんは音楽出版社を通じて、自分が作詞・作曲した楽曲の著作物管理契約をJASRACと結んでいる。のぶよしさんが2016年5月、東京・八王子市のライブハウス「X.Y.Z.→A」でライブを開催するために、オリジナル曲6曲を含む12曲の演奏申し込みをおこなったが、JASRACに拒否されて、ライブが開けなかったという。

JASRAC側は「ライブハウスとの間で、管理著作物の使用料の精算が未了である現状を鑑みて」と理由をあげた。「X.Y.Z.→A」は、JASRACと裁判で争っていたファンキー末吉さんが経営に関わっているライブハウスだった。のぶよしさん側は、正当な理由なく、著作者人格権と演奏の自由を侵害されたと主張している。

●JASRACは「正当な理由」がなければ拒めない

そもそも自分でつくった楽曲なのに、使用許諾を得られない、ということは法的に問題ないのだろうか。著作権にくわしい高木啓成弁護士が解説する。

「JASRACは、作詞者・作曲者から直接、または音楽出版社を通じて、楽曲の著作権をあずかって管理しています。

楽曲を利用したいというレコード会社や放送局、ライブハウスなどは、楽曲の作詞者や作曲者ではなく、JASRACに申請して利用許諾をもとめることになります。JASRACは、このような楽曲利用者から著作権使用料を徴収して、作詞者や作曲者などに分配する業務をおこなっています。

JASRACのように著作権を管理している著作権管理事業者には『著作権等管理事業者法』という法律が適用されます」

この法律には「正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない」と定められている(同16条)。

「つまり、楽曲を利用したいという人が、楽曲利用の申請をしたにもかかわらず、JASRACが『正当な理由』なく、申請を拒否した場合は、違法になってしまいます。ですので、JASRAC側は今後、利用許諾をしなかった『正当な理由』を主張していく必要があります」

●「取りこぼし」が発生するメカニズム

のぶよしさんは2016年10月、別のライブハウスでのライブについて、利用許諾を申請したのに、JASRACに受け付けてもらえず、さらに分配も一切なかったことも問題視している。

「『JASRACが、ライブハウスや飲食店から徴収した著作権使用料が正確に分配されていないのではないか』という問題は、以前から指摘されています。

JASRACは、全国のライブハウスや飲食店などから徴収した著作権使用料を、楽曲の利用回数などに応じて、その楽曲の作詞者や作曲者などに分配することになります。

このとき、すべての楽曲の利用回数が正確に判明すればいいのですが、全国のライブハウスや飲食店でどの楽曲が何回利用されたかを調査することは困難です。

ですので、JASRACは、一部の店舗でサンプリング調査(テレビの視聴率調査のようなもの)を実施して、また一部の店舗に協力してもらって利用楽曲の報告を受けて、これらのデータから全国の利用楽曲を推定するという方法をとっています。

この方法だと、当然、取りこぼしが出てしまいます。『自分の楽曲がライブハウスで演奏されたはずなのに(というより、自分が演奏したのに)、著作権使用料が分配されない』という問題が起こるわけです。

原告が述べているのは、このような問題です。

JASRACもこの問題自体は認識していて、ほかのシステムを併用するなどの対策を講じているようですが、やはり利用楽曲の完璧な把握はできていません」

●「正当な理由」にあたるのか

今回の訴訟のポイントはなんだろうか。

「原告がライブを開こうとした場所は『爆風スランプ』のファンキー末吉さんが経営に関わっているライブハウスです。過去、このライブハウスは当時、著作権使用料などでJASRACと係争中で、東京地裁で、演奏の差止や著作権使用料の支払いを命じる判決を受けていたようです。

JASRACは、楽曲利用の申請を拒否した『正当な理由』として、ライブハウスとの関係での著作権使用料の未払いや、この判決の存在を挙げるものと思われます。

ただし、『ライブハウスが著作権使用料を支払っていないとしても、原告が今回のライブの著作権使用料をきちんと支払うつもりで申請をしているのであれば、それを拒否してはダメなんじゃないか』という疑問も生じると思います。そのことに言及する裁判例もあります。

この点が主な争点になると思います。JASRACがどのように主張するのか、注目されます」

【取材協力弁護士】
高木 啓成(たかき・ひろのり)弁護士
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。映像・音楽制作会社やメディア運営会社、デザイン事務所、芸能事務所などをクライアントとするエンターテイメント法務を扱う。音楽事務所に所属して「週末作曲家」としても活動し、アイドルへ楽曲提供を行っている。HKT48の「Just a moment」で作曲家としてメジャーデビューした。
Twitterアカウント @hirock_n
SoundCloud URL: http://soundcloud.com/hirock_n

事務所名:アクシアム法律事務所
事務所URL:http://www.axiomlawoffice.com/

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:2/17(日) 9:35
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